[理論の詳しい説明]


性格・態度のドライ/ウェットさ判定のもととなる理論についての詳しい説明です。

これまでのアクセス回数=です(1999/07/18~)。


ドライウェットな性格・態度についての検討
-「分子間力モデル」によるアプローチ-


(c)1999.7 大塚いわお

[目次]

要旨
1.はじめに(対人感覚のドライ・ウェットさ)
2.分子間力モデルについて
3.アンケート調査
4.分析結果について
5.おわりに
参考文献

仮説まとめ表
仮説まとめ図(OHPシート)
調査結果まとめ表


[要旨]

この研究は、人間の性格・態度がどのようなときに、ドライウェット対人感覚を、周囲の他者にどのようなメカニズムで与えるかについて、解明したものである。

人間のどのような性格・態度が、周囲の他者にとって、なぜドライウェットと感じられるかについては、従来ほとんど解明されていなかった。

本研究では、人間にそれぞれ、ドライウェットさを感じさせる、気体液体分子の運動パターンを区別するもととなる、分子間力の大小に着目した。そして、以下のような、「分子間力モデル」を提案した。

分子間力モデル」とは、人間が、周囲の他者に対して取る行動パターンや態度が、相手に与える感覚について、

(1)行為者が、相手との間に、人間に湿った(ウェットな)感じを与える、液体分子のように、互いに引き付け合い、足を引っ張り合ったり、牽制し合う、分子間力相当の力(相互間引力)を、大きく働かせているときに、湿った(ウェット)と感じられる

(2)行為者が、相手との間に、人間に乾いた(ドライな)感じを与える、気体分子のように、分子間力相当の力(相互間引力)を、あまり働かせていないとき、すなわち、互いに引き付け合ったり、足を引っ張り合ったり、牽制し合おうとする力が弱いときに、乾いた(ドライ)と感じられる

と捉えるものである。

この「分子間力モデル」が妥当なことを、インターネットを利用したアンケート調査によって確かめた。

分子間力モデルを用いて抽出した、ウェットドライの次元から説明できる性格・態度のパターンを整理すると、集団主義個人主義規制主義自由主義など17項目になった。

抽出した性格・態度パターンを、図(OHPシート)にまとめたページへのリンクです。


〔1.はじめに(対人感覚のドライ・ウェットさ)〕

本研究は、人間のどのような性格・態度が、周囲の他者に、どのような感覚で捉えられるか、すなわち、人間の性格・態度が周囲の他者に与える感覚、の発生するメカニズムに関するものである。

人間の性格・態度が、周囲の他者に、対人関係を通して与える感覚(これを、以下、「対人感覚」と呼ぶことにする)には、冷たい-温かい、ドライウェットなど、さまざまなものがある。以下においては、このうち、ドライウェット(乾湿)感覚を生み出す仕組みについて解明している。

社会心理学の分野では、このうち、冷たい-温かいの対人感覚軸について、従来から、その重要性が指摘されて来た。例えば、 〔Asch 1946〕では、人の性格を表す特徴の中に、ある一言が入ることによって、その人物の全体的印象が大きく変わること、具体的には、「温かい」もしくは「冷たい」という形容詞を入れ替えただけで、その人物の最終的な全体印象に大きな違いが生れることが、指摘されている。この場合、人物の全体印象を決定づけるのに、「冷たい-温かい」の対人感覚軸が、「中心的特性」として、大きな影響力を持っているとされている。

しかし、従来の社会心理学では、同じ対人感覚でも、ドライ-ウェットの軸については、ほとんど注目を集めていない。すなわち、どのような性格・態度が、ドライウェットな感覚を、周囲の他者に対して与えるか、また、そうした感覚を与えるメカニズムがどのようなものか(要するに、ドライウェット対人感覚発生のメカニズム)については、従来はほとんど研究されてこなかった。

対人感覚ドライウェットさのうち、特にウェットさに関しては、従来から、日本人の性格・態度の特徴を表す言葉として捉えられてきた。例えば、〔芳賀綏1979〕においては、日本人像のアウトラインとして、「おだやかで、きめ細かく、『ウェットで』(強調筆者)、女性的で、内気な」といったように、その中にウェットさを含めて考えている。芳賀が述べられているウェット以外の各項目が、それぞれウェットさと相関があることが考えられるが、芳賀は、その理論づけを行っていない。あるいは、〔吉井博明1997〕においては、日本人のコミュニケーションのあり方の特質について、直接対面によるコミュニケーションの重視の現れを示すものとして、「ウェット」という言葉を用いているが、なぜ直接対面がウェットさを生み出すかについては述べられていない。

