既存機能主義の分類

1998-2005 大塚いわお



[要旨]

従来の機能主義は、分野別には、以下のように分けられる。
(1)心理学的、(2)社会学的、(3)生態学的、(4)生物学的、(5)言語学的、(6)デザイン的(土木建築学、製品設計・デザイン)、(7)ソフトウェア(プログラム関数)


従来の機能主義は、分野別には、以下のように分けられる。

(1)心理学的機能主義(Malinowskiに代表される)
(2)社会学的機能主義(Radcliffe-Brown、Parsons、Mertonらに代表される)

(3)生態学的機能主義
(4)生物学的機能主義

(5)言語学的機能主義

(6)デザイン的機能主義(土木建築学、製品設計・デザイン)

(7)ソフトウェア的機能主義(プログラム関数)



(1)の心理学的機能主義は、機能を、社会の構成員である人間の欲求あるいは心理学的要因の充足によって説明するものである。(4)の生物学的機能主義は、機能を、個体生体の生命存続の視点から説明する。これらは、微視的・個人主義的・要素論的な性格が強い。

一方、(2)の社会学的機能主義や(3)の生態学的機能主義は、機能を、個人を包含している全体社会ないし社会体系、生態系の維持・存続の視点から説明するものであり、巨視的・全体論的な性格が強い。

従来の社会学では、このうち特に、(2)の社会学的機能主義が、1950~70年代を中心に、隆盛を誇ったが、考え方が、現状の社会をそのまま維持することを指向しており、社会変動を有効に説明できないという批判を受けて、行き詰まっている。J.C.Alexanderらによる、「ネオ機能主義」も提唱されているが、基本的な考え方は、従来の社会学的機能主義の枠内にとどまって、再構成、修正、洗練を目指しているように思われる。

生物(人間を含む)と環境との相互作用について研究する科学の分野は、エコロジー(生態学)である。従来の生態学にも、機能主義の考え方があったが、それは、機能を、生態系全体を維持・存続させるのに必要な働きとして捉える全体主義的な色彩の濃いものであった。


(1)の心理学的機能主義の立場を取るMalinowskiにおいては、機能を人間の心理的欲求を充足するものとして捉えている。

しかし、実際には欲求充足状態と環境適応状態とは「=」ではない。例えば、タバコを吸うことは、気分転換したいという心理的欲求を充足するが、生命維持(環境適応する水準の確保)の観点からすると、肺ガンやニコチン中毒を起こすなど、マイナス効果を持つ。

(4)の生物学的機能主義は、個人に着目する点では心理学的機能主義と同様であるが、機能を、単なる心理的欲求充足を実現するものと捉えずに、人間生体の環境適応、すなわち環境の中での生命維持に役立つかどうかという視点から見る、という点で異なっている。

生物学的機能主義によれば、タバコは、肺ガンやニコチン中毒を起こしやすくなり、死につながりやすくするという、生体に与える害毒という逆機能を説明できるからである。

従来の機能主義では、社会学的機能主義や生態学的機能主義(全体論的な社会システム~生態系論)では、社会を構成する個人の動きが見えない。そうかといって、心理学的機能主義(要素論的な心理的欲求論)では、機能を環境適応の視点から見ることに欠けている。生物学的機能主義では、そうした心理学的機能主義の弱点をある程度クリアできる。

以上の説明は、次のようにも言い換えられる。心理学的・生物学的機能主義は、個人に焦点を当てるのに対して、社会学的機能主義は、全体社会の存続に焦点を当てる(個人の動きを捉えることができない) と言える。社会学的ないし生態学的機能主義は、全体社会や生態系が環境の中で適応して存続していく条件を求めていく、という点で環境適応に焦点を当てているともいえる。

(5)の言語学的機能主義は、言語を、人間の社会現象として捉え、言語は、人間が社会的相互活動を行うための道具であり、その主たる働きは伝達であると考える。人間が、言語を社会の中でどのように使用しているかを問題とする。コミュニケーションを行う2人の間で、何が、どのような状況下で、どのように伝達されるかを明らかにしようとする。文法以外の、言葉の意味や機能、情報構造、伝達方法などに着目する。人間は、言語を他者との間で、自らの生存に必要な情報をやりとりするために用いるのであり、その意味で、言語は人間の環境適応に有効な機能を持つものとして捉えることができる。

(6)のデザイン的機能主義は、製品や建築などのデザインにおいて、人間や生物の環境適応に無関係な、寄与しない装飾、形状、剰余の働きを取り去って、環境適応に役立つ働きの実現に必要な構成のみにシンプルに絞ることを重んじる考え方である。

例えば、建築における機能とは、雨、風、寒暑、外敵を避けるという点にある。すなわち、人間の生存を脅かす環境変動に直接さらされるのを防ぐ、身を守るのに役立つ働きであり、これを備えた建築は「機能している」。「機能主義的」な建築とは、上記の人間生存に役立つ働きとは無関係な、余計な装飾や形状(凹凸、色彩など)を取り去って、専ら働きの実現に必要な構成(窓、柱、壁、扉・・・)のみに絞った(ないしその構成を前面に押し出して強調した)建築である。

(7)のソフトウェア的機能主義は、ソフトウェアプログラムが人間生存に役立つ場合、プログラムを、その「役立ち」の働きをする部品群=「関数function群」からなるものとして捉える。ソースコードで、部品として、ひとまとまりの機能として、他に流用可能なルーチンは、全て関数function化、部品化することで、ソフトウェアの生産性を向上させ、ひいては、それを使う人間の環境適応力を向上させる。


(c)1998-2005 大塚いわお

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