■機能地図




●機能連鎖と全体社会

各人は、個別の機能を生成して、それを社会全体に広めて、他者に消費してもらい、社会全体に幅広く分布する、その機能を消費する他者の役に立つ。そうすることで、機能を生成・配布した各人は、役立ったことへの対価(多くの場合は、機能交換クーポンとしての貨幣)を、社会のあちこちから、受け取る。そうすることで、今度は、自分が環境適応のために必要とする、(社会の中で、自分およびその同類を除いた、残りの人々が生成するところの)機能を手に入れることができる。こうした点で、各人が生成する機能には、(互いに、社会の他者の生存を助け合う点で)相補性が存在することが分かる。

こうした相補性のある機能のうち、生成面(あるいは逆に消費面)で、互いに結びつき、連鎖関係にあるもの同士を、一つ一つくっつけてゆき(ないしバイパス道路で互いに連絡させ)、一つの大きな地図となしたものが、「機能連鎖」「機能ネットワーク」である。そして、そうした機能連鎖(ネットワーク)の生成~消費関係を、全て集めたものが、全体社会である、と考えられる。

全体社会は、(機能生成を受け持つ)各部分を主体としてなされる相互交流の単純な合計として捉えられ、全体社会が、各部分を超越した存在として、数式でその動きをシステムとして明快に捉えられるようになっているとは、必ずしもいえない(そう捉えたいという魅力に引かれて、Parsonsのような社会学的機能主義者(社会システム論者)が挑んだが、あまり成功していない)。



●機能地図

似た機能同士、連鎖する機能同士を、一つの図面上にひとまとめにして、総合的・全体的な地図を作る、という行き方が考えられる。
機能に関する総合的・全体的な地図(仮に、「機能地図」と呼ぶ)を、簡便な方法で作成するには、産業(業界)地図、職業分類、官庁組織分類などを参考に、各産業・職業・官庁部局の持つ、(人々の環境適応に役立つための)機能を、抽象化して捉えたものを、整理しながらまとめればよいと考えられる。

全体的な機能地図を作るということは、かつての社会有機体説の内容を、有機体の各部分が(他部分の環境適応のために)果たす機能が何であるか、という見地から、より抽象的に捉えることにつながる。生体各部分の機能は何かを、一般化する必要がある。例えば、栄養は、正の機能を持つ(環境適応に役立つ)など。

この見地から、生体各部分の機能を、抽象化された形で抽出し、社会の産業分類に応用した、環境=機能分析の実例を参照されたい。

ただし、従来の社会有機体説のような、生体との直接のアナロジーは、(抽象的な)機能の抽出が不可能なので、行ってはならない。生体全体の維持を、社会全体の維持になぞらえる、という見方も否定されるべきである。生体と異なり、全体社会は、もしも構成員にとって低レベルの環境適応水準しかもたらさないのであれば、それ自体維持されるべきでない(解体→再編成される必要がある)。

ちなみに、「全体社会の維持」という文句は、その社会の中で上位にある者(機能交換関係で恵まれている者)が自分の権益を守るために言うことが多い。「会社組織全体の維持」を唱えるのは、社長など、高い地位にある者ほど熱心で、低い地位の者は、終身雇用や年功序列賃金などのメリットがないと、組織維持には熱心にならない。


(c)1998-2005 大塚いわお


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