ドライ・ウェットな対人行動と気体・液体分子運動との関連について

1992-2008 大塚いわお



人間行動へのドライ・ウェットさの視点の導入は、今までほとんど接点のなかった、人々の対人・社会行動と、分子や物体運動に関する物理学とを結びつける効果をもたらす。

要するに、ドライ・ウェットな人~物体~分子といったサイズの異なる各粒子は、粒子のサイズが違っていても、ドライな場合、ウェットな場合とで、それぞれ共通の行動・運動様式を持っていることを示すことができるのである。

各粒子の動きが、気体分子の運動パターンと同じ場合は、人間には、粒子の動きが、分子~人間まで共通に、ドライに感じられる。

一方、各粒子の動きが、液体分子の運動パターンと同じ場合は、人間には、粒子の動きが、分子~人間まで共通に、ウェットに感じられる。

(注)上記のアイデアを筆者が最初に思いついたのは、1992年頃です。1992年当時の考えをまとめた「気体、液体型行動様式」のページへのリンクです。


気体・液体分子運動パターンの実例へのリンクです(シミュレーションプログラムは、筆者ではなく、他のその道に詳しい方の作品です)。


(注)上記の、液体・気体分子運動パターンという言い方を、より簡略化して呼びやすく、覚えやすくする必要がある。

以下では、気体分子運動パターンは、ドライな(乾いたDry)感覚を与えるため、頭文字のDを取って、パターンDと呼ぶことにする。

一方、液体分子運動パターンは、ウェットな(湿ったWet)感覚を与えるため、頭文字のWを取って、パターンWと呼ぶことにする。

こう略すことで、例えば、液体分子群や、日本人の行動様式が共通の「パターンW」に沿っており、気体分子群や、欧米の人々の行動様式は共通の「パターンD」に沿っている、などと簡便に表現することができる。


上記の説明が正しいことを、webでのアンケート調査(2005.03下旬実施)により確認した。

インターネット上に開設したドライ・ウェット性格診断のwebサイト(すなわち当サイト)の入り口に、「このアンケートに回答することで初めて性格診断のページに行けます。」という関所を設け、その関所のページとして、「ドライ・ウェットな行動についてアンケート」と称して、webサイト来訪者に回答を求めた。

アンケートのページでは、気体・液体分子運動パターンの映像を左右2つ並べて回答者に自由に再生させ、その上で、それぞれ左右の「人々」が、どの程度ドライ・ウェットですか?と回答させた。

具体的には、上記Ar(アルゴン)の絶対温度20度(液体)と300度(気体)のそれぞれの分子運動パターンをシミュレートするJavaプログラムの動作画面を、パソコン上でキャプチャして、ビデオムービーに加工し、webサイト上にアップロードした上で、以下の説明文を付け加えた。

「以下の左右のムービーは、それぞれ別々に、人々の行動パターンを早送りで縮小表示したものです。一つ一つの粒々の動きが、個人個人の動きを表しています。」

(実際に回答者に見せたムービーと同一内容のムービーを以下で再生可能です)
人々の行動パターンその1
(実は、液体分子運動=パターンW)
人々の行動パターンその2
(実は、気体分子運動=パターンD)


そして、「左右のムービーを自由に再生して、左右それぞれの人々の行動が、どれほどドライ、ないしウェットに感じられるか、評価して下さい。評価が完了したら、一番下の「回答する」ボタンを押して下さい。」

と称して、実際には、気体・液体の分子運動のシミュレーション映像なのを、「これは別々の人々の行動パターンの早送り映像です」とウソをついて、「それぞれの映像の人々がどの程度ドライですか、ウェットですか?」と、人間行動として答えさせた。

要は、粒々の動きが、気体分子と同じなら、粒子の大きさや中身に関係なく、皆ドライと感じられ、一方、液体分子と同じなら、どんな粒子でも共通にウェットと感じられることを確かめるために、「この粒子は人間を表しています」とウソをついたのである。

むろん、どちらかが液体分子運動で、他方が気体分子運動であるということは、一切明らかにせず、隠して回答させた。

評価は、「とてもウェット(-3)、かなりウェット(-2)、ややウェット(-1)、どちらでもない(0)、ややドライ(1)、かなりドライ(2)、とてもドライ(3)」の7段階で付けてもらった。

