
ドライ・ウェットな行動様式 詳細分類と説明
(c)1999.7~2005.2 大塚いわお
筆者が抽出した、ドライ・ウェットの次元上に乗っていると想定される対人行動の様式は、以下の表のように分類可能である。
| |
ウェット |
ドライ |
| 〔A〕 |
〔心理的近接指向〕 |
| 〔A1〕 |
〔他者との心理的位置の同一・共通化〕 |
| [A1.1] |
集団主義
互いに集まり、まとまって動こうとする |
個人主義
互いに一人ずつ単独・個別にバラバラに動こうとする |
| [A1.2] |
密集指向
互いに狭い領域に密集する |
広域分散指向
互いに広い領域に散らばる |
| [A1.3] |
画一(同質)指向
互いを画一的な枠にはめようとする |
多様性の尊重(異質指向)
互いの多様性を重んじる |
| [A1.4] |
同調指向
取る行動を互いに合わせようとする |
反同調指向
取る行動を互いに合わせようとしない |
| [A1.5] |
主流指向(権威主義)
自分の取る意見について(すでに認められた)主流派の後を付いて行こうとする |
非主流指向(反権威主義)
自分の取る意見について少数派で構わないとする |
| 〔A2〕 |
〔他者との関係・縁故の構築〕 |
| [A2.1] |
関係指向
他者との間に積極的に人間関係を持とうとする |
非関係指向
他者との間であまり人間関係を持とうとしない |
| [A2.2] |
縁故指向
既に結び付き(縁故)のある他者との関係を優先する |
非縁故指向
他者との関係を持つ上で既存の縁故の有無を問わない |
| 〔A3〕 |
〔行動決定の自由〕 |
| [A3.1] |
規制主義
互いに行動を規制し合う |
自由主義
互いに自由に行動しよう(動き回ろう)とする |
| 〔A4〕 |
〔行動の自己決定〕 |
| [A4.1] |
相互依存指向
互いに依存し合う(もたれ合う) |
独立(自立)指向
互いに独立・自立して行動する |
| [A4.2] |
他律指向
自分の意思を自分だけでは決めず、周囲に決定を任せる |
自律指向
自分で自分の意思を決められる |
| 〔A5〕 |
〔プライバシーの確保〕 |
| [A5.1] |
反プライバシー
互いのプライバシーを重んじない |
プライバシー尊重
互いのプライバシーを重んじる |
| 〔A6〕 |
〔行動の明快さや合理性の確保〕 |
| [A6.1] |
あいまい指向
自分の取る意見がが率直・明快でない |
明快(反あいまい)指向
自分の取る意見が率直・明快である |
| [A6.2] |
非合理指向
物事に対して心情的に割り切ることができず、合理的でない |
合理指向
物事に対して心情的に割り切って、合理的に行動する |
| 〔A7〕 |
〔集団の開放性の確保〕 |
| [A7.1] |
閉鎖指向
閉鎖的な集団にいるのを好む |
開放指向
開放的な集団にいるのを好む |
| 〔B〕 |
〔心理的運動・活動・移動指向〕 |
| 〔B1〕 |
〔動的エネルギー・移動性の確保〕 |
| [B1.1] |
静的指向
自発的に動き回ろうとしない |
動的指向
自発的に動き回ろうとする |
| [B1.2] |
定着指向
今いる土地や組織に定着しようとする |
非定着(移動・拡散)指向
今いる土地や組織に定着せず絶えず移動しようとする |
| [B1.3] |
前例指向
自分が今までいた領域にとどまろうとする |
独創指向
未知の領域に進もうとする |
以下では、上記整理結果をもとに、具体的にどのような人間の行動様式が、ドライ・ウェットさと関連があるかについて、詳細に説明する。ドライ・ウェットな行動様式の詳細な内容を、それらがどのように活動・移動性の有無、心理的に近接する指向の強弱によって説明できるかも含め、一通り述べる。
●A.心理的近接指向(ウェット)-非近接指向(ドライ)
他者と心理的に近づき(距離を縮め)、くっついて、離れようとしない指向の強さに関する。
◎A1.他者との心理的位置の同一・共通化(ウェット) -相違・差異化(ドライ)
心理的に他者のいるところへ行こう・集まろうとするかどうかについての次元が存在する。すなわち、他者と心理的に近接するためには、他者と同じところ(心
理的位置)を占める必要があり、そのために人々は集団を作ったり、密集したり、同調行動を取ったりする。
○A1.1 集団主義(ウェット)-個人主義(ドライ)
| A1.1 |
ドライ=個人主義 |
ウェット=集団主義 |
| 定義 |
互いに一人ずつ単独・個別にバラバラに動こうとする |
互いに集まり、まとまって動こうとする |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
単独・ひとりで行動するのを好む |
集団・団体で行動するのを好む |
| 2 |
他者からの分離・独立を好む |
他者との一体化・融合を好む |
| 3 |
自分個人の利益を優先する |
自分の属する集団の利益を(個人の利益よりも)優先する |
| 4 |
ひとりで他者とは別の道を歩むのを好む |
ひとりで他者とは別の道を歩むのを好まない |
[説明]
各個人に、心理的な引力、他者へと心理的に近接しようとする考えが働いている状態では、個人同士は、互いにくっつき合うことで、互いにまとまりを作り、一
つに集まる(のを好む)。心理的に互いに接近し合うことで、各人が一つの集団・団体の中で、互いに心理的にくっついて一体化し、融合することになる。いっ
たんくっつき合って集団を作ると、その中で互いに引き合い、まとまり合う力が働いて、みんな一緒にいようとする。集団を作って互いでひとまとまりでいる状
態を維持しようとし、集団を割ろうとする力を否定しようとする。こうした集団内では、人々を集団に引き止める力(集団凝集性)が働いており、集団・団体で
い続けようとし、集団全体の動きを、自分個人の動きよりも重要視するようになる。これは、集団全体の利益を、自分個人のそれよりも、優先しようとすること
につながる。中にいる個人が外に独りで出ようとする(脱退しようとする)と、それと反対方向に力が働いて、集団の中に引き戻そうとする。このように、互い
に集まり、まとまって動こうとすることを、集団主義と呼ぶならば、集団主義は、互いに心理的に近接しひとまとまりになることを指向する点、ウェットな行動
様式と言える。
一方、各個人に、他者へと近接しようとする考えがあまり働かないと、個人同士は、互いに近づき合って集まることなく、互いにバラバラに離れたままでいよう
とする。互いに一人ずつ個別にバラバラに動こうとする。したがって、集団・団体は、目的がない限り自然には発生しない。いったんできた集団を割ることも平