従来の辞書的定義から見ると、日本語の国語辞書(「広辞苑」、「新明解国語辞典」など)を調査した限りでは、ドライさは、「割り切った」とか、「ビジネスライクな」といった意味と関係があり、一方、ウェットさは、「情緒的」とか、「感傷的」といった意味と関係があるとされている。しかし、それらがなぜ、対人関係において、ドライウェットな感じを与えるかについては、明快な解釈は得られていない。


〔2.分子間力モデルについて〕

本研究では、人間のどのような性格・態度が、なぜドライウェット対人感覚を生むかについて、まず、本来人間にドライウェットな感覚の相違を与える、物理的な気体液体の性質の相違を生み出すメカニズムを、改めて確認した。両者の相違を見るには、分子レベルまで小さくなる必要がある。

具体的に両者の相違を生み出しているのは、

[1]運動エネルギーの大きさ(動きの度合い)の違い

(1)液体では、動き回る度合い(運動エネルギー)が小さい(あまり動き回らない)

(2)気体では、動き回る度合い(運動エネルギー)が大きい(よく動き回る)

[2]「分子間力」の働く度合いの違い

(1)液体では、互いに引き付け合い、足を引っ張り合ったり、牽制し合う、「分子間力」という力が、分子同士の間に、大きく働いている

(2)気体では、上記の、互いに相手と引きつけ合う「分子間力」が、分子同士の間に、ほとんど働いていない

である。

このうち、特に、分子相互が互いに引きつけ合い、ひとまとまりになる力である、「分子間力」の大小に着目した。現実の人間関係のあり方に置き換えて考えやすそうだったからである。分子間力大きいのが、ウェットな感覚を与える液体分子分子間力小さいのが、ドライな感覚を与える気体分子である。

分子間力」の働く度合いが、液体大きく気体小さいのは、

(1)液体分子では、運動エネルギー小さいため、もともと分子間に存在する、相互に引きつけ、牽制し合う力(分子間力)を振り切って動き回ることができず、分子間力いいなりになっている

(2)気体分子では、動き回る度合い(運動エネルギー)が大きいため、分子間力を振り切って動き回ることができ、「分子間力」影響から自由になっている

ためである。
 

筆者は、上記の場合、水のような液体、空気のような気体が、人間に対してウェットドライな感じを与えるしくみと、人間同士が、人付き合いで、互いに相手に対して、ウェットドライな感じを与えるしくみとが、共通なのではないかと、考えた。

すなわち、物理化学的分子レベルで見られる、分子間力の概念を人間に当てはめることにより、人間相互の間に、

(1)分子間力相当の、互いに引き付け合い、足を引っ張り合い、牽制・束縛し合う、心理的な力が大きく働いている場合、対人関係に(分子間力の大きい液体分子同様)ウェットな感覚が生まれる

(2)分子間力相当の心理的力があまり働いていない場合、対人関係に(分子間力の小さい気体分子同様)ドライな感覚が生まれる

と考えた。

液体気体の違いは、分子レベルのものである。したがって、この共通性を、実際に確認するには、物理的な大きさの相違を乗り越えて、人間の物理的身体と、物理化学的分子との大きさを揃えて眺める必要がある。

人間と分子、両者の大きさを揃えて考えるために、以下の2視点(のいずれか)を取ることにした。

(1)人間に対して、極めてマクロな(宇宙~地球全体レベルの)視点を取り、人間を物理化学の分子レベルのサイズへと極小化・粒子化して捉える。

(2)物理化学的分子に対して、極めてミクロ(電子顕微鏡レベル以下の)視点を取り、分子を人間の身体レベルのサイズへと、極大化・巨大化して捉える。

(1)においては、人間の存在を、従来の心理学に見られるような複雑極まりない行動メカニズムを持つ存在ではなく、単なる物理化学的粒子ないし分子になったものと仮定して、単純化して捉える。

(2)においては、物理化学的分子の存在を、従来の物理学におけるような極めて微小な存在ではなく、あたかも人間サイズの物理的身体を持って、あたかも心的意思を持って動き回る存在になったものと仮定して、擬人化して捉える。