その結果、液体分子運動パターン(パターンW)は、実際、「人々の行動として」、よりウェットに感じられ、気体分子運動パターン(パターンD)は、「人々の行動として」、よりドライに感じられることが分かった。

回答結果は、以下の通りである。
回答時期

2005年04月上旬

回答数 200

男 33.000%
女 67.000%

10代 44.000%
20代 38.000%
30代 12.000%
40代 3.500%
50代 1.500%
60代 1.000%
70代 0.000%

回答比率
〔1.1-2〕
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
1行動パターンその1(液体分子運動)
=パターンW
-1.365
6.5003.5008.0007.00012.00030.00033.000
2行動パターンその2(気体分子運動)
=パターンD
0.795
16.50026.00018.50016.50010.5006.0006.000



「ドライ・ウェットな行動について」webアンケート結果詳細分析ページ(PDF)へのリンクです。



[パーソナリティ研究 第16巻 2号(2008年1月) p250~252 より部分転載]

その後、2006年12月頃、気体、液体の分子運動のドライ、ウェットさの測定を、上記のようにドライ-ウェットさを1つの軸の上で捉えるのではなく、ドライさ、ウェットさをそれぞれ別々に測定して、気体分子運動でドライと感じる度合いがウェットと感じる度合いを上回るか、液体分子運動でウェットと感じる度合いがドライと感じる度合いを上回るかを確認する作業を行った。

すなわち、インターネット利用者(研究参加者)に気体,液体の分子運動シミュレーションムービーを見せて,各分子の動きを人の動きと見立てた場合それぞれどの程度ドライ,ウエットと感じるか調べることにした。

・方法

[データ収集方法] インターネットのwebサイトで回答を収集した。回答のカウントに当たっては,同じ研究参加者が複数回回答する可能性に対応するため,回答時に同一のIPアドレスの持ち主は同一の回答者であると見なし,同一のIPアドレスの複数回答は最新の1個の回答のみを有効と見なすとともに,cookieを利用して複数回の回答を受付けないように設定した。

[研究参加者] 回答を得た研究参加者の総数は206名(男性102名,女性104名)であった。性別情報は,回答時に性別選択欄をwebページにラジオボタンで設け,選択入力してもらうことで得た。

[調査時期] 調査時期は,2006年12月4日から9日の6日間であった。

[刺激映像] 刺激は,Ar(アルゴン)の分子運動パターンをシミュレートするJavaプログラムを,池内(2002)のwebサイトより入手し,液体と気体それぞれの分子運動を最も明確に示すように,絶対温度20度(液体)と300度(気体)のそれぞれの分子運動を表すように調整した。プログラムが表示した気体,液体各分子運動のムービーを,パソコン上でキャプチャし,各々30秒間のwindows media video形式のムービーに加工して,webサイト上で研究参加者のパソコンから再生可能とした。

[質問項目] 上記各ムービーについて「これは,人々の動きを早送りで再生したものです。一つ一つの粒々が一人一人の人間を表しています。このムービーにおける人々の性格がどの程度ドライ,ウエットに感じられるか5段階評価して下さい。」として,ドライ,ウエットそれぞれ別々に回答させた。段階は,「感じない(0) -少し感じる(1) -やや感じる(2) -かなり感じる(3) -とても感じる(4)」とした。

[手続き] 各ムービーは,一度に1個ずつ,順番をランダムにして呈示し,ムービー毎に回答させるようにした。また,研究参加者のコンピュータ環境に対応しつつ,刺激提示の条件を揃えるために,「再生回数は可能な限り2回まででお願いします」の旨,断り書きを付けて,読んでもらった。なお,実験操作のデブリーフィングとして,回答が完了した時点で,「実はこれは,気体,液体分子運動のシミュレーションムービーでした。」という断り書きを画面上に呈示した。

・結果

気体,液体分子運動パターンが,人の性格としてそれぞれドライおよびウエットと感じられた度合いの評定値の平均値と標準偏差はTable 1に示した通りである。
見せたムービーの種類別にドライ,ウエットに感じた度合いの違いを見るため,対応のあるt検定を行った。結果はTable 2の通りである。
液体の分子運動を見たとき,ドライ,ウエットと感じる度合いについては,ウエットと感じる度合いの数値が,ドライと感じる度合いよりも,有意に高かった(t(205)=8.74,p<.01)。
気体の分子運動を見たとき,ドライ,ウエットと感じる度合いについては,ドライと感じる度合いの数値が,ウエットと感じる度合いよりも,有意に高かった(t(205)=3.21,p<.01)。
気体と液体とではどちらをよりドライと感じるかについては,気体分子運動パターンをドライに感じる度合いが,液体分子運動パターンをドライに感じる度合いよりも有意に高かった(t(205)=6.32,p<.01)。
気体と液体とではどちらをよりウエットと感じるかについては,液体分子運動パターンをウエットに感じる度合いが,気体分子運動パターンをウエットに感じる度合いよりも有意に高かった(t(205)=8.25,p<.01)。