気である。個々人は、周囲からの引力を気にせずに、単独(ひとり)で自由に動き回る(自分自身の動きや進行方向を決定する)ことができ、周囲の他者とは別
の道を突き進むことができる。その点で、自分個人の動きや利益を優先することが可能である。集団外に抜け出そうとするときに、周囲の他者から、それを引き
止めようとする引力が働かないので、簡単に脱退できる。このように、互いに一人ずつ単独・個別にバラバラに存在しようとしたり動こうとすることを、個人主
義と呼ぶならば、個人主義は、互いに離れて、心理的に近接することを指向しない点、ドライな行動様式と言える。
○A1.2 密集指向(ウェット)-広域分散指向(ドライ)
| A1.2 |
ドライ=広域分散指向 |
ウェット=密集指向 |
| 定義 |
互いに広い領域に散らばる |
互いに狭い領域に密集する |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
広い空間に分散していようとする |
狭い空間に密集していようとする |
| 2 |
一人ずつ個室にいるのを好む |
多人数で大部屋にいるのを好む |
| 3 |
ものの見方が客観的である |
客観的でない |
| 4 |
ものごとを見る視野が広い |
ものごとを見る視野が狭い |
[説明]
各個人に、他者へと心理的に近接しようとする考えが働いている状態では、各人は互いに近づき、くっつき合うことで、相手との距離がなくなる方向に進む。相 互に隔てのない方向へと近接することで、互いに(大部屋のように)隔てのない、狭い空間に、互いにひとまとまりになって密集するようになる。この場合、互 いに狭い範囲内でものごとを見ることになり、視野が狭くなる。あるいは、互いの間に十分な距離をとって眺めることができないため、客観性に欠けることにな る。互いにより高い密度でまとまることを指向するため、権限などがどんどん皆が集まる中央に集中し(中央集権)、周辺に広がって行こうとしない。このよう に互いの距離を小さくする指向は、密集指向という言葉でまとめることができ、ウェットな行動様式と言える。
一方、各個人が他者へと心理的に近づこうとする度合いが小さい場合、互いに近づき合ってまとまり合うことが少ない分、より低い密度で広い空間内に、互いに
分散して(距離を大きく取って、離れて)存在する。仮に分布可能な領域が狭い場合、人々は、個室にいること、すなわち、壁やドアによって、他者のいる空間
から隔離される(他者のいる場所からの距離を大きく取る)ことを指向する。広い領域に分散しているため、一度に広い範囲のものごとを見ることができ、視野
が広い。互いの間に十分な距離をとって眺めることができるため、ものの見方に客観性がある。互いにより低い密度で周辺に広がっていくことを指向するため、
権限などがどんどん地方に分散していく(地方分権)。このように、互いに距離を大きくとって、分散して分布することへの指向は、広域分散指向という言葉で
まとめることができ、ドライな行動様式と言える。
○A1.3 画一(同質)指向(ウェット)-多様性の尊重(異質指向)(ドライ)
| A1.3 |
ドライ=多様性の尊重(異質指向) |
ウェット=画一(同質)指向 |
| 定義 |
互いの多様性を重んじる |
互いを画一的な枠にはめようとする |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
横並びであろうとしない |
周囲の他人と横並びであろうとする |
| 2 |
自分とは異なる意見を持つ人に対して寛容である |
自分とは異なる意見を持つ人に対して寛容でない |
| 3 |
人々の多様性を認める |
人々を画一的な枠にはめようとする |
[説明]
各個人に、他者へと心理的に近づこうとする考えが働いている場合、心理的に近接しようとすることで、互いに心理的に同じところ(位置・場所)に集中しているようにしようとする。互いに存在する位置を同じ(共通)にしようとする。物理的・心理的に互いに同一の位置を集中して占めようとすることで、互いに画一
的な状態で横並びすることになる。存在位置が画一化した状態でひとまとまりになるため、そこから一人別の位置に行こうとする(存在位置の点で個性的あろうとする)ことをしない(没個性的である)。また、画一的な自分たちの中で個性的になろう(自分たちとは別の位置を占めようとする)個人の存在を、認めよう
とせず、自分たちのいる位置へ引っ張り込もうとする(異なる意見の持ち主に対して寛容でない)。このように、互いに心理的に同一の存在位置にいることを指
向することは、画一(同質)指向という言葉でまとめることができ、ウェットな行動様式と言える。皆が同じ心理的存在位置を取ることは、その位置に皆が密集
することであり、その点、密集指向とも関係がある。
一方、各個人が他者へと心理的に近接しようとする度合いが小さい場合、人々は相互に引き付け、まとまり合う度合いが少なく、存在する位置が、互いにバラバ
ラに離れている(多様である)のを許容する。空間内での分布のはずれ値が多い(分布の幅が大きい)。互いに相手とは異なる独自の位置に存在する、という思
いから、自分とは異なる意見の持ち主の存在に対して寛容である。このように心理的にバラバラ・多様な位置を占めることを指向することは、多様性の尊重ない
し異質指向という言葉でまとめることができ、ドライな行動様式と言える。各自が互いに離れた別々の心理的存在位置にいようとすることは、各自の居場所が心
理的に広く分散していると言え、広域分散指向とも関係がある。
○A1.4 同調指向(ウェット)-反同調指向(ドライ)
| A1.4 |
ドライ=反同調指向 |
ウェット=同調指向 |
| 定義 |
取る行動を互いに合わせようとしない |
取る行動を互いに合わせようとする |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
周囲の皆と違ったことをしようとする |
周囲の皆と同じことをしようとする |
| 2 |
他人の真似をするのを好まない |
他人の真似をするのを好む |
| 3 |
個性的であろうとする |
没個性的であろうとする |
[説明]
自分の行動や進行方向を周囲の他者に合わせよう(互いに同じにしよう)とすること(同調への指向)は、周囲の他者と心理的な位置を同じくしようとして、近づき合うことを意味する。同じ心理的位置を共有する仲間の数がより多く集まることで、その心理的位置における人口密度が高まる。それは、個人間に心理的引力が働いて、その結果、同一の心理的位置に各人が密集したことを指す。周囲の他者と同じことをしようとする(周囲の他者の真似をする)ことは、心理的に互
