■機能と自己拡大・増殖圧力=SE(I)P


各人が自分の生成する機能を社会(互いに相互作用をする可能性のある人々の集まり)に流通させる場合、

(1)質を最上級にしようとする(質をできるだけ高めようとする)

(2)量を最大化しようとする(できるだけ広範囲に広めようとする)

各人の欲求が結果的に、社会に流通する機能のあり方を充実させ、社会の発展をもたらす。こうした各人の欲求の裏には、自分の生成する機能が、自分の生きたことの証(生存証明)として働くことを、機能を生成する各人が望んでいることが考えられる。

上記の各人の欲求は、自分の生成した機能ないしそれに関する名声が、

(1)時間が経っても後世までよりよく残る(伝えられる)ように願う(時間的側面)

(2)より沢山の他者の間によりよく広まって増殖するように願う(空間的側面)

という極めて利己的な動機に基づくと考えられるが、結果的にその利己性が、社会に流通する機能の質量の向上をもたらし、ひいては社会の発展に貢献すると考えられる。

そして、その際、自分の生成した機能が自分に正式に由来するものであることについての認識(自己が生成した機能についてのアイデンティティ)が、確実に保たれる(例えば、この機能を発明したのは、他ならぬ「私」である(他者であるA氏ではない)ことが世間に正確に伝えられる)ように望んでいることが考えられる(これは、例えば、特許の発明者表示や、書物や音楽などの著作権者表示などで自分の名前を表示することに現れている)。

こうした利己的動機は、「自己拡大(増殖)圧力(Self Expansion(Increase) Pressure)」とでも呼ぶべきものが、人間~生物に内在する、と考えることで、説明できる。生物においては、遺伝子レベルで既に、自分自身の複製を、より広い空間に、より長い時間生存するように、作ろうとする、原始的な力が働いていると見ることができることから、この自己拡大(増殖)圧力は、生物にとって、ごく基礎的な圧力であると考えることができる。

自己拡大圧力については、
 
(1)独創型 自分自身(個人独自)のオリジナルなアイデンティティのあるものを、社会(=他者の中)に広めようとする
(2)同一化型 既に他者が生成したところの、
今まで長く続いて来て、これからも長持ちしそうな(永続しそうな) =時間的側面
既に大きく広がって、これからも現状維持~さらに拡大しそうな =空間的側面
もの(大企業、宗教、ブランド品など)と自己を一体化・同一化することにより、自己拡大・増殖を一挙に図ろうとする

という2通りに分類される。


●自己拡大、増殖と人生

人間として成功した人生は、この自分とその分身の世界への拡大・増殖をうまく果たした人生であり、失敗した人生は、自分とその分身の拡大・増殖に失敗した人生である。

ただし、この人生の成功と失敗は、長い目で見ないと分からない。場合によっては本人が死んだ後で、その功績が発掘されて、有名になって世界中に広まることもある。逆に、本人が生きている間は成功者として恵まれた人生を送るものの、死後、急速に忘れられたり、批判の対象になって、汚名を残すこともあるからである。



●自己拡大圧力がもたらすジレンマ

上記の自己拡大(増殖)圧力は、以下のような、互いに矛盾する側面を持つ。

(1)自己拡大を行うには、他者の自己拡大を阻止すればするほど、それだけ、自分自身の自己が、周囲の社会に拡大する機会が増える。そこで、自己拡大の度合いを最大化するために、他者の自己拡大を妨害しようとすることになる。例えば、企業のシェア争い時に行われる比較広告や、国家同士の領土拡張戦争が、この現れである。これは、互いの環境適応を妨害し合うことになり、逆機能的(機能阻害的)である。

(2)自己拡大を行うには、自分を取り巻く他者の環境適応水準を向上させることで、初めて、効果的に行われるようになる。要するに、他者が存続してくれないと、他者の中に、自己の複製が残らない。そこで、自己拡大のために、他者の環境適応を積極的に手助けしようとすることになる。これは、互いの環境適応を促進し合うことになり、正機能的である。

こうした自己拡大に関するジレンマは、以下のようなしくみで解決される。

(1)自分と同類の機能を提供する者(互いにライバル関係にある)に対しては、その自己拡大や環境適応を妨害する。

(2)自分と異なる種類の機能を提供する者(自分の生成する機能を必要とする者、互いに顧客関係にある)に対しては、その自己拡大や環境適応を促進する。

このうち、(1)は、自分と同類のもの=内集団に対して、ひいきを行う、「内集団びいき」の傾向に反しており、そこにさらに、社会心理的ジレンマが存在する。




(c)1998-2005 大塚いわお

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