Table.1

刺激種類 ドライ ウェット
液体分子運動 0.85
(1.17)
2.09
(1.50)
気体分子運動 1.60
(1.46)
1.15
(1.24)

(かっこ内は標準偏差)


Table.2

比較対象 t検定結果 有意水準
液体ウェット-液体ドライ t(205)=8.74 p <.01
気体ドライ-気体ウェット t(205)=3.21 p <.01
気体ドライ-液体ドライ t(205)=6.32 p <.01
液体ウェット-気体ウェット t(205)=8.25 p <.01



以上の結果により,気体分子運動のシミュレーションを人に見立てて観察させるとドライな性格と認知され,一方,液体分子運動はウエットな性格と認知されることが分かった。気体分子運動パターンと同様に振る舞う人のパーソナリティはドライに,液体分子運動パターンと同様に振る舞う人ではウエットに感じられると考えられる。


上記の気体分子運動パターン(パターンD)、液体分子運動パターン(パターンW)は、言葉で言い表すならば、以下のような単語~短文で表現できると考えられる。
分析視点 パターンW パターンD
(1)近づき くっつく。近づく。 サラリと離れる。離反する。
(2)つながり 連続する。つながる。癒着する。 (関係を)切断する。
(3)着床 付く。粘着する。 はがれる。
(4)まとわりつき まとわりつく。なつく。 別れる。
(5)集合 集まる。密度が高い。 散る。密度が低い。
(6)一つ 一体・融合化する。一つになる。 バラバラである。互いに独立している。
(7)同じ 同じである。 違う。別の途を歩む。
(8)速度 ゆっくりである。 速い。
液体分子運動。
つきたての餅。
気体分子運動。
シリカゲルの粒、ビー玉。

上記の表現が、本当に、それぞれパターンDならよりドライに、パターンWならよりウェットに感じられるかどうか、2005年9月頃、アンケート調査を行った。

「単語で表された人や物の動きが、どれほどドライ、ないしウェットに感じられるか、評価して下さい。評価が完了したら、一番下の「回答する」ボタンを押して下さい。」として回答してもらった。

としして、どちらかが液体分子運動、他方が気体分子運動を表しているということは、一切明らかにせず、隠して回答させた。

評価は、「とてもウェット(-3)、かなりウェット(-2)、ややウェット(-1)、どちらでもない(0)、ややドライ(1)、かなりドライ(2)、とてもドライ(3)」の7段階で付けてもらった。

その結果、液体分子運動パターン(パターンW)の表現は、実際よりウェットに感じられ、気体分子運動パターン(パターンD)の表現は、よりドライに感じられることが分かった。

回答結果は、以下の通りである。

回答時期

2005年09月下旬

回答数 201

男 33.831%
女 66.169%

10代 39.303%
20代 41.791%
30代 13.433%
40代 3.483%
50代 0.995%
60代 0.498%
70代 0.498%

回答比率
[1.くっつき]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
1くっつく -1.035
0.9955.9707.4638.45839.30326.86610.945
3離れる 1.060
13.43326.86633.83113.9305.4732.9853.483
[2.つながり]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
2つながる -0.940
2.4886.4684.97523.88120.89625.37315.920
4切れる 1.781
44.77624.87611.9408.9554.4781.4933.483
[3.着床]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
5粘着する -1.692
5.4733.4834.9758.9557.46318.90550.746
6はがれる 0.856
7.96016.91541.79122.8867.9601.4930.995
[4.まとわりつき]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
7まとわりつく -1.448
5.9703.4834.4787.46313.93033.83130.846
8別れる 1.050
20.39817.91031.34317.9105.9701.9904.478
[5.集合]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
9集まる -0.308
2.9854.9758.95543.78125.3738.4585.473
11散る 1.095
14.92518.40840.79619.4032.9850.4982.985
[6.一つ]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
10一体化する -1.055
3.9804.4784.97523.88119.40317.91025.373
12バラバラになる 1.423
24.37829.85123.38315.4232.9850.9952.985
[7.同じ、仲良し]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
13同じになる -0.423
5.4732.4884.47845.77122.88611.4437.463
15違う 0.478
6.9657.96030.84643.2844.9752.9852.985
[8.速度]
No.文章グラフ表示合計値
(ドライ3~ウェット-3)
とても
ドライ
かなり
ドライ
やや
ドライ
どちら
でもない
やや
ウェット
かなり
ウェット
とても
ウェット
14ゆっくりである -0.373
2.4880.9954.97554.72626.8664.9754.975
16速い 0.672
9.95013.43324.37845.7711.9901.4932.985