いに同質化して近づこうとする(同一の位置を占めようとする)ことを意味する。意見の同じ者だけでまとまろうとするのも、相互の心理的同質性を確保して、
心理的に同じ位置を持つことで、互いに一体・融合化しようとする姿勢の現れである。一人だけ孤立するのを避けて没個性的であろうとするのも同じ行動様式で
ある。こうした指向の持ち主は、だれかと一緒にいないと不安で仕方がない。孤独に耐えられない。これらの行動様式は、いずれも、心理面引力を働かせて、互
いにひとまとまりになって心理的に同じところにいようとする動機を含んでいる。このように、周囲の他者と行動を同調させることへの指向、すなわち同調指向
は、周囲の他者と互いに心理的に同一の位置を保持することにつながり、ウェットな行動様式と言える。
各自が他者へと心理的に近接しようとする度合いが小さい環境下では、個人は、心理面で、互いにひとまとまりになろうとする引力から自由になって、互いに別
々の(違った)、独自の(個性的な)位置を確保することが可能である。周囲の他者と心理的位置を共有する方向への引力が働かないので、行動を周囲の他者に
合わせようとすることがない(周囲の皆と違ったことをする、他人の真似をしない。周囲からの孤立を恐れない。)このように、周囲の他者に行動を同調させな
いことへの指向(反同調指向)は、周囲の他者と心理的な近接を行おうとしない点、ドライな行動様式と言える。
○A1.5 主流指向(権威主義)(ウェット)-非主流指向(反権威主義)(ドライ)
[例]
| A1.5 |
ドライ=非主流指向(反権威主義) |
ウェット=主流指向(権威主義) |
| 定義 |
自分の取る意見について主流でなくて構わないとする |
自分の取る意見について(すでに認められた)主流派の後を付いて行こうとする |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
少数派に属するので構わないとする |
主流派の一員でいようとする |
| 2 |
権威あるとされる者の言うことを信じにくい |
権威あるとされる者の言うことを信じやすい |
| 3 |
ブランドにこだわらない |
物を購入するときブランドにこだわる |
[説明]
主流とは、相対的により多数の人々が既に集まっている方の集団のことである。そうした主流を指向するのは、皆が既に大勢集まっているところ(メジャーなと
ころ)に自分も行ってその仲間に加わろうとすることを意味する。そうした、既に人数がたくさんいる多数派・主流派と一緒になろうとする主流、メジャー指向
は、心理的には、既に人々が沢山密集している位置と、自分のいる位置を合わせよう、同じにしようとすることになり、より大勢と互いに近接し、くっつこうと
する点、ウェットな行動と言える。
権威ある者(例えば、有名大学医学部の教授や、高級ブランド品のデザイナー)は、その周囲に既に心理的追従者が沢山集まっており、その存在を既に揺るぎな
いものとした多数派(主流派)の中での中心人物として位置づけられる。そういう意味で、権威ある者のいる辺りは、最も心理的な人口密度が高い。権威を信じ
ることは、心理的な高人口密度の中に参加できることを約束するものであり、権威あるとされる者のいうことを信じたり、後追いをしやすいこと(権威ある商品
ブランドに対する信仰など)は、心理的距離空間内において沢山人が集まっている人口密度の高いところに自分も行きたい、密集したいと考えやすいことを指し、互いに集まり合うという、心理
的引力を行使することにつながる点、主流指向の一形態であり、ウェットな行動様式と言える。
主流を指向しない(非主流であろう、マイナー指向であろうとする)のは、少数派で構わないという行動様式である。人があまり集まっていない、閑散とした方
に行こうとすることである。閑散としたところは、人口密度の低い、人々があまりおらず、互いに離れているところを指し、そうしたところに行くことを指向す
る、非主流、マイナー指向の行動様式は、ドライな行動様式であると言える。
権威を信じないことは、権威に引き寄せられた多数派(主流派)の人々の中に進んで入ろうとしないことであり、あえて主流に入らない、集まろうとしないで、
独自の道を歩もうとする行動様式である。心理的距離空間内において、他者が密集しているところ(権威ある者や彼らが作った商品のあるところ)に集まろうと
しない、距離を取ろうとする行動であり、その点、非主流指向の一形態であると言える。これは、ドライな行動様式である。
(追記)
なお、身分との関係については、上流階級が、その社会の中でより主流の重要な位置を占めており、一方下層階級は、マイナーな、目立たない非主流の地位に追
いやられている。
上流階級を指向する(例えば、上流階級の文化を自分も真似ようとする高級指向の)行動は、社会的主流派に属しようとする、すなわち、皆が憧れ行きたがる、
集まりたがる社会的位置に自分も行こうとする行動であり、その点ウェットであると言える。
また、身分の上下にうるさくこだわり区別する態度は、自分が社会的に偉い=権威がある、主流であるかどうかにこだわることであり、主流派の価値観に染まっ
ていることを示す。その点、主流指向であり、ウェットであると言える。
こうした身分の上下を区別することへの指向の強さと、当人が実際に属している身分の高さとは、必ずしも一致しないと見られる。例えば、日本において、「お
上」=官公庁の権威に対して恭順する態度を取る下層階級の庶民は、「お上」=「官」という組織が持つ、主流の価値を無批判に受け入れ、それに合わせようと
している点、例え、その所属が非主流であっても、主流指向であり、ウェットである。
◎A2.他者との関係・縁故の構築(ウェット) -非構築(ドライ)
他者との間に関係・縁故を積極的に築こうとするかどうかについての次元が存在する。互いに心理的引力によって他者を指向する者同士が、互いに指向し合った
他者と新たに心理的に結合・接続した状態をそのまま維持することで、縁故を作り出す。
○A2.1 関係・接続指向(ウェット)-非関係・切断指向(ドライ)
| A2.1 |
ドライ=非関係・切断指向 |
ウェット=関係・接続指向 |
| 定義 |
他者との間であまり人間関係を持とうとしない(関係を切ろうとする) |
他者との間に積極的に人間関係を持とう、つながろうとする |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
他人との触れ合いを好まない |
他人との触れ合いを好む |
| 2 |
周囲の他者に良い印象を与えようとは特に気にしない |
周囲の他者に良い印象を与えようといつも気にする |
| 3 |
