機能生成(生産)と消費



環境適応的機能主義では、人間が行う生産・消費の対象を「機能」と捉える。要するに、モノ自体ではなく、モノの中に含まれる機能こそが、生成・消費のターゲットである、と考える。買い物をするとき、モノを買うのではなく機能を買う、と考える。例えば、食料品店でにんじんを購入するとき、にんじんそれ自体が目的なのではなく、にんじんに含まれるビタミンAなどの人体の維持に必要な機能を持つ栄養素を獲得することが目的であると考える。

機能を買うという概念は、例えば、家電製品(ビデオデッキ、洗濯機など)のカタログを見ながらだと分かりやすい。人間が生産・消費する「商品」は、機能の「乗り物」であり、環境適応に有効な(役立つ)機能の集積(と、送り出す側が考えたもの) 具体的な物だったり、抽象的なサービスだったりする。

経済学においても、財・サービスの生産・消費といった言い方から、「機能」の生産・消費へと、表現の置き換えをはかる必要があるのではないか。


●機能の無形性

サービス(広告、理容業など)は、直接生産とは見なされないことが多いが、何かしらの機能を持つ。したがって、人は、サービスを提供した他者に対して対価を支払う。「サービス」という言い方は、機能の「無形性(それ自身は形を持たない)」の現れといえる。

機能自体は、無形である。機能は、具体的な有形の物質(金属、繊維..)に乗っていること(例えば冷蔵庫、洋服)が多いので、実体のあるものに思われがちである。しかし、運動・頭脳労働のような無形のものにも、生体の環境適応に役立つ働きはあるので、そこに機能が存在すると言える(例えば、料理を作るための包丁さばき運動は、食材を調理可能な状態に持っていき、食材に含まれるところの、生存に役立つ栄養分を吸収可能にする)。あるいは、テレビ画像や音楽といった情報も、人間が生きていく上で欠かせないものであり、機能の乗り物である、といえる。

例えば、機能食品(ビタミンAを含む人参)においては、ビタミンAという物質自体が機能なのではなく、ビタミンAの持つ、生体の生命維持に役立つ働きが、機能として捉えられる。



●機能物質・機能運動

上記の、機能の無形性との関連で、人間や生物の環境適応に役立つ働きが乗った具体的な物質を、「機能物質」と、仮に呼ぶことにする。また、環境適応に役立つ働きが、人間・生物の体の動作や、無機的物体の動きに乗って、現れるとき、その運動を「機能運動」と呼ぶことにする。



●機能生成

機能生成者は、人間、他の生物(動物・植物)、無機的自然(風、雨、火山活動など)に分けられるが、通常は、互いに関連し合う形で、混ざり合うことが多い。機能生成者は、何らかの動的な活動を行っているものである。

機能の生成プロセスは、機能生成者の何らかの活動結果が、自分たちの環境適応にとっていかに役立つか、その使い道を、試行錯誤で考えたり、実験することに始まる。そして、ひとたび機能生成者の活動により生み出されたものが、環境適応に使えることが分かったら、それをいかに量産するか、という、企業化・事業化の段階に至る。

機能は、人間が自力では生成できない場合がほとんどである。栄養分のように、他の生物(穀物や海草)に頼る必要がある。あるいは、有機物(石油)や無機物(鉱物)のように、自然界に既に存在するのを探して見つける必要がある。

例えば、植物は、栄養分(ジャガイモの炭水化物)や、燃料(薪)等に変化する、人間の環境適応に役立つ物質を生み出す。このこと自体が、植物による、人間にとっての機能生成である。そうした植物が発育するための環境を整備する場合、その整備の分、すなわち、植物の発育を手助けすることが、機能生成に当たる。

機能生成を行うターゲットは、人間の生理(食物→栄養、エアコン→温度など)だけでなく、人間の心理(食物→おいしい、エアコン→快適な温度に感じる)も、含まれる。

生成された機能のありかは、(1)人間そのもの(人間内部)、(2)外部の物体に刻印、の2通りある。(1)においては、金槌叩きなどの運動、(2)においては、紙に印刷した情報、などが該当する。
 
 


●機能生成とシステムサイズ

人間の集団を、システムと見なした場合、巨大システム(官庁、大企業)と微小システム(3~4人で分業している状態)とに分けられる。 
(生命維持のための入出力)システムは一人から始まる(無人島で一人で何役もこなして生活するなど)。 
巨大システム(例えば巨大工場の各職場)は、微小システム(グループ)の積み重ねより成る。

ある機能が、生成に、多くの異なる分野の人々の能力を必要とする場合、機能生成に必要な組織のサイズが大きくなる。
各人のコミュニケーション能力に限界があるため、一人で状況把握できる他者の集まりである、小集団(微小システム)を作って、それらを重層的に積み重ねる(積み重ねた結果が、巨大システムである)。積み重ねた小集団の間を通るうちに、次第に様々な機能が寄せ集まり、一つの有機的にまとまった、高度な環境適応能力を持つものとして、最終的に生成される。
 


●機能の不足と補充

機能の消費、不足、欠け、不十分化は、人間のような生命体には付きものであり、それが生命の本質である。

生命体とは、機能(生存に役立つもの)を絶えず必要とし、消費する存在として捉えられる。その点、生命体にとって、機能は本質的に、消費されて、不足する、絶えず補充が必要な存在である。

生命体が生きて行くには、機能を絶えず自らの手で生産ないし収集して補充する必要がある。

生命の本質をネゲエントロピー(エントロピーの反対)として捉えるなら、機能は、生命体にネゲエントロピー(エントロピーの反対)を供給するものとして捉えられる。


●機能消費

生物の行う機能消費は、機能の乗った物質ないし、機能を含んだ活動・運動から、生存に必要な機能を抽出・消化する過程として捉えられる。

上記の過程は、

                         消費
機能物質ないし運動 → 抽出・消化した機能 + 残りカス・ゴミ

と、定式化される。

機能物質や運動は、機能を取り出す前は、秩序があったのが、機能を取り出した後は、乱雑・無秩序になる、という点で、物理学や情報科学における、エントロピーの概念と関係がある。この場合、機能は、秩序ないし、ネゲントロピー(エントロピーの反対概念)に相当する、と考えられる。

機能抽出に当たっては、

(1)機能が繰り返し抽出できる(テレビ) か、 抽出が1回きり(消火器の薬剤)か

(2)機能が日持ちする(洗濯機のハードウェア)か、日持ちしない(生の刺身)か

といった区別に留意する必要がある。

消費は、環境適応が達成された後は、適応水準がある程度下がってきて、新たな機能が必要となってくるまで、起きにくい。



●機能保全・保護

消費される機能の中には、その量が稀少であって、かつ、いったん取り尽くしてしまうと、2度と再生困難なものが、存在する(漁獲高が減少したカニなどがこれに当たる)。こうした場合、その機能の乗り物となる生物などを、保護・保全する必要が出てくる。保護・保全される機能には、単に食糧などの、具体的・物理的な質量をもつものに限らず、景観のように、心理的な効果(安らぎなど)を与えるものも含む。



●機能停止

機能停止とは、製品やサービスにおいて、本来提供されるべき、人間の環境適応力を向上させる働きの提供がストップした状態を指す。例えば、停電で氷や食物などを冷やすことができなくなった冷蔵庫は、食物が早く腐ってしまったり、氷枕を作れなくなったりなど、人間の環境適応の度合いを、その稼働時に比較して明らかに低下させるものであり、機能停止状態にあると言える。


(c)1998-2005 大塚いわお


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