「ドライ・ウェットな表現について」webアンケート結果の詳細な統計分析ページ(PDF)へのリンクです。



ここで、気体、液体分子運動パターンに従った粒子の動きは、従来の社会学や心理学における概念表現に合わせるならば、それぞれ、

液体分子(ウェット)
=パターンW
気体分子(ドライ)
=パターンD
集団主義 個人主義
規制主義 自由主義
反プライバシー プライバシー尊重
・・・ ・・・

といったように表せる。より詳細には、以下のリンクを参照されたい。

ドライ(気体的)・ウェット(液体的)な分子・粒子の運動パターンを整理した表へのリンクです。


上記気体・液体の分子運動を、人間の行動に直して捉えたものとしては、以下のリンクを参照されたい。

分子~人間に共通な、粒子の行動パターンを、人間個人の性格として整理した表へのリンクです。

このことから、気体・液体分子運動シミュレーションと相似の方法によって、ドライな社会、ウェットな社会の人々の行動を、コンピュータでシミュレートできる、と言える。

例えば、日本、東アジアの人たちがウェットで、欧米の人たちがドライだというのは、農耕、女性主体の、日本、東アジア社会の人たちの行動様式が、本質的に液体分子運動に似ており、一方、遊牧・牧畜、男性主体の、欧米社会の人たちの行動様式が、気体分子運動に似ていることを示している。

遊牧・牧畜、男性中心の欧米社会は、(人々の動きが)空気のような気体に近く、気体分子運動(パターンD)でシミュレートでき、「気体型社会」と呼べる。農耕、女性中心の日本、東アジア社会は、(人々の動きが)水滴のような液体に近く、液体分子運動(パターンW)でシミュレートでき、「液体型社会」と呼べる。

このように、ドライ・ウェットさの視点を世界の社会文化の分析へと導入することは、物理学で発達している物体の動きをコンピュータでシミュレートするノウハウを、そのまま社会学、心理学で生かせるようになる効果をもたらし、社会学、心理学の発展に寄与する度合いが大きいと言える。


ドライ・ウェットな物体(分子を含む)~人に共通する運動・行動パターンについて、以下の図にまとめた。






ドライ・ウェットさの分子~物体~人間レベルの間の相互関連についてのより詳しい説明は、以下の通りである。


1 気体・液体分子運動パターンの説明

人間のどのような行動様式が、なぜドライ・ウェットな対人感覚を生むかについては、まず、本来人間にドライ・ウェットな感覚の相違を与える、物理的な気体・ 液体の性質の相違を生み出すメカニズムを、改めて確認する必要がある。ドライな感覚を与えるのが、気体で、ウェットな感覚を与えるのが、液体である。両者 の相違を見るには、視点が、分子レベルまで小さくなる必要がある。

具体的に気体分子と液体分子の、両者の相違を生み出しているのは、
[1]運動エネルギーの大きさ(動きの度合い)の違い
液体では、動き回る度合い(運動エネルギー)が小さい(あまり動き回らない、低速である)。
気体では、動き回る度合い(運動エネルギー)が大きい(よく動き回る、高速である)。
[2]「分子間力」の働く度合いの違い
液体では、分子同士の間に、互いの距離を縮めて、互いに引き付け合い、くっつき合い、足を引っ張り合ったり、牽制し合う、「分子間力」という引力が、大き く働いている
気体では、分子同士の間に、上記の、互いに相手と近づき、引きつけ合う「分子間力」が、ほとんど働いていない
である。
 「分子間力」の働く度合いが、液体で大きく、気体で小さいのは、
(1)液体分子では、運動エネルギーが小さいため、もともと分子間に存在する、相互に引きつけ、くっつき、牽制し合う力(分子間力)を振り切って動き回る ことができず、分子間力のいいなりになっている
(2)気体分子では、動き回る度合い(運動エネルギー)が大きいため、分子間力を振り切って動き回ることができ、「分子間力」の影響から自由になっている
ためである。