人付き合いのあり方がよそよそしい |
人付き合いのあり方が親密である |
| 4 |
自分の内面を他者に開示したがらない |
自分の内面を他者に開示したがる |
[説明]
各個人に、他者へと心理的に近接しようとする考えが働いている状態では、個人は互いに自分が他者を引力によって自分のもとへと引き寄せる、あるいは他者に
近づくことで、互いに他者を指向することになる。すなわち、他者と互いに引き付け合い、近づき合う関係に入ることを重視
するようになる(人間関係そのものを重視する)。相互に引き付け合うことで、互いに他者と十分な近さまで近づきあうことで、触れ合うようになることを好
み、その結果、相互の関係は親密なものとなる。互いに近い距離にいる、同じ位置を共有するようになり、心理的な面からは互いに共感し合う状態になる。自分
と他者とが、互いに引き付け合って心理的・物理的に一体化することを望みやすくなる(愛という言葉を使うのを好む)。互いに心理的に近い存在になろうとす
るために、周囲の他者に気に入られようとしたり、よい印象を与えようと気にしたりする。あるいは、自分の内面を他者に対して積極的に開示して、互いに相手
と関心を共有しようとする(ことで心理的に同じ位置を占めよう、心理的に近づこうとする)。このように相手との関係を積極的に築こう(結合、接続しよう、
つながろう)とすることは、関係指向ないし接続指向という言葉でまとめることができ、ウェットな行動様式と言える。関係指向は、他の人間を直接の指向対象
とすることから、人間指向ということもできる。
各個人が、周囲の他者と心理的に近づこうとしない状態では、互いを引力によって引き寄せ、近づき合う、互いに他者(人間)を指向するという契機に欠ける。
その点で、人間関係を何かの手段としてしかみない。相互に引き付け合って近づくことがないため、他人との触れ合いを好まず、人付き合いのあり方がよそよそ
しい。互いに心理的にバラバラな位置にいるので、互いに共感し合うことが少ないし、相互間の配慮も少ない(足りない)。互いに相手と関心を共有しようとい
うことがないため、自分の内面を相手に開示したがらないし、相手にあえて気に入られようとすることもない。自分たち人間とはかけ離れた、無機物を指向す
る。このように、互いに心理的に離れたままでいようとして、他者との関係を築くことを指向しない(ないし、相手との関係を切る、断つことを指向する)の
は、非関係指向ないし切断指向という言葉でまとめることができ、ドライな行動様式と言える。
○A2.2 縁故指向(ウェット)-非縁故指向(ドライ)
| A2.2 |
ドライ=非縁故指向 |
ウェット=縁故指向 |
| 定義 |
他者との関係を持つ上で既存の縁故の有無を問わない |
既に結び付き(縁故)のある他者との関係を優先する |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
縁故(コネ)を重んじない |
人付き合いで縁故(コネ)を重んじる |
| 2 |
親分子分関係を好まない |
人付き合いで親分子分関係を好む |
[説明]
個人同士が互いに心理的な引力によって、くっつき合う(心理的に一体化し合う)状態になるのを繰り返すことによって、人と人との間の結合
connection自体に慣れが生じる(結びついた状態が日常化し、癒着が生じる)。人間同士が互いに慣れた結びつきを持って、互いに引力を及ぼしてい
る状態が「縁故がある」ことになる、と考えられる。相互に心理的に近づくおかげで人間同士が強い紐帯、癒着を持つに至ることが可能となる。相互間の引力に
よって互いに結びついていることが当然となった人間同士の関係は、血縁関係で結ばれた家族同様のレベルまで深まることもしばしばであり、そのときには、家
族的な雰囲気を現すようになる、と考えられる(実の親子と擬制する親分子分関係など)。このように相互間の強い結合が日常化・長期化することを指向するの
は、縁故指向という言葉でまとめることができ、ウェットな行動様式と言える。
各自の持つ、他者にくっつこうとする引力が小さいと、他者との結合connectionが生まれにくく、縁故ができにくい。人間同士の紐帯、癒着が弱い。
あるいは、人付き合いのレベルが浅く、家族的でない。相互間の結合が生じにくい状態を指向するのは、非縁故指向という言葉でまとめることができ、ドライな
行動様式と言える。
◎A3.行動決定の自由(ドライ)-不自由(ウェット)
自分の思った方向に自由に行くことができるかどうかについての次元が存在する。互いの間に心理的に近接しようとする引力が働いていると、その引力がしがら
みとなって、人々は心理的に自由に動けなくなる。
○A3.1 規制主義(ウェット)-自由主義(ドライ)
| A3.1 |
ドライ=自由主義 |
ウェット=規制主義 |
| 定義 |
互いに自由に行動しよう(動き回ろう)とする |
互いに行動を規制し合う |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
行動の自由を規制されることを好まない |
行動の自由を規制されることを好む |
| 2 |
互いに自由に行動することを許す |
互いに相手の行動を牽制し合う(足を引っ張り合う) |
| 3 |
互いに束縛しあうのを好まない |
互いに束縛しあうのを好む |
| 4 |
抜け駆けを許す |
集団内で一人だけの抜け駆けを許さない |
| 5 |
失敗を犯した本人のみの責任とする |
一人の犯した失敗でも周囲の仲間との連帯責任とする |
[説明]
各個人が他者に対して心理的に近づこうとして働かせる引力が大きいと、その引力がしがらみとなって、各人は、自分の当初進みたいと思う方向へ向かって、自
由に動き回ることができなくなる。心理的引力は、個人同士の互いの動きを、互いに近づき合って、牽制・束縛・拘束し合う(足を引っ張り合う)方向に向かわせる。こうした相互の動きを縛り合う人間同士の引力が働いた状態が、「規制」がある状態である。人間関係において、互いの間に引力が働いていると、それが
人間同士の自由な行動を抑え込む力となって(しがらみとなって)、身動きが取れなくなる。
個人同士の間に引力が働いている状態では、一人が周囲から外れた行動を起こそうとすると、周囲の他者からの、相手が一人離れて行くことを許さない、一緒に
くっついたままでいようとする引力によって、その行動を規制される。これが、足の引っ張り合いや、しがらみがある、行動の自由がない、と行動を起こした本
人に感じられるもととなる。
心理的引力の存在する状態で、一人が行動を起こすと、引力が働いているため、周囲の他者がついでに引っ張られてしまうなど影響が広く及ぶため、行動を起こ
