背景


日本人の国民性について(主に欧米との対比で)どのようなことが言われているか、5年ほど以前に調査したことがあった(提唱されていた理論の一覧については、南博「日本人論」岩波書店 1994の方が、筆者の読んだものより詳しいのでそちらを参照されたい。)提唱されていたさまざまな国民性に関する特徴を、何か一つのキーワードでまとめることができないかと考えた。

いくつかの文献で、日本人はウェットで、アメリカ人はドライだという表現に出会った(例えば、日本人については、芳賀綏「日本人の表現心理」中央公論社 1979)。ドライ/ウェットともに、包括的な感じのする言葉である。そこで、ドライ/ウェットという言葉の対比が国民性をまとめるキーワードではないかと考えた。

しかし、どういう行動パターンがドライ(ないしウェット)と捉えられるかがそのままではよく分からなかった。

いろいろ迷ったあげく、行動パターンのドライ/ウェットの差というのは、究極的には物理・化学における、気体状態(ドライな感覚を与える)/液体状態(ウェットな感覚を与える)の差と関係があるのではないかと考えた。

市販の物理学事典(培風館、丸善)、および高校生用物理・化学の参考書を用いて、気体状態と液体状態との差がどこにあるかを調べた。

両者の差は、分子運動パターンの違いという超ミクロなレベルでの差である、ということが分かった。

注)気体分子と液体分子との物理・化学的性質の相違

                気体分子        液体分子
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分子間力        ない            ある
体積            不定(拡散)      一定(非拡散)
運動エネルギー  大きい          小さい
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与える感覚      ドライ          ウェット

参考書(チャート式シリーズ基礎からの物理(p.116)、化学(p.55) 数研出版 1985)の図解を見て、直観的に気体と液体の分子運動パターンの違いが、現実の人間の欧米と日本の行動パターンの違いと似ているように思えた。

注)気体分子・液体分子の運動パターン図解

そこで、現実の人間において、ドライ/ウェットとされる行動パターンが、気体/液体分子運動パターンに(主に分子間力の有無に従って)どれほど近いか、似ているかを、アンケート調査で探ることにした。