 「分子間力」の働く度合いが、液体で大きく、気体で小さいのは、
(1)液体分子では、運動エネルギーが小さいため、もともと分子間に存在する、相互に近づき、引きつけ、牽制し合う力(分子間力)を振り切って動き回るこ とができず、分子間力のいいなりになっている
(2)気体分子では、動き回る度合い(運動エネルギー)が大きいため、分子間力を振り切って動き回ることができ、「分子間力」の影響から自由になっている
ためである。



2 物体一般への適用

液体の水は、指先で触れると、濡れて皮膚にくっつき、まとわりついて離れようとしない。その点、液体の水と指先との間には互いにくっついたままの状態で いようとする引力が働いていると言える。また、液体の水は指先を動かさない限り、いつまでも同じところに留まって動かない。その点、液体の水は、気体の水 蒸気などに比べて、運動・活動性が低いと言える。

そこで、さらに考えを拡張すると、物体一般において、
(1)物体(分子~人間)の、運動・活動・移動・流動性が高く、相互間に働く引力(結合力)が小さい(互いに離れる)場合、ドライである(乾いている)と 感じられる
(2)物体(分子~人間)の、運動・活動・移動・流動性が低く、相互間に働く引力(結合力)が大きい(互いに離れない)場合、ウェットである(湿ってい る、濡れている)と感じられる
という法則が成立する、と推定される。

この推定が正しいことを説明するには、分子よりもずっと人間に近いサイズの物体において推定が成立することが必要となる。そうしたより人間寄りのサイズの 物体としては、例えば、海岸や河川、砂漠に分布する砂の粒や、人間(特に女性)の髪の毛、大豆を発酵させて作る納豆、溶けた糖分を冷やして固めて作った菓 子のキャンディ、より大きなものとしては、卓球用のプラスチックボールや、バレーボールなどがあげられる。

乾いた(ドライな)砂は、触っても手にくっつかずサラサラと一粒ずつバラバラに離れて落ちる(接着・粘着性がない)。また、風が吹くとそれに従ってサラサ ラと移動する(流動性がある)。これに対して、湿った、濡れた(ウェットな)砂は、触ると手にくっついてそのまま離れようとしない(接着・粘着性があ る)。また、団子状にひとかたまりになって、風が吹いても動こうとしない(流動性がない)。

水に濡れた髪は、髪の毛同士がひとまとまりになってなかなかバラバラになってくれないし、風が吹いてもなびいて動こうとしない。一方、乾いた髪は、風にな びいてサラサラ・バラバラと一本ずつ個別に分離して動き、流動性がある。

納豆は、かき回すとネバネバとした糸を引いて互いに糸で接続し、くっついて一つにまとまった状態で静止しようとする。その際、一粒の豆と豆との間を引力が糸を引く形で働いており、分子間力相当の力に相当すると考えられる。

表面が溶けた(液体化した)キャンディの粒々は、指先や他のキャンディとベタベタくっついて取れない。一粒ずつ動かそうとしても、互いにくっついて動かす ことができない。

あるいは、卓球用プラスチックボールやバレーボールは、そのままでは手離れよく一つずつバラバラになって動き回るが、接着剤を表面に広く塗り付けたり、両 面粘着テープ全面に巻き付けるとベタベタ互いにくっつき、結合し合って離れず、一つずつバラバラに独立させることが難しいし、活発に動かそう、飛ばそうと してもすぐ別のところに接着してしまって動こうとしない。

この場合、こうした物体の接着・粘着性(いったんくっつくと離れようとしない性質)が、互いの間に働く引力(互いに離れずくっつき、接続し合おうとする 力)を大きくし、運動・活動・移動・流動性を奪っていると考えられる。すなわち、物体における互いにネバネバ、ベトベトと互いにくっつこうとする接着・粘 着性が、物体同士を互いに引き合わせ、動きにくくする形で、物体にウェットさをもたらすことになる。これは、例えば接着剤が長時間外部に露出し続けて溶剤 が抜けてベタベタしなくなると、乾いた、ドライになったと感じられることからも例証される。

