ドライ・ウェットさと温冷・明暗感との関連について
(c)2002.2-10 大塚いわお
[要約]
本文では、ドライ・ウェットな感覚と、温かさ・冷たさ、明るさ・暗さとの関連がどうなっているかについて述べる。
乾湿・温冷・明暗の感覚は、それぞれ異なる感覚のモードによって知覚されるが、それらの間には、
| 乾湿の次元 | ドライ | ウェット |
| 温冷の次元 | 冷たい | 温かい |
| 明暗の次元 | 明るい | 暗い |
といった相関関係が成り立つと考えられる。
1.ドライ・ウェットさと温冷感
人間は自分の体温に近い温度の存在物を「温かい」と感じ、体温より大分下がると「冷たい」と感じる。
「温かさ」を感じさせる体温を持つ相手が自分の身近にくっついている=互いに近い距離にあると、相手の体温を身近に感じて、「温かい」と感じる。相手との間に隙間がなくぴったり密着していると、互いの間にある体温で温められた空気が逃げない。一方、互いに離れていると、相手と間隔が空き、両者の隙間に冷たい風が入り込む余地ができるため、「冷たい」と感じる。
これは、物理的な距離だけでなく、心理的な距離にも当てはまる。相手との間に距離がなくなり、心理的な一体・融合感、密着感を強く持つ場合に相手のことが「温かい」と感じられる。そして、そのままそこに定住・定着することで互いに心理的に近い、互いに「温かい」と感じる状態を維持し続けることができる。ここで各自がその場に静止せずにバラバラに独自の方向に動くと、相互の間の一体感が失われ、「冷たい」と感じるようになる。
対人関係がもたらす心理的な温かさ・冷たさに関しては、「温情」インタフェース・デザインのページへのリンクを参照されたい。
この場合、相手との間の心理的な一体・融合や密着、その状態の現状維持といったキーワードは、ドライ-ウェットさの次元からは、互いに心理的に近づき合うこと、近づき合ったままその場に定着することを指向する点、全て「ウェット」さと関連がある。
すなわち、心理的に一つになろうとすることは、互いに近づき、引きつけ合おうとする、引力のような力がそこに働いていることを示しており、この力は、人間に対して「ウェット」な感覚をもたらす現実の液体分子間に働く分子間力とのアナロジーで捉えることができる。
また、心理的にひとまとまりになった状態で定着し、そこから動こうとせずに相互の温かい関係を維持しようとすることは、あちこち動き回るために必要な運動エネルギーが小さいことを示している。ドライな感覚を人間に与える気体分子が絶えず方々へと大きく動き回って、互いの間の隙間を大きく取るのに対して、ウェットな感覚を与える液体分子は、互いにくっつき合った状態であまり動き回らない。これは、液体分子の運動エネルギーが小さいことを示しており、「温かい」状態を保つための定着についても、ウェットな液体分子運動とのアナロジーで捉えることができる。
こうした「近さ=ウェットさ」がもたらす「温かさ」は、遺伝的な「近さ」にも関係する。例えば、親子関係は、互いの間の遺伝子の共通性の高さ、すなわち遺伝的な「近さ」によってつながる、強固な温かさを備えた人間関係である。
相手との共通性の高さが心理的近さ=温かさをもたらし、ひいては互いに相手に対して魅力を感じて近づき合い、その状態をそのまま維持することで心理的引力=ウェットさをもたらす、と言える。
以上述べた、「温かさ=ウェットさ」、「冷たさ=ドライさ」の相関は、1999年度に筆者が行った、性格・態度のドライ・ウェットさに関するアンケート調査結果からも支持されている。次の表は、調査結果をまとめたものである(回答者約200名)。「人当たりが冷たい」方をドライと評した回答者の割合が、「温かい」方をドライと評した回答者の割合よりも有意に多いことが分かる。また、寒冷色の青を好む方が、暖色の赤を好むよりもより「ドライ」と評されている割合が有意に高いことが分かる。
| 項目 記号 |
項目内容 (仮説=ドライ) |
ドライ | どちら でもない |
ドライ | 仮説内容 (仮説=ウェット) |
Z得点 | 有意 水準 |
| E25 | 人当たりが冷たい | 52.245 | 17.959 | 29.796 | 人当たりが温かい | 3.879 | 0.01 |
| F19 | 青い色を好む | 69.820 | 12.162 | 18.018 | 赤い色を好む | 8.235 | 0.01 |
2.ドライ・ウェットさと明暗感
明るさ・暗さは、地球上での人類の生活においては、太陽の日差しの有無と大きく関わっている。一般に、太陽の日差しが注ぐ晴天は「明るい」、太陽の日差しが届かない曇天~雨天は「暗い」感じがする。
雨がいったん降ってから止んだ後しばらく経つと、雨水は太陽の熱によって蒸発し地上から消えていく。この場合、湿った水たまりは、日陰の暗い場所にずっと残りやすい、明るい日向は乾いている、ということは経験上広く知られていることである。
こうした説明からは、人間の生活上の感覚としては、「暗い=日陰=水たまり(水分の蒸発が少ない)=ウェット」「明るい=日向=水分の蒸発=ドライ」という相関関係が成り立つ、と言える。
また、日本語では、人間の性格を表すのに例えば「陰湿」という言葉が頻繁に使われる。この言葉は、「陰=暗さ」と「湿=ウェットさ」とが互いに強く結びついている、相関関係にあることを示している。
以上の説明から、「明るさ=ドライさ」、「暗さ=ウェットさ」とまとめることができる。
なお、これと関連して、人間の性格の明るさ・暗さについては、「明るい」性格についてのページへのリンクを参照されたい。基本的には、「明るい性格=ドライな性格」と捉えられる、と言えそうである。
すなわち、明るい性格の方が、
1)対人関係が、引きこもらず、外に積極的に出るということで、開放的である点、ドライである
2)態度が、より元気、快活、活動的であるということで、よく動く点、ドライである
3)物の捉え方が、物事をより明瞭に、クリアに捉えようとするということで、合理的である点、ドライである
と捉えられる。
以上述べた、「暗さ=ウェットさ」、「明るさ=ドライさ」の相関は、2002年10月に筆者が行った、性格・態度のドライ・ウェットさに関するアンケート調査結果からも支持されている。次の表は、調査結果をまとめたものである(回答者約210名)。「人当たりが明るい」方をドライと評した回答者の割合が、「暗い」方をドライと評した回答者の割合よりも有意に多いことが分かる。
| 項目 記号 |
項目内容 (仮説=ドライ) |
ドライ | どちら でもない |
ドライ | 仮説内容 (仮説=ウェット) |
Z得点 | 有意 水準 |
| 3 | 人当たりが明るい | 64.929 | 15.166 | 19.905 | 人当たりが暗い | 7.101 | 0.01 |
3.明るい性格と温かい性格との不両立
以上から、色彩を用いてドライ・ウェットさを衣服や生活用品上に表現しようとする場合、ドライさは、「冷やかな、明るい」色を、ウェットさは「温かい、暗い感じの」色を用いれば効果的と考えられる。
具体的には上記[要約]の項目内にある、ドライ・ウェットさと温冷、明暗感との相関をまとめた表の色使いを参照されたい。
(c)2002.2-10 大塚いわお