アンケート調査へのWeb利用について


 

当ページでは、心理学・社会学分野のアンケート調査にwebを用いることについて、長所・短所や、ノウハウ、今後の展望などを簡単にまとめてみた。
 



1.webアンケートの長所

(設備面)

・アンケートページを開設し、検索エンジンなどに登録するだけの少ない手間で大量の回答者数を集めることができる。

・ペーパーレスであり、郵送の手間や費用が必要ない。物理的制約から解放される。

・低予算で可能である。質問票の印刷費とか、郵送費、コーディング・アルバイトの雇用費など一切かからない。無料ホームページサービスとか使用可能である。

・ネットワークにつながっている相手なら誰でもどこにいてもアンケートに回答できる。
 
 

(回答面)

・回答結果のコーディングの手間が必要ない。調査票からのコーディング作業を一切しなくて済む。回答結果をすぐにオンラインデータとして活用できる。

・回答時に、回答受け付けのCGIプログラムに少し手を入れるだけで、全ての回答に対して、各項目記入漏れや不適切な入力を自動的にチェックできる。

・条件付き質問への対応が自動化できる。回答項目生成および回答受け付けCGIに少し手を加えることにより、「no.○の質問で△と答えた方のみ、この質問に答えてください。」といった回答者の適切な質問項目への誘導が自動的に行える。

・回答がインタラクティブであり、回答者にとって楽しい。心理テストのように、自分の回答に対して、目に見える形での反応がすぐに返ってくるというのは、紙ベースでは考えられない優れた点である。

・ネットワークにつながっていれば、どこにいても、回答状況の管理や質問項目の変更・新設などが一発でできる。
 

(分析面)

・簡単な回答分析CGIプログラムを組むことで、分析ぺージに単にアクセス・リロードするだけで、その時点までのデータの集計結果を即座にまとめることができる。その時々の回答状況(回答者数、回答者の属性、回答内容。具体的には、何人分集まったか、性別、年齢などの属性分布はどうか、回答内容や傾向はどうかなど)が瞬時に一発で分かる。

・集計結果の統計的検定を行なうCGIプログラムも比較的容易に組むことができるので、分析CGIプログラムのページにアクセスした瞬間に、どの調査項目で有意差が出たか、あるいは出つつあるかとかが、いとも簡単に判明する。今までのように、データを統計解析ソフトに入力して分析コマンドを選ぶまで、どんな結果が出るか全く分からない、といった状態からは、簡単に解放される。
 



2.webアンケートの短所

・アンケートwebページを開設しているサーバーがダウンすると、アンケートが全く行えなくなる。

・回答データは電子的なものであるため、回答タイミングの重複などが原因でいとも簡単に消失してしまう。回答データのバックアップを取っていないと、一挙に数千件のorderでデータがなくなってしまい、最初からやり直しになってしまう。

・CGIプログラムを作成する技能(perl言語などでのプログラミング)が必要となる。ただし、これは、企業向けの複雑なsolutionに比べれば、初歩的なレベルで十分okであり、それほど習得に手間を要するものではない。
 



3.現状でのランダムサンプリングによらない回答者募集

webを用いたアンケート調査では、ランダムサンプリングをしない場合でも、全国~全世界からの不特定多数の回答が得られる。その点、回答者のばらつき・多様性・相互無関連性を確保できる。

ランダムサンプリングをしない場合、従来の有意抽出法同様、調査結果から母集団の姿を統計的に類推できない欠点があるとされる。しかし、ランダムサンプリングした場合と結果を比較してみることを繰り返した結果、差がなければ、わざわざランダムサンプリングしないでもよいことが分かり、回答者募集の手間が大幅に省けるであろう。

この場合、調査内容を予め公表して回答を募集することで、特定の調査内容に興味がある回答者に絞って集めることができる。研究テーマに真剣に取り組んでくれる人を回答者としてよりすぐることができる。回答者は、検索エンジンなどでページに興味を持って集まってくる不特定多数者である。これは、従来の社会心理学のアンケート調査で行われて来た、自分の興味ある内容の授業に出席する大学生に対して回答用紙を配るのと、方法的には大差ない。

ちなみに当サイトの2000年までの調査結果は、全てこの方法で得られたものである。



4.今後導入が期待されるランダムサンプリングの方法

今後は、国や自治体でも、住民台帳を電子化すると共に、住民への行政情報配布や連絡手段として、住民データに電子メールアドレスを添付するようになると考えられる。

電子メールアドレス付き住民台帳から、対象者を電子メールアドレス付きで、ランダムに抽出し、抽出した対象者に電子メールで回答依頼を行い、対象住民に所定のアンケートwebページにアクセスしてもらうだけで回答データを収集できる。

自治体が住民に電子メールアドレスを割り当て、調査者は自治体から許可を得た上で、そのデータベース台帳から電子メールアドレスをランダムサンプリングする、ということになる。

不適切なアンケート調査が行われるのを防ぐためにも、自治体側で調査目的などを審査するのが望ましい。また、得られた住民の電子メールアドレスを他用途に転用しないことも誓約させた方がよい。許可がおりたら、住民台帳データベースにアクセスし、氏名=メールアドレスの組をランダムサンプリングする。webページアドレスを書き込んだアンケート調査依頼メールを、ランダムサンプリングで抽出した相手に送る。回答者に、指定されたwebアンケートページにアクセスしてもらい、ニックネームなどで回答してもらう。

こうした仕組みは現時点ではまだ確立していないが、インターネットなどの情報通信技術の高速な普及により、近い将来可能になることは間違いない。これにより、webを用いたアンケート調査が主流になっていくであろう。



5.webを回答手段として用いることにより生じるバイアス

調査内容とインターネットを利用する・しないとで相互に関連がない場合、回答手段としてwebを使うことによる回答結果のバイアスは生じないと考えられる。ただし、現時点(2001年初頭)では、まだインターネットの普及は、従来の郵便や電話ほどには進んでいない。特に、農村部や高齢者層、低所得者層で普及は遅れていると考えられる。したがって、現状でインターネットを用いた社会調査を行った場合、こうした普及の遅れた層の意見などが、調査結果に反映されない恐れがある。逆に言えば、こうした社会的な格差とは関係ない、心理的・生理的な感性データを得るのにwebをか回答手段とするのは、特に問題ないと言える。



6.重複回答への対処

アンケートでは、同一の回答者が、いったん提出した回答内容を2、3度と修正して提出し直すことがしばしばある。こうした重複回答への対応は、メールアドレス・ニックネームを記入させることで、一つ一つの回答を他人のものと区別できるようにする。また、回答時刻データを自動記録するようにして、近い時刻に酷似した回答パターンがあった場合は、その回答データをはねることも、一人が複数回答者になりすます、いたずら回答への対処として、考えられる。

なお、回答されたタイミングで回答者の重複をチェックすると、回答が一度に多数重なったときに、データファイルが消失する場合がある。そこで、回答記録時には、何も考えずに重複を許して、一回のみデータ書き込みをする。別に作成した分析用CGIの方で後から重複をチェックしてデータを一意にする。



(c)2001.2 大塚いわお

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