上記の考えが正しいかどうか確認するために、web質問紙調査を、2002年4月下旬および10月上旬に実施した。調査は、対にした、物体がもたらす 感覚について説明した2つの文章のどちらがよりドライに感じられるか尋ねるもので、1質問項目当たり約200名の回答者という規模で行った。分析した結果、上記の、
(1)触るとサラサラとして手からすぐ離れる(粘り気がない)物体の方が、ベタベタくっつく(触るとネバネバしている)物体よりも、よりドライに感じられ る。ないし、互いに離れることで、間隔が開いて風通しのよい状態の物体の方が、互いにくっついて風通しの悪い状態の物体よりも、よりドライに感じられる。
(2)バラバラに自由に動き回る物体の方が、互いにくっつき合って動かない物体よりも、よりドライに感じられる。ないし、動きのある物体の方が、動かずに 停滞した状態の物体よりも、よりドライに感じられる。
ことが実際に確認された。

web 質問紙調査(確認用)結果数値へのリンクです。

以上の考えを分かりやすい言葉でまとめると、一般に、粘り気・接着力があり、互いにベタベタくっつき合って動かない物体はウェット、反対に、手からサッと 離れて、互いにサラサラと離れて動き回る物体はドライに感じられる、と言える。

この場合、ウェットな物体は、互いに他の物体とくっつき合おうとし、ドライな物体は互いに離れようとする点、両者は、物体間の相互作用、社会関係の面から見て、対照的な性格を持つと言える。

こうした、分子レベルよりもずっと大きい物体サイズの事例から、前記の分子レベルでのドライ・ウェット感の範囲を物体一般に広げることが可能だと考えられる。



3 対人関係への応用

この物体一般におけるドライ・ウェット感覚をさらに人間レベルまで拡張して捉えた場合、水のような液体、空気のような気体が、人間に対してウェット・ドラ イな感じを与えるしくみと、人間同士が、人付き合いで、互いに相手に対して、ウェット・ドライな感じを与えるしくみとは、互いに共通なのではないか、と考 えられる。

すなわち、物体一般レベルで見られる、運動・移動性および引力の概念を人間に当てはめることにより、
(1)人間が、一カ所に止まってあまり動こうとせず(活発に動き回る度合いが小さく)、周囲の他者と互いに近づき、くっつき合い、離れようとしない(引力 が大きく働いている)場合、対人関係に(運動エネルギーが小さく分子間力の大きい液体分子同様)ウェットな感覚が生まれる。
(2)人間が、一カ所に止まらずにあちこち移動・流動し(活発に動き回る度合いが大きく)、周囲の他者との間に互いに近づいたり、くっつき合ったりせず、 離れようとする(引力があまり働いていない)場合、対人関係に(運動エネルギーが大きく分子間力の小さい気体分子同様)ドライな感覚が生まれる。
と考えられる。

この場合、物体サイズを分子サイズから人間サイズへと揃えて眺めることにより、両者に共通して働く、物体の動き回るエネルギーを「運動エネルギー(分子レ ベル)」=「運動・活動・移動・流動性(物体~人間レベル)」、物体間で互いにくっつき、接続・結合・集合し合い、牽制・束縛し合う力を「分子間力(分子レベ ル)」=「引力、結合力(物体~人間レベル)」として、同様に捉える事が可能となる。

上の説明を一言でまとめると、活動や運動面での活発さの差、およびそれによってもたらされる、分子間力相当の引力の大小から、それぞれウェット・ドライな 対人感覚の分化が生じる、ということになる(この説明を考案したのは1991~1992年頃、当時の資料へのリン クはこちら)。

この場合、人間においては、物理的な肉体による活動・運動や身体同士の引っ張り合いと並んで、具体的な物理運動を伴わない心理的な活動・運動や相互牽制、 接近をも同時に考える必要がある。例えば、机の前に座ったままで、知的好奇心に満たされて様々な分野の書籍を読みあさったり、いろいろ活発に物事を考えた りしている状態では、物理的には不活発だが、心理的には活発に動き回っていると捉えることができる。あるいは、物理的に離れた地点に暮らしている恋人同士 が電話によるコミュニケーションで強い心理的一体感を抱いている状態では、物理的には遠いままでも、強い心理的引力が両者の間に働いていると捉えることができる。