した結果(例えば失敗)についての責任は、行動を起こした本人一人のみに限定されず、周囲の皆の連帯責任と見なすことになる。こうした状況では、個人が単独で自由行動を完遂するのは不可能である。そのため、周囲の他者が同意しない限り行動を起こさない、といった方策が取られることになる。
心理的引力がある集団内では、一人だけの抜け駆けができなくなる。一人が抜け駆けしようとすると、引力が、抜け駆けしようとする本人と周囲の他者との間に
働いて、周囲の幾人かもそれにつられて動いてしまったり、周囲の他者が抜け駆けしようとする本人に対して、自分たちの中に引き戻そうとする力を働かせよう
とするためである。一人だけで動こうとしても、周囲の他者との間に働く、複数の互いの近さを維持しようとする心理的引力がしがらみとなって、自由に動けな
い。
このように互いの動きを規制し合う状態を指向することは、規制主義という言葉でまとめることができ、ウェットな行動様式と言える。
一方、個人が他者に対して働かせる心理的引力が小さいと、個人同士は、互いに近づき合って、束縛・牽制し合うことがあまりない(人間関係のしがらみがな
く、自由に身動きできる)。自分がある方向に動こうとしたときに、互いに引力で相手の足を引っ張り合うことなく、だれにも規制されずに自由に動き回ること
ができる。一人一人が、互いに周囲の状況から独立して(抜け駆けしてなど)、自由に自分の行きたい方向へと、常に進むことができる(互いに自由に行動する
ことを許す)。行動を起こした結果に対する責任は、行動した本人にのみ限定することが可能である。このように互いに自由に動き回れる状態を指向すること
は、自由主義という言葉でまとめることができ、ドライな行動様式と言える。
◎A4.行動の自己決定(ドライ) -非決定(ウェット)
自分の行動の決定が自分だけでできるかどうか(他者の意向に沿う必要があるかどうか)についての次元が存在する。心理的な引力が働いていると、互いに自分
の行動が自分一人では決められず、周囲の他者の動向次第になってくる。
○A4.1 相互依存指向(ウェット)-独立・自立指向(ドライ)
| A4.1 |
ドライ=独立・自立指向 |
ウェット=相互依存指向 |
| 定義 |
互いに独立・自立して行動する |
互いに依存し合う(もたれ合う) |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
互いに自立しているのを好む |
人付き合いで互いにもたれあうのを好む |
| 2 |
独立心が強い |
依頼心が強い |
| 3 |
甘えを嫌う |
互いに甘えあおうとする |
| 4 |
派閥を作るのを嫌う |
派閥を作りたがる |
[説明]
各個人が周囲の他者に対して心理的に近づこうとしている状態では、互いに引き付け、くっつき合うことで、互いに相手に寄りかかりあう、すなわち、相互にもたれ合う関係になる。心理的引力が強いと、自分の行動が相互に相手の行動次第で決まるようになる。自分の行動が相手の動きに依存する。自分のあり方を決めるのに、相手へ心理的に寄りかかる度合いが増える。相互に寄りかかりあうことで、互いに相手の状態に依存し合うことになる。互いに、相手に寄りすがろうと することになり、その点依頼心(甘え)が強くなる。言い換えれば、心理的引力が強いと、自分の行動が相互に相手の行動次第で決まるようになる。その点、自 分の行動が相手の動きに依存する。すなわち、行動が相互依存的になる。また、自分のあり方を決める相手へと心理的に寄り掛かる度合いが増えて、依頼心が強 くなることになる。これは、各自が互いに依存し合う状態で、ひとまとまりになり(=派閥を作り)、外部に対して、一つにまとまった自分たちの勢力をアピー ルしようとすることにもつながる。このような相互にもたれ合う関係への指向は、相互依存指向という言葉でまとめることができ、心理的引力に基づく指向であ ることから、ウェットな行動様式と言える。
一方、各個人が周囲の他者に対して心理的に近づこう、心理的引力を行使しようとしない場合、個人が自分の動きを決定するのに、周囲の他者の動きの影響を受
けることが少なくなり、自分のことは自分で決定して行動できる(周囲の他者に行動を依存しないで済む。周囲の他者に自分の行動を決定される度合いが少な
い)。その点、周囲の他者からは独立・自立している。互いに寄りかかり合うことがなく、依頼心(甘え)は少ない。こうした独立・自立ヘの指向は、心理的引
力が弱く、互いに無関係に動き回る場合に顕著となることから、ドライな行動様式と言える。
○A4.2 他律指向(ウェット)-自律指向(ドライ)
| A4.2 |
ドライ=自律指向 |
ウェット=他律指向 |
| 定義 |
自分で自分の意思を決められる |
自分の意思を自分だけでは決められず、周囲に決定を任せる |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
自分の意見を持っている |
周囲の意見に左右されやすい |
| 2 |
周囲の流行に振り回されない(左右されない) |
周囲の流行に振り回される |
| 3 |
自分の今後の進路を自分一人で決められる |
決められない(周囲の影響を受ける) |
[説明]
他者と互いに心理的に近接しようとする引力の只中にいる個人は、自分の行動や進行方向を、周囲の他者によって決定されることを指向する(ないし、せざるを
得ない)。引力の働いている状態では、各人が周囲の他者からの相手を自分から離れようとさせない引力の影響(牽制など)を受けて、自分の動く方向を好む好
まざるとにかかわらず変える必要に迫られる(自主性が保てない)。自分の進路は、自分の周囲に存在する他者由来の引力との兼ね合いで決まり、自分一人だけ
で決めることはできない。その意味で、周囲の他者による影響が大きい。すなわち、自分の動きが単独独立で決まらず、周囲との文脈によって決定される「文脈
依存的」な行動を取ることになる。
周囲の流行に振り回されるということは、周囲から発せられる心理的な引力(友人による「私は既に○○したわ。あなたも○○しない?(そうすることで私と一
緒にならない?)」といった勧誘)に引かれるままに動くことである。引力は、その中にいる個人に対して、起こす行動における主体性の欠如した、周囲の意見
に左右されやすい(自分の意見を持っていない)状態を引き起こす。このように、周囲の他者からの引力に自分の行動や進行方向を任せた(預けた)状態になる
のを指向することは、他律指向と言う言葉でまとめることができ、ウェットな行動様式と言える。
一方、他者との間における心理的近接の度合いが小さい場合、各人は、自分の行動や進行方向を、周囲の他者からの引力に影響されず、自分一人で決定すること