人間の動きと比較する分子の種類は、動き回ることができる(流動性を持つ)、気体液体分子に限定される(固体分子は、流動性に欠けるので、除く)。

このように、人間と分子との物体サイズを揃えて眺めることにより、両者に共通して働く、物体間で互いに引き付け合い、牽制・束縛し合う力を、「分子間力分子レベル)」=「相互間引力人間レベル)」として、同様に捉える事が可能となる。
 

こうした、対人関係における、分子間力相当の、「相互間引力」とでも称すべき力のから、ドライウェットな対人感覚の分化が生じる、とする考え方を、「分子間力モデル」という言葉でまとめた。

こうした「分子間力モデル」をもとにして、どのような対人関係が、ドライないしウェットと感じられると予想されるかを、人間相互の間の心理的引力が働いている場合とそうでない場合とを対比させる形で、

「この対人関係は、(相互間引力が働いているから、)ウェットと感じられ、それと反対の、こちらの対人関係は、(相互間引力が働いていないから、)ドライと感じられるはずである」

とする予想仮説の抽出を逐次行った。
 

抽出した基本仮説を表にまとめると、以下のようになる。

基本仮説をまとめた表のページへのリンクです。
 

抽出した基本仮説を図にまとめると、以下のようになる。

仮説についてまとめた図(OHPシート)のページへのリンクです。

抽出した仮説についての詳細な説明は、以下のようにまとめられる。

仮説についての詳細な説明のページへのリンクです。


〔3.アンケート調査〕

抽出した仮説の数がある程度まとまったところで、それが本当に、ドライウェットと感じられるかどうかを確認するために、インターネットのWWWホームページを利用してアンケート調査および結果分析を行った(回答者数=約200名)。 アンケート調査の詳細な手順は、以下の通りである。

アンケート調査手順説明のページへのリンクです。


〔4.分析結果について〕

上記のアンケート調査について、結果を分析した結果、「分子間力モデル」に基づいて抽出した仮説が、ほぼ正しいことを確かめた。 分析した、アンケート項目毎の結果数値の表は、以下の通りである。

調査結果まとめの表のページへのリンクです。
 

詳細な結果数値を記述した表のページへのリンクです。
 

こうしてまとめた結果から、

 (1)ドライな性格・態度の人は、対人関係において、相互に分子間力相当の力(相互間引力)をあまり働かせようとしない、(乾燥ドライな感覚を人間に与える)気体分子の運動パターンに似た行動様式を取ろうとする人である

 (2)ウェットな性格・態度の人は、対人関係において、相互に分子間力相当の力(相互間引力)を大きく働かせようとする、(湿潤ウェットな感覚を人間に与える)液体分子の運動パターンに似た行動様式を取ろうとする人である

 と言えることを確認した。

人間が、対人関係の中で、他者に与えるドライウェットな感覚は、分子間力相当の力(相互間引力)の有無という点で、それぞれ気体液体分子運動が人間にもたらす感覚(ドライウェット)と、本質的に同じ起源を持つ、と考えられる。

すなわち、物体一般において、

(1)ドライな物体(分子~人間)では、相互間に働く引力小さい
(2)ウェットな物体(分子~人間)では、相互間に働く引力大きい

という法則が成立する、と推定される。


〔5.おわりに〕

本研究では、人間のどのような性格・態度が、なぜドライウェットな感覚を生むかについて、現実の気体液体分子運動パターンのの違いにヒントを得て考案したモデルを「分子間力モデル」と名付け、このモデルに基づくアプローチから説明できるドライウェットな性格・態度に関する仮説を、集団主義個人主義規制主義自由主義など17項目に分けて抽出した。抽出した仮説について、WWWを用いたアンケート調査を行い、分析した結果、仮説の内容がほぼ正しい(ドライな態度と仮定した項目は、現実にドライと感じられ、ウェットな態度と仮定した項目は、現実にウェットと感じられている)ことを、立証した。

今後は、今回抽出したドライウェットな性格・態度に関する項目を利用した心理テスト向けの尺度構成を行うと共に、抽出項目を用いて、性格のドライウェットさと、(1)日本人の国民性との関連、(2)男女の性差との関連などについて、さらにアンケート調査研究を進めて行きたい。



〔参考文献〕

Asch,S.E. Forming impressions of personality : Journal of Abnormal and Social Psychology, 41,258-290  1946
芳賀綏 日本人の表現心理  中央公論社 1979
吉井博明 情報化と現代社会 北樹出版 1996


(c) 大塚 いわお 1999