アメリカ的,日本的なパーソナリティの認知と気体,液体の運動パターンとの関係
About Relationship between American, Japanese Personality Recognition and Gas, Liquid Motion Pattern
2008.04 大塚 いわお
Iwao Otsuka
Summary 81 words
To clarify relationship between American, Japanese personality recognition and, motion pattern of gas, liquid that gives dry, wet sensation to people, WWW based question survey was held. 201 subjects observed online computer simulation movies of gas and liquid molecules motion, and answered how much each particle's motion on each movie was felt American or Japanese, as human interpersonal behavior. As the result, subjects felt the motion of gas molecules American, and the motion of liquid molecules Japanese as human behavior.
要約
人間のパーソナリティ認知のアメリカ的,日本的と,物質の気体,液体の人間に与える感覚のドライ,ウエットさの間の関連を明らかにするため,webでの調査を行った。気体・液体分子群の運動をコンピュータシミュレートした2つのムービーを研究参加者201名に対して見せて,各ムービーで,粒子の動きが個人の対人行動としてどの程度アメリカ的,日本的に感じられるかを評価してもらった。その結果,気体分子運動パターンは人々の動きとしてアメリカ的,液体分子運動パターンは日本的と感じられることが分かった。
Key words: personality, American, Japanese, gas, liquid
目的
実際に日本人の研究参加者に気体,液体の分子運動シミュレーションムービーを見せて,各分子の動きを人の動きと見立てた場合それぞれどの程度欧米的,日本的と感じるか調べることにした。
その際,「欧米的」という言葉は,「欧米」がカバーする地球上の地域が広範囲,多種多様にわたるため,人々が捉えるパーソナリティ上のイメージが分散し,統合して捉えにくい可能性がある。そこで,今回研究参加者を日本人としたこともあり,日本人にとって,欧米地域の中で,太平洋戦争後の日本占領以来,最も身近で親しみのある,パーソナリティの具体的イメージが沸きやすいと考えられる北米のアメリカ合衆国を代表例として採用し,「アメリカ的」「日本的」のそれぞれを調べることにした。
方法
[データ収集方法] インターネットのwebサイトで回答を収集した。回答のカウントに当たっては,同じ研究参加者が複数回回答する可能性に対応するため,回答時に同一のIPアドレスの持ち主は同一の回答者であると見なし,同一のIPアドレスの複数回答は最新の1個の回答のみを有効と見なすとともに,cookieを利用して複数回の回答を受付けないように設定した。
[研究対象者] 回答を得た研究参加者の総数は201名(男性105名,女性96名)であった。性別情報は,回答時に性別選択欄をwebページにラジオボタンで設け,選択入力してもらうことで得た。
[調査時期] 調査時期は,2007年8月21日から8月31日の11日間であった。
[刺激映像] 刺激は,Ar(アルゴン)の分子運動パターンをシミュレートするJavaプログラムを,池内(2002)のwebサイトより入手し,液体と気体それぞれの分子運動を最も明確に示すように,絶対温度20度(液体)と300度(気体)のそれぞれの分子運動を表すように調整した。プログラムが表示した気体,液体各分子運動のムービーを,パソコン上でキャプチャし,各々30秒間のwindows media video形式のムービーに加工して,webサイト上で研究参加者のパソコンから再生可能とした。各ムービーの静止画は,Figure 1の通りである。
