ドライ/ウェットな性格・態度について(要約)


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〔概要〕
 
 

本研究は、人間のどのような性格・態度が、周囲の他者に、どのような感覚で捉えられるか、すなわち、人間の性格・態度が周囲の他者に与える感覚、の発生するメカニズムについて述べたものである。

人間の性格・態度が、周囲の他者に、対人関係を通して与える感覚(これを、以下、「対人感覚」と呼ぶことにする)には、冷たい-温かい、ドライ-ウェットなど、さまざまなものがある。以下においては、このうち、ドライ-ウェット(乾湿)感覚を生み出す仕組みについて解明している。
 

どのような性格・態度がドライ・ウェットな感覚を与えるか、また、そうした感覚を与えるメカニズムがどのようなものか(要するに、ドライ・ウェットな対人感覚発生のメカニズム)については、従来はほとんど研究されてこなかった。

従来の辞書的定義から見ると、日本語の国語辞書(「広辞苑」、「新明解国語辞典」など)を調査した限りでは、ドライさは、「割り切った」とか、「ビジネスライクな」といった意味と関係があり、一方、ウェットさは、「情緒的」とか、「感傷的」といった意味と関係があるとされている。しかし、それらがなぜ、対人関係において、ドライ/ウェットな感じを与えるかについては、明快な解釈は得られていない。
 

本研究では、人間のどのような性格・態度が、なぜドライ・ウェットな感覚を生むかについて、まず、本来人間にドライ・ウェットな感覚の相違を与える、物理的な気体・液体の性質の相違を生み出すメカニズムとして、分子相互が互いに引きつけ合い、ひとまとまりになる力である、「分子間力」の大小に着目した。分子間力が大きいのが、ウェットな感覚を与える液体分子、分子間力が小さいのが、ドライな感覚を与える気体分子である。

そして、この分子間力の概念を、人間レベルに当てはめて考えた。すなわち、人間相互の間に、

(1)分子間力相当の、互いに引き付け合い、足を引っ張り合い、牽制・束縛し合う、心理的な力が大きく働いている場合、対人関係に(分子間力の大きい液体分子同様)ウェットな感覚が生まれる

(2)分子間力相当の心理的力があまり働いていない場合、対人関係に(分子間力の小さい気体分子同様)ドライな感覚
が生まれる

と考えた。

こうした、対人関係における、分子間力相当の、「相互間引力」とでも称すべき力の大小から、ドライ・ウェットな対人感覚の分化が生じる、とする考え方を、「分子間力モデル」という言葉でまとめた。

こうした「分子間力モデル」をもとにして、どのような対人関係が、ドライないしウェットと感じられると予想されるかを、人間相互の間の心理的引力が働いている場合とそうでない場合とを対比させる形で、「この対人関係は、(相互間引力が働いているから、)ウェットと感じられ、それと反対の、こちらの対人関係は、(相互間引力が働いていないから、)ドライと感じられるはずである」とする予想仮説の抽出を逐次行った。

抽出した仮説の数がある程度まとまったところで、それが本当に、ドライ/ウェットと感じられるかどうかを確認するために、インターネットのWWWホームページを利用してアンケート調査および結果分析を行い(回答者数=約100名)、仮説が正しいことを確かめた。

正しさを確認した仮説群を、以下のような中項目に分類した。
 
凡例 Dry 気体分子 相互間引力(分子間力)が小さい
Wet 液体分子 相互間引力(分子間力)が大きい
(1) Dry 個人主義 互いに一人ずつ個別にバラバラに動こうとする
Wet 集団主義 互いにまとまって動こうとする
(2) Dry 自立指向 互いに自立している
Wet 相互依存指向 互いに依存し合う(もたれ合う)
(3) Dry 広域分散指向 互いに広い領域に散らばる
Wet 過密指向 互いに狭い領域に密集する
(4) Dry 多様性の尊重 互いの多様性を重んじる
Wet 画一指向 互いを画一的な枠にはめようとする
(5) Dry 非人間指向 互いに他者(他の人間)を指向しない
Wet 人間指向 互いに他者(他の人間)を指向する
(6) Dry 非縁故指向 互いに結びつきの慣れを持たない
Wet 縁故指向 互いに結びつきの慣れを持つ
(7) Dry 自由主義 互いに自由に動き回ろうとする
Wet 規制主義 互いに動作を規制し合う
(8) Dry 自律指向 自分で自分の進行方向を決められる
Wet 他律指向 自分の進行方向を自分だけでは決められない
(9) Dry 反同調指向 進行方向を互いに合わせようとしない
Wet 同調指向 進行方向を互いに合わせようとする
(10) Dry 反権威主義 進行方向に関して少数派で構わないとする
Wet 権威主義 進行方向に関して(すでに認められた)主流派の一員に入ろうとする
(11) Dry 訴訟指向 互いに進行方向の対立・衝突を起こす
Wet 和合指向 互いの進行方向を調和させようとする
(12) Dry プライバシー尊重 互いのプライバシーを重んじる
Wet 反プライバシー 互いのプライバシーを重んじない
(13) Dry 反あいまい指向 動作方向が率直・明快である
Wet あいまい指向 動作方向が率直・明快でない
(14) Dry 非定着指向 今いる地点に定着せず絶えず拡散しようとする
Wet 定着指向 今いる地点に定着しようとする
(15) Dry 独創指向 未知の領域に進もうとする
Wet 前例指向 今までいた領域にとどまろうとする
(16) Dry 合理指向 周囲からの引力を断ち切って合理的に割り切って行動する
Wet 非合理指向 周囲からの引力を断ち切れず割り切れない
(17) Dry 能動指向 相互間引力を振り切って自発的に動き回れる
Wet 受動指向 相互間引力を振り切れず自発的に動き回れない

こうしてまとめた結果から、

 (1)ドライな性格・態度の人は、対人関係において、相互に分子間力相当の力(相互間引力)をあまり働かせようとしない、(乾燥=ドライな感覚を人間に与える)気体分子の運動パターンに似た行動様式を取ろうとする人である

 (2)ウェットな性格・態度の人は、対人関係において、相互に分子間力相当の力(相互間引力)を大きく働かせようとする、(湿潤=ウェットな感覚を人間に与える)液体分子の運動パターンに似た行動様式を取ろうとする人である

 と言えることが分かった。

人間が、対人関係の中で、他者に与えるドライ/ウェットな感覚は、分子間力相当の力(相互間引力)の有無という点で、それぞれ気体/液体分子運動が人間にもたらす感覚(ドライ/ウェット)と、本質的に同じ起源を持つ、と考えられる。


                (c)1998-9      大塚 いわお