このように、人間の活動・運動や引力については、物理的なものと心理的なものに分けられるが、以下ではこのうち心理的な方を主に取り上げる。人間の身体の 物理的な活動・運動や身体同士の引っ張り合いは、あくまで身体内部の神経系の活動を反映した表面的なものに過ぎず、神経系の働きに基づく心理的な活動・運動や引力の方が、人間の行動をより根源的に決定していると考えるためである。

対人感覚でドライな感覚を与える運動・活動性の実態は、人間に内在する、あちらこちらの互いに離れた地点間を活発に移動しようとする心的指向(空間移動指向)、および、今まで行ったことのない地点・地域へも進んで拡散していこう、新天地を積極的に切り開こう(新規対象を開拓しよう)とする心的指向(拡散指 向)である。この場合、物理的居場所や心理的に興味ある分野を変えることで生活上の雰囲気を一新し、新たな刺激を得たいという欲求や、今まで出会ったこと のない未知のものごとに対する好奇心、言い換えれば(今まで~ここしばらくの間)経験したことのない新たな(新鮮な)情報に接したいという心的衝動(新規 情報受信衝動)が運動・活動性の原動力となっている。これとは反対の、一カ所に静止して動こうとしない定住・定着・不拡散指向は、運動・活動性の欠如を意 味し、対人感覚ではウェットな感覚を与える。

一方、対人感覚においてウェットな感覚を与える心理的な引力、結合力の実体は何であるか?それは、人間に内在する、周囲の他者と心理的に近くなろう、近い 状態でいようとする指向(心理的近接指向)である。

すなわち、(心理的に)相互に引き合うということは、互いの(心理面での)存在位置を次第に近づけていき、最終的には抱き合って一つになる(一体化する、 融合する)、そして互いにくっついて離れないということである。相手への心理的な距離を縮小していき、最終的にはゼロにしよう、接続しよう、つながろうと する指向が強いと、それが互いの間であたかも引力のように感じられ、対人感覚においてウェットな感じをもたらす、といえる。

この心理的近接指向については、以下のリンクで詳細に説明している。

心理的近接とドライ・ウェットさとの関連へのリンクです。


以上の説明を分かりやすい言葉でまとめると、対人関係において、
(1)心理的に相手にベタベタくっついて離れようとしない(粘着・接着・接続・結合・集合性を持った)、そして、そのまま動こうとしない(定着・定住性を持っ た)人はウェットに感じられる
(2)相手に対してあっさりとして深入りせず、すぐサラリと離れる(非粘着・非接着・切断・離散性の)、そして、あちこち活発に動き回って移動する(運動・活 動・移動・流動性を持った)人はドライに感じられる
と言える。

この場合、粘着・接着力は、互いに近づき、引きつけ合い、くっつき合うことを指向する点、引力の一形態と言える。この粘着・接着力は、また、人や物をその 場に引き止めて離さず、動けなくする非移動(活動、運動)化=定着・定住化の効果も併せて持っている。

分子にせよ、物体にせよ、人間の心理にせよ、相手にベタベタと粘着的にまとわりついて離れず、そのまま動こうとしない場合は、皆共通にウェットに感じられ、その逆は共通にドライに感じられると言える。


4.社会的視点の必要性

ドライ・ウェットな性質というのは、粒子単独を見ただけでは見えてこない。複数粒子の形成する社会、個体群を見ることで初めて見えてくる。

ドライ・ウェットの相違は、粒子と他粒子との相互作用のあり方の違いである。互いに他粒子とくっつく、一体化する、相互束縛するのがウェットで、他粒子とバラバラに離れて自由に動くのがドライである。

こうした性質は、粒子を複数同時に見ないと分からない性質である。その点、ドライ・ウェットさの検討を.行うには、粒子単独の動き、単独者の心理を見るだけではダメで、極めて社会的視点が必要なのである。

この場合、相互作用する粒子の種類やサイズは、互いに同じとは限らない。サイズに関しては、一方が極小サイズでもう片方が巨大サイズということもある。例えば、人間(巨大)の皮膚にくっつく液体の水の分子(群)(極小)が、種類とサイズが異なる例に当たる。粒子のサイズが異なっても、粒子相互の間に働くドライ・ウェットな性質は観察可能である。


(c)1992-2008 大塚いわお

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