ができる(自主性を保てる)。自分の動く方向を、周囲の他者の動きに合わせて変える必要がない。周囲の動向(流行など)に振り回されず、自分の意見を持ち
続けることが可能である。自分の行動・進行方向を周囲の他者からの引力に影響されずに一人で決めることができる状態を指向することは、自律指向という言葉
でまとめることができ、ドライな行動様式と言える。
◎A5.プライバシーの確保(ドライ) -不確保(ウェット)
自分の私事を秘密にすることができるかどうかについての次元が存在する。他者に対して心理的近接を試みることは、その分他者および自己のプライベートな領
域を侵害する可能性を絶えずはらんでいる(他者に近づく分、自分の状態が他者に丸見えになる)。また、相手との距離を近く保とうとする心理的引力の働いて
いる状態では、互いに他者に対して何らかの行動を起こすことで、反作用として、他者から、他者自身が何を考えていたかフィードバックを得ることができ、互
いのプライバシーは侵害される。
○A5.1 反プライバシー(ウェット)-プライバシー尊重(ドライ)
| A5.1 |
ドライ=プライバシー尊重 |
ウェット=反プライバシー |
| 定義 |
互いのプライバシーを重んじる |
互いのプライバシーを重んじない |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
他人のプライバシーには干渉しない |
他人のプライバシーに介入したがる |
| 2 |
互いに監視しあうのを好まない |
互いに監視しあうのを好む |
| 3 |
他人のうわさ話をするのを好まない |
他人のうわさ話をするのを好む |
| 4 |
当局への密告を好まない |
当局への密告を好む |
| 5 |
自分が他人にどう見られるかを気にしない |
自分が他人にどう見られるかを気にする |
| 6 |
化粧をするのを好まない |
化粧をするのを好む |
[説明]
他者と心理的に近づくことによって、頻繁にくっつき合い、接触し合うことは、互いのプライベートな空間への絶え間ない侵入を引き起こすことにつながり、他
者(ないし自己)のプライバシーへの干渉(私事への介入)に結びつく。他人のうわさ話をするのを好む、ないし当局に他人の動向を密告しようとすることは、
自分が(話や密告の種となる)他者のことを監視し、他者のプライバシーに介入するのを好むことを示す。
自分が他人にどう見られるかを気にするのは、周囲の他者からのまなざしによる牽制・監視を通じて、互いに何をしているか、互いに自分から離れて何か変なことを起こしはしないかを気にする、互いのプライベートな領域に侵入し合う(プライバシーに介入し合う)引力の存在を感じるからである。化粧をしたり、容
姿、服飾に気をつかうのは、そうした他者による、自分のことをを牽制する視線の存在を予め意識して、自分の外観(顔や服装)を他者に効果的に映るように
(他者を逆に牽制する形で)コントロールすることである。こうした化粧、服飾行動は、他者の視線を一身に集めることで、他者を心理的に自分の身の回りに近づけ、積極的にプライバシーを放棄することにつながる。見栄を張るのも、他者に自分がよく見えるように、自分の見た目をつくろうことであり、他者の視線に
よる牽制を前提とした行動である。
こうした相互監視・相互牽制によるプライバシーへの干渉が起きやすいことは、互いの間に心理的引力が働いていることと相関関係にあり、ウェットな行動様式
であると言える。
一方、他者に心理的に近づく度合いが小さいと、互いにくっつき合う(接触し合う)ことがないため、互いのプライベートな空間へと侵入を引き起こすことがな
くなり、プライバシーが尊重された状態が保たれる。この状態では、互いに視線の送り合いやうわさ話、密告などで、相手を監視・牽制し合う、といったことが
なくなる。こうした状態を好むのは、心理的引力を働かせようとしない点、ドライな行動様式であると言える。
◎A6.行動の明快さや合理性の確保(ドライ) -不確保(ウェット)
自分の行動に明快さや合理性を保つことができるかどうかについての次元が存在する。個人が、当初単独で明快・合理的に行動しようと思っても、周囲から引力
という名の横やりが入ったり、周囲の人々の動向が気になると、行動はいつのまにかあいまいで非合理的なものになってしまう。
○A6.1 あいまい指向(ウェット)-反あいまい(明快)指向(ドライ)
| A6.1 |
ドライ=反あいまい(明快)指向 |
ウェット=あいまい指向 |
| 定義 |
自分の取る意見が率直・明快である |
自分の取る意見がが率直・明快でない |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
物の言い方が率直である |
遠回し・婉曲である |
| 2 |
物事の白黒をはっきりさせようとする |
あいまいなままにとどめようとする |
| 3 |
自分の今後の進路をはっきりさせようとする |
あいまいなままにとどめようとする |
○A6.2 非合理指向(ウェット)-合理指向(ドライ)
| A.6.2 |
ドライ=合理指向 |
ウェット=非合理指向 |
| 定義 |
物事に対して心情的に割り切って、合理的に行動する |
物事に対して心情的に割り切ることができず、合理的でない |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
考え方が合理的である |
非合理的である |
| 2 |
考え方が科学的である |
非科学的である |
| 3 |
宗教を信じない |
宗教を信じる |
[説明]
ある個人が特定の方向に進もうとしたとき、自分の周囲の多方面から引力を受けると、その影響で、進行方向があいまいとなる。すなわち、心理的引力が働く対
人関係においては、当初明確な意図を持って動こうとしたとしても、周囲の他者からの引力による介入・調整の繰り返しにより、いつしか進行方向があいまい、
不明瞭(玉虫色)となる。物の言い方も、率直さに欠けた遠回し・婉曲なものになる。
また、他者との相互間に引力が働く環境下では、周囲の他者からの、相互の近さを保とうとする引力による介入を断ち切れず、割り切った行動を取れないため、
自分のいったん決めた方向に向かってまっすぐ進むことができず、合理的な論理や計画が、曲げられてしまう。進む方向が、その場の周囲からの引力の働く方向
(雰囲気)に絶えず影響されて、一時の感情にまかせて、気まぐれにアトランダムに変わってしまうため、自分で論理的な方針を組み立てることができず、合理
的な方向へと進んでいくことができない。