[質問項目] 上記各ムービーについて「これは,人々の動きを早送りで再生したものです。一つ一つの粒々が一人一人の人間を表しています。このムービーにおける人々の性格がどの程度アメリカ的,日本的に感じられるか5段階評価して下さい。」として,アメリカ的,日本的それぞれ別々に回答させた。段階は,「感じない(0)
」から「とても感じる(4)」の5段階とした。
[手続き] 各ムービーは,一度に1個ずつ,順番をランダムにして呈示し,ムービー毎に回答させるようにした。回答はムービーが実際に動いているのを見ながらでないと行いにくいため,各ムービーは回答中エンドレスで流れるようにした。なお,実験操作のデブリーフィングとして,回答が完了した時点で,「実はこれは,気体,液体分子運動のシミュレーションムービーでした。」という断り書きを画面上に呈示した。
結果
気体,液体分子運動パターンが,人の性格としてそれぞれアメリカ的および日本的と感じられた度合いの評定値の平均値と標準偏差はTable 1に示した通りである。
見せたムービーの種類別にアメリカ的,日本的に感じた度合いの違いを見るため,対応のあるt検定を行った。結果はTable 2の通りである。
液体の分子運動を見たとき,アメリカ的,日本的と感じる度合いについては,日本的と感じる度合いの数値が,アメリカ的と感じる度合いよりも,有意に高かった(t(200)=10.20,p<.01)。
気体の分子運動を見たとき,アメリカ的,日本的と感じる度合いについては,アメリカ的と感じる度合いの数値が,日本的と感じる度合いよりも,有意に高かった(t(200)=3.54,p<.01)。
気体と液体とではどちらをよりアメリカ的と感じるかについては,気体分子運動パターンをアメリカ的に感じる度合いが,液体分子運動パターンをアメリカ的に感じる度合いよりも有意に高かった(t(200)=7.81,p<.01)。
気体と液体とではどちらをより日本的と感じるかについては,液体分子運動パターンを日本的に感じる度合いが,気体分子運動パターンを日本的に感じる度合いよりも有意に高かった(t(200)=7.15,p<.01)。
考察
以上の結果により,気体分子運動のシミュレーションを人に見立てて観察させるとアメリカ的な性格と認知され,一方,液体分子運動は日本的な性格と認知されることがわかった。気体分子運動パターンと同様に振る舞う人のパーソナリティはアメリカ的に,液体分子運動パターンと同様に振る舞う人では日本的に感じられると考えられる。
このことから,気体と液体それぞれの分子運動のパターンと,パーソナリティの認知におけるアメリカ的,日本的という印象との間に,なんらかのつながりが存在することが推測される。しかし,なぜこうしたつながりが生じるかの理由は,現状ではよく分からず,さらなる研究が必要である。
また,今回の研究結果では,アメリカ的,日本的なパーソナリティについて日本人の研究参加者が持つ印象を単に尋ねたに過ぎず,その印象が,アメリカ人,日本人のパーソナリティの実際のあり方にそのまま即していると考えるのは早計と考えられる。実際の対人関係においてアメリカ人のパーソナリティが気体的で日本人のそれが液体的であることを示す研究が別途必要である。
また,今回の結果は,あくまで日本人サイドの見方であり,視点に偏りが見られる。より偏りのない客観的な視点を得るには,日本人の研究参加者だけでなく,アメリカ人の研究参加者を別途募って,アメリカ人から見た印象がどうなっているかを別途確認する必要がある。
また,欧米的,日本的パーソナリティの比較という当初の研究目的からは,今後は,今回の研究では対象から除外された,アメリカ以外の西欧,北欧等のヨーロッパ各地域と日本との比較等も必要となってくると考えられる。
図表
Figure.1 気体,液体分子運動パターン
分子運動シミュレーションムービー(研究参加者に見せたもの)
液体分子運動
気体分子運動
Table.1 気体,液体分子運動ムービーへのアメリカ的・日本的評価値の平均値と標準偏差(かっこ内)
| 刺激種類 | アメリカ的 | 日本的 |
| 液体分子運動 | 0.47 (0.94) |
1.71 (1.45) |
| 気体分子運動 | 1.35 (1.43) |
0.90 (1.26) |
n=201
Table.2 条件間の平均値の差の比較結果(対応あり)
| 比較対象 | t検定 |
| 液体日本的-液体アメリカ的 | t(200)=10.20** |
| 気体アメリカ的-気体日本的 | t(200)=3.54** |
| 気体アメリカ的-液体アメリカ的 | t(200)=7.81** |
| 液体日本的-気体日本的 | t(200)=7.15** |
** p < .01