〔ドライ・ウェット仮説検証の手順について〕


抽出した仮説の数がある程度まとまったところで、それが本当に、ドライ/ウェットと感じられるかどうかを確認するために、インターネットのWebページを利用してアンケート調査および結果分析を行い、仮説が正しいことを確かめた。

インターネットWebページを利用する調査を行うことになったのは、民間企業(電機メーカー)で、社会心理学とは無関係の職場に勤務する筆者に、調査への回答を依頼できる手段(例えば大学研究者なら、講義を聞きに来る学生に、簡単にアンケート調査を依頼できる、といった、縁故ないしつてのようなもの)が一切なかったことにある。インターネットWebページを利用すれば、性格・態度のドライ・ウェットさに関心を持つ、不特定多数の回答者を、縁故やつてがなくても、十分集めることができる、と考えた。

アンケート調査は、仮説の正しさを仮確認する1回目(項目数約100)と、回答者数や回答項目の数を増やして1回目の結果が正しいかどうか追試する2回目(項目数約200)とに分けて行った。

まず、アンケート調査専用の、Perl言語ベースのCGIプログラムが動く、Webページを作成した。次に、1997.4~5にかけて、インターネットのニューズグループのいくつか(fj.sci.psychologyなど)に、「どういう態度がドライ・ウェットと感じられるか確認するアンケートを、Webページ上で行うので、協力してもらいたい」旨の記事を投稿し、この記事を見て指定したWebページにアクセスしてきた人たちを、アンケート調査専用Webページへと、誘導し、その結果、70名ほどの、主に男性からの、回答を得た。

アンケートの質問は、「(それぞれドライ/ウェットな感じを与えると考えられる)対になった2つの行動様式のうち、どちらがよりドライと感じられるか」ということを尋ねる形で行った。

早速結果を分析したところ、大体こちらが描いていた通りの仮説に合った感じの、分析結果が出た。しかし、回答者数が70名では少ない、性別が男性に偏り過ぎている、という欠点があった。また、もう少しいろいろな質問項目を試してみたい、という欲求も働いた。

そこで、よりパワーアップした項目内容を持つ、十分な回答者数があり、回答者の性別に偏りのない、アンケート調査を目指して、以下の手順を実行した。

まず、筆者の所有するインターネットWebサイト上に、初期調査で得られた仮の結果に基づいた、ドライ・ウェットの性格を診断する心理テストを作って、インターネット上の複数の検索エンジン(Yahoo!、goo、etc.)に登録した。

次に、その心理テストをやりたいとWebサイトにアクセスしてくる人たちに対して、1999.5~7にかけて、予め関所を設ける形で、「ドライ・ウェット説明や心理テストのページに行くには、まず、このアンケートに答えて下さい。回答することで初めて、ドライ・ウェット説明や心理テストのページに行けます。」というようにして、アンケート調査専用Webページへと、アクセスしてきた人たちをもれなく誘導した。

このやり方では、被験者が、予め筆者の仮説を知ってしまうことを予防できる、という効果もあると考えられた。また、もともとドライ・ウェットな性格・態度に関心のある被験者を集めることができ、被験者の回答モラル(熱心さ)が向上するとも考えられた。

アンケートの質問は、1回目と同じく、「(それぞれドライ/ウェットな感じを与えると考えられる)対になった2つの行動様式のうち、どちらがよりドライと感じられるか」ということを尋ねる形で行った。

アンケート項目の総数は、そのままだと約200項目に達し、インターネット上では、一人で全部回答するとなると、回答者の負担(心理的疲労、接続費用など)が重過ぎるので、ランダムに選択した30~40項目毎に1つのアンケート調査単位を作り(単位数は、合計6つ)、単位毎に、別々に、回答を得ることにした。

アンケート結果の集計は、PerlのCGIスクリプトを用いて、任意の時刻にその時点まで寄せられた回答の傾向を、割合や正規分布のz値、有意水準に達したかどうかの判定などをその場で全ての項目対について計算し、表形式に表示するようにした。

回答者数は、1日当たり40~50人であった。1人が何回も重複して回答するのを防ぐため、メールアドレスの明記を必須とし、同じメールアドレスからの回答は、何回回答しても、最新の1回のみを見るようにした。

回答者数が、各回答項目について、約220名(のべ回答者数は、約1300名)集まったところで、募集を打ち切り、結果分析を行った。

アンケート回答者の属性は、以下の通りである。
 
記号 回答数 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代
A 222 54.505% 45.495% 19.369% 68.018% 9.459% 0.901% 1.351% 0.450% 0.450%
B 220 53.182% 46.818% 25.455% 63.182% 9.091% 1.818% 0.000% 0.455% 0.000%
C 221 46.154% 53.846% 18.552% 69.231% 9.955% 1.357% 0.452% 0.000% 0.452%
D 231 45.887% 54.113% 24.675% 67.100% 4.762% 2.597% 0.866% 0.000% 0.000%
E 245 54.286% 45.714% 28.980% 61.633% 8.980% 0.000% 0.000% 0.000% 0.408%
F 222 51.802% 48.198% 23.423% 65.766% 9.009% 1.802% 0.000% 0.000% 0.000%

結果の分析は、互いに独立でない一組の標本における比率の差の検定を用いて、ドライ VS ウェットの大きさを比較する形で行った。検定方法については、例えば、中道實「社会調査方法論」(恒星社厚生閣 1997)p.353の例題11.3を参照し、以下のような数式で行った。

AP (UAPと同一の項目対にあって)当初の仮説でドライではないかと予想した方の項目において、実際にドライであると判定された割合

UAP (APと同一の項目対にあって)当初の仮説でウェットではないかと予想した方の項目において、実際にはドライであると判定された割合

ちなみにAPとUAPとは、同一の項目対において、互いに正反対の態度を述べており、1つの項目対において一方がドライであるとすると、他方は、自動的にウェットである、ということになる。正規分布のz値の求め方は、

z = ABS(AP - UAP)/SQRT((AP + UAP) / n)

とした。

有意水準a = 0.01 で帰無仮説(ドライ=ウェット)が棄却される(ドライ>ウェットであると確言できる)には、z = 2.33以上が必要である。

有意水準a = 0.05 で帰無仮説(ドライ=ウェット)が棄却される(ドライ>ウェットであると確言できる)には、z = 1.64以上が必要である。

有意水準a = 0.10 で帰無仮説(ドライ=ウェット)が棄却される(ドライ>ウェットであると確言できる)には、z = 1.28以上が必要である。

本研究の調査結果説明では、ドライとした割合が、ウェットとした割合よりも有意に多かった項目のみ(有意水準0.01以下)をピックアップして列挙し、説明している。



(c)1999-2000 大塚いわお