このように、人が周囲に対してあいまい・非合理的な行動様式を取ることは、心理的引力がもたらすところのウェットさに基づく。
他者との間に働く心理的引力が少ない状態では、個人の動き(今後の進路を含めて)が、周囲の他者からの引力による干渉を受けて曲がることがないので、まっ
すぐ(率直)・はっきり(明快)な状態を続けることが容易である。当初明確な意図を持って動こうとしたとき、周囲の他者からの心理的引力による介入・調整
がないので、進行方向がはっきりした、明確な状態を続けることができる(あいまいさが生じない)。物を言うに当たって、的に向かってずばり直球を投げ込む
ように、率直さを保てる。
また、他者との間に心理的引力が働かない状態では、周囲の他者からの引力による介入から自由になることができ、割り切った行動を取れるため、自分のいった
ん決めた方向に向かってまっすぐ進むことができ、合理的な論理や計画が、曲げられることなく貫徹可能である。進む方向が、引力に影響されることがないた
め、自分で論理的な方針を組み立てることが可能であり、合理的な方向へと進んでいくことができる。
このように、人が周囲に対して明確な、あいまいでない、合理的・論理的な行動様式を取ることは、心理的引力から自由なドライさに基づく。
◎A7.集団の開放性の確保(ドライ) -不確保(ウェット)
集団の表面を閉じようとする力(表面張力)が働いているかどうかについての次元が存在する。集団内部に互いに引き付け合ってまとまろうとする力(集団凝集
性)が強ければ、集団は外部に対して門戸を閉ざすこととなる。
○A7.1 閉鎖指向(ウェット)-開放指向(ドライ)
| A7.1 |
ドライ=開放指向 |
ウェット=閉鎖指向 |
| 定義 |
開放的な集団にいるのを好む |
閉鎖的な集団にいるのを好む |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
開放的な人間関係を好む |
閉鎖的な人間関係を好む |
| 2 |
身内・外の区別にこだわらない |
人付き合いで身内・外の区別にこだわる |
| 3 |
集団外のことにも関心を持つ |
自分の属する集団内のことにしか関心がない |
| 4 |
仲間内以外の人も受け入れる |
付き合いで仲間内以外の人を排除する |
[説明]
各個人が他者に近づこうとする心理的引力がある状態では、各人の間に、互いに距離を縮める方向へとスクラムを組み、自分の属する集団の表面積を互いに手を
取り合ってできるだけ小さくしようする力が対人関係において働いており、他者は形成済の集団の表面から中に入ることができない。こうした力は、1)外部の者を中に入れようとしない、2)集団内の仲間が表面から外に出ようとすると中に引きずり込もうとするものであり、物理的液体における「表面張力」に相当する。こうした状態では、人々は閉鎖的な対人関係を好み、自分が属する集団・仲間内の相手としか付き合おうとしない(自分の属する集団内のことにしか関心が
ない)。こうした表面張力のような力が働いている閉鎖指向は、心理的引力に基づくウェットな行動様式であると言える。
他者に近づこうとする心理的引力がない状態では、集団の表面部分~内部の各人が互いに手を取り合って結託し、よそ者を入れようとしない表面張力のようなも
のは、対人関係において存在せず、形成済の集団の表面から中に入ることが容易に可能である(外部の者に対して中が開放されている。集団内の仲間が表面から外に出るのも自由である)。開放的な対人関係を好み、自分が属する集団・仲間外の相手とも付き合おうとする(自分の属する集団外のことにも関心を持つ)。
こうした表面張力が存在しない開放指向は、心理的引力とは無縁のドライな行動様式であると言える。
●B.心理的運動・活動・移動・流動指向(ドライ)-静止・非活動・定着・定住指向(ウェット)
あちこち活発に動き回ろう、移動しようとする指向の強さに関する。
◎B1.動的エネルギー・移動性の確保(ドライ) -不確保(ウェット)
心理的な運動エネルギーが大きいかどうかについての次元が存在する。自分から進んで積極的に動き回ろう、拡散しようとする心理的な運動エネルギーが大きい
と、他者からの心理的な引っ張りや牽制から自由になれる。
○B1.1 静的指向(ウェット)-動的指向(ドライ)
| B1.1 |
ドライ=動的指向 |
ウェット=静的指向 |
| 定義 |
よく動き回ろうとする |
動き回ろうとしない |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
動作がすばやい |
動作がゆっくりである |
| 2 |
物事の決定のテンポが速い |
テンポがゆっくりである |
| 3 |
行動が積極的である |
行動が消極的である |
[説明]
もしも、各人の自分から進んで自発的に積極的に動き回ろうとする活動性(運動エネルギー)が、相対的に小さい(速度がゆっくりである)と、当人はその場に
静止してとどまることになり、人と人との間の心理的引力を振り切って動き回ることができにくい。運動エネルギーが小さくて、対人間に働く心理的引力に囚わ
れがちな静的状態への指向(静的指向)は、ウェットな行動様式と言える。
一方、各人の、自分から進んで自発的に積極的に動き回ろうとする、活動性(運動エネルギー)が、(気体分子同様)相対的に大きい(速い)と、当人はその場
に静止することなく動き回ることになり、個人間の心理的引力を振り切るだけの運動エネルギーにあふれている。このように、運動エネルギーが大きくて、対人
間に働く心理的引力に囚われない動的状態への指向は、動的指向という言葉でまとめられ、ドライな行動様式と言える。
○B1.2 定着指向(ウェット)-非定着(移動・拡散)指向(ドライ)
| B1.2 |
ドライ=非定着(移動・拡散)指向 |
ウェット=定着指向 |
| 定義 |
今いる土地や組織に定着せず絶えず移動しようとする |
今いる土地や組織に定着しようとする |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
絶えず移動する(遊牧)生活を好む |
一カ所に定住する(農耕)生活を好む |
| 2 |
人事が流動的なのを好む |
人事が停滞しているのを好む |
| 3 |
短期的契約関係を好む |
長期にわたる取引関係を作るのを好む |
| 4 |
常に新分野へと拡散しようとする |
いつまでも今までいた分野にとどまろうとする |
[説明]
自分から進んで動こうとする運動エネルギーに欠けていて、かつ、心理的引力の只中で、自分がある方向に移動しようとすると必ずそれに対する引き戻しの力が
かかる状態では、個人は、いつまでも既存の、今まで、自分がその場所に存在したり、その中に所属していた、集団などの対人関係(組織)の中に、外に拡散す
ることができずに、現状維持のままとどまり続ける(定着、定住し続ける)。人間関係が固定的(人事が停滞的)だったり、相手との取引関係が長期にわたるよ
うになる。これは、定着指向という言葉でまとめられる。
自分から進んで動こうとする運動エネルギーに満ちていて、心理的引力が小さい状態では、個人は、自由に、今までいた場所や、所属していた集団を離れて、一
カ所に定着することなく、新しい境地へと絶えず動き回ることが可能である。この状態では、人間関係は、流動的な(短期契約的で、すぐ切れやすい)ものとな
り、短期間で次々所属する組織を変わることになる。これは非定着指向という言葉でまとめられる。
○B1.3 前例指向(ウェット)-独創指向(ドライ)
| B1.3 |
ドライ=独創指向 |
ウェット=前例指向 |
| 定義 |
誰も行ったことのない未知の領域に進もうとする |
自分が今までいた領域にとどまろうとする |
| No. |
[例↓] |
[例↓] |
| 1 |
行動の基準を新規の独創的なアイデアに求める |
行動の基準を既存のしきたり・前例に求める |
| 2 |
前人未踏のことにもあえて挑戦する |
前例があることだけをしようとする |
| 3 |
現状を変革するのを好む |
現状をそのまま追認するのを好む |
[説明]
今までいたところに、いつまでも、居続けようとする(一カ所に定住・定着する)状況下では、個人は、新境地(新分野)への移動・拡散性が欠如しており(冒険しようとしない)、行動の基準を、従来から存在するしきたりや前例に求める。しきたりや前例は、定住先で生活するために従来必要であった知識の蓄積であ り、その有効性に関してチェックを行わないまま(今までと同じ環境下に居続けるのであれば不要である)、無批判にそのまま受け入れることになる(現状の追認を好む)。新天地へ積極的に出ようとする姿勢が欠如しているため、自分のアイデンティティ確立を、既に定評のある、前例に当たる知識や方法との、暗記に よる一体化を行うことで果たす。しきたり・前例に関する知識の暗記量で人間の価値を推し量ろうとする(心の中での前例蓄積量や質によって人間の価値が決ま る)。人間関係を、前例を沢山蓄積している先輩と、蓄積量が少ない後輩との差別によって把握する、年功序列が常識化する。年功序列で上位の人間が、下位の人間を、ただそれだけの理由で支配する、先輩後輩関係を重視しようとする。これは、前例指向という言葉でまとめられる。
今までいたところから絶えず動き回ろうとする状況下では、個人は、新境地(新分野)への移動・拡散性にあふれており(冒険したがる、前人未踏のことに挑戦
したがる)、行動の基準を、従来にない新規の独創的なアイデアに求める。しきたりや前例の暗記よりも、新たな知識の創造や、現状の変革を重んじる。こうし
た行動様式は、独創指向という言葉でまとめられる。
上記のうち、静的・定着・前例指向の行動様式は、ウェットな感覚を与える液体分子群(水など)において、コップなど、ふたのない容器に入れておいても、い
つまでもその中にいて、外に拡散していくことがない(蒸発は、気体分子になることで初めて可能になる)現象と、同様であると考えられ、ウェットな行動様式
と言える。
一方、動的・非定着・独創指向の行動様式は、ドライな感覚を与える気体分子群(空気など)において、いったん容器に閉じ込めておいた状態でふたを取ると、
すぐに外に拡散してそこからいなくなってしまう現象と同様であると考えられ、ドライな行動様式と言える。
上記の今回整理した内容から、性格、行動様式などにおけるドライ・ウェットさの概念が、集団主義・個人主義、自由主義・規制主義、プライバシー尊重
の有無など、これまで個別にバラバラに議論されてきた、社会学、心理学や政治学上の様々な概念をまとめ、関連づける上位概念として、今後より有望視、重要視されるようになることが予想される。
例えば、行動様式や文化の分類について、上位概念としてのドライ・ウェットさを導入することで、従来は別々に捉えられてきた集団主義-個人主義、規制主義-自由主義の概念が互いに「集団主義と規制主義とは、どちらもウェットである」、「個人主義と自由主義とは、どちらもドライである」のようにリンク付けて捉えられるようになる。そして、このことから、例えば、「個人主義と自由主義とは(両方ともドライであり)互いに関連し合って同時に起こる、見られる」、「アメリカのような個人主義の国(人)は、同時に自由主義の国(人)である」ということが言えるようになる。
つまり、今回抽出した、集団主義-個人主義、規制主義-自由主義といった、様々なドライ・ウェットな性格・行動様式は、互いに独立・バラバラに発生するのではなく、ドライに属するもの同士(個人主義、自由主義、プライバシー尊重・・・)、ウェットに属するもの同士(集団主義、規制主義、反プライバシー・・・)、互いに関連し合って同時並行的に発生する、観察されるものであると言える。
抽出した行動様式のドライ・ウェットさについての確認
上記の抽出した行動様式が本当にドライ・ウェットと感じられるかどうかについて、個別の行動様式項目毎に「この行動様式は、ウェット・ドライのどち
らに感じられますか?」と尋ねるweb質問紙調査を1999年5~7月にかけて、1質問項目当たり約200名の回答者という規模で行い、当方の上記の
考え方がほぼ正しいことを確認した。
web質問紙調査(確認用)手順へのリンクです。
web質問紙調査(確認用)結果数値へのリンクです。
まとめ
上記結果から、
(1)ドライな行動様式の人は、対人関係において、運動・活動性が高く、相手へと近接しようとする指向が弱い人である
(2)ウェットな行動様式の人は、対人関係において、運動・活動性が低く、相手へと近接しようとする指向が強い人である
とまとめられる。
分かりやすく言い換えれば、対人関係で、互いに他者とベタベタくっつき合って動かないのが好きな人がウェットで、他者とバラバラに離れて活発に動き回る
のが好きな人がドライということになる。要約すれば、「相互離散・移動=ドライ、相互近接・定着=ウェット」ということになる。
人間が、対人関係の中で他者に与えるドライ・ウェットな感覚は、運動エネルギーの大小や、引力・粘着力(分子間力相当)の強弱という点で、それぞれ気体・液体分子や、乾いた・湿った物体一般が人間にもたらす感覚(ドライ・ウェット)と、本質的に同じ起源を持つ、と考えられる。
(c)1999-2004 大塚いわお
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