ドライ、ウェットなパーソナリティと行動速度、方向との関係について

2008.03 大塚いわお




About Relationship between Dry, Wet Personality and Moving Speed, Direction

Summary 要約

To clarify what point of gas, liquid molecular motion pattern is felt dry, wet as human personality, WWW based question survey was held. 207 subjects observed 4 online computer simulation movies that vary particle’s moving speed (slow, fast) and direction (leave, approach another particle) and answered how much each particle's motion on each movie was felt dry or wet, as human behavior. As the result, subjects felt the motion of particle dry when motion is fast and leaving another particle, wet when motion is slow and approaching another particle, as human behavior.

気体、液体分子運動パターンのどのような点がパーソナリティとしてドライ、ウェットに感じられているかを明らかにするため、webでの調査を行った。粒子の運動速度(低速、高速)、方向(近づく、離れる)を変化させたムービー4種類を研究参加者207名に対して見せて、各ムービーで、粒子の動きが個人の対人行動としてどの程度ドライ、ウェットに感じられるかを評価してもらった。その結果、ムービー上の各粒子を個人に見立てた場合、個人が他者から離れるとドライ、近づくとウェットなパーソナリティと認知されることが分かった。また、個人が高速で動くとドライ、低速で動くとウェットなパーソナリティと認知されることが分かった。

キーワード:パーソナリティ、ドライ、ウェット、速度、方向
Key words: personality, dry, wet, speed, direction





「問題と目的」


最近、人間のパーソナリティのドライ、ウェットさと物理的な気体、液体分子運動パターンとの間に関連があることが明らかにされている。大塚(2008)では、物理的気体が人間にドライな感覚を与え、液体がウェットな感覚を与えることに着目し、気体分子運動のシミュレーションを人間の動きに見立てて観察させた場合、各分子の動きが人間に見立てるとドライなパーソナリティと認知され、一方、液体分子運動における各分子の動きは人間に見立てるとウェットなパーソナリティと認知されることを、アンケート調査によって確認している。すなわち、気体分子運動パターンと同様に振る舞う人のパーソナリティはドライに、液体分子運動パターンと同様に振る舞う人ではウェットに感じられることを確認している。

しかし、そうした気体、液体分子運動パターンのどのような点が人間のパーソナリティとしてドライ、ウェットに感じられているかは、まだ明らかにされていない。

物理学辞典編集委員会(1992)によれば、気体分子は、大きな運動エネルギーを持っているため、各分子が互いに及ぼし合う引力(分子間力)を振り切って自由に飛び回り、容器に閉じ込めておかないと体積がいくらでも膨張してしまう。これに対して、液体分子では、分子の間に相互に引力(分子間力)が働いており、体積を一定に保ちつつ自由に形を変えて運動する、とされている。

あるいは、池内(2002)の作成した気体、液体分子運動シミュレーションでは、気体では、各分子が、高速に、互いに一つ一つ独立して離れて個別にバラバラに自由に飛び回るのに対して、液体では、各分子が互いにくっつき寄せ集まって、一まとまりに集団を作り、低速でゆっくり動く様子が見て取れる。

上記から、気体分子と液体分子とでは、動きの面で少なくとも以下の点が異なると考えられる。

(1)運動速度が違う。分子の運動エネルギーは、気体分子で大きく、液体分子で小さい。運動エネルギーは、分子の質量と速度の積で表され、仮に各分子の質量を条件統一のために一定に揃えた場合、気体分子は高速であり、液体分子は低速である。

(2)運動方向が違う。分子相互の間を引き付け、近づける働きを持つ引力(分子間力)は、気体分子ではほとんど働かない。そのため、気体分子は互いにバラバラに離れて拡散する。その結果、気体は体積が膨張する。
これに対して、液体分子は、相互の間に引力(分子間力)が働くため、互いに近づいて、拡散しない。その結果、液体の体積は一定に止まり、自由に変形するが膨張はしない。まとめると、運動方向では、気体分子は互いに離れる方向に動くのに対して、液体分子は互いに近づく方向に動く。

この気体分子と液体分子の動きの違いが、人間におけるドライ、ウェットなパーソナリティの違いと仮に関連があるとするならば、人間のパーソナリティとしては以下のことが考えられる。

(1)行動速度の面では、気体分子のように高速で行動するのを好む人は、ドライなパーソナリティの持ち主と感じられる。一方、液体分子のように低速で行動するのを好む人は、ウェットなパーソナリティの持ち主と感じられる。

(2)行動方向の面では、気体分子のように互いに離れるのを好む人は、ドライなパーソナリティの持ち主と感じられる。一方、液体分子のように互いに近づくのを好む人は、ウェットなパーソナリティの持ち主と感じられる。
上記の考えを表にまとめると、Table 1のようになる。

この考えが正しければ、人間のドライ、ウェットなパーソナリティは、少なくとも、行動速度(高速-低速)と行動方向(離れる-近づく)の二つの要因によって説明でき、人が高速で動き、互いに離れるとそのパーソナリティがドライに感じられ、低速で動き、互いに近づくとウェットに感じられる可能性がある。

そこで、この考えが正しいかどうかを確認するために、実際に研究参加者に、粒子の速度と運動方向を調節した粒子運動シミュレーションムービーを見せて、粒子の動きを人の動きと見立てた場合それぞれどの程度ドライ、ウェットと感じるか調べることにした。

分析手続きとしては、行動速度(低速-高速)、行動方向(近づく-離れる)、湿度(ウェット-ドライ)の3要因による分散分析を行うことにし、そのための調査データを収集することにした。

行動速度(低速-高速)、行動方向(近づく-離れる)について別々に調査を行うのではなく、調査の条件として組み合わせることにしたのは、行動速度(低速-高速)、行動方向(近づく-離れる)の相互の間の影響、交互作用が存在しないかどうか確認するためである。

実験計画としては、3要因被験者内計画を採用した。被験者内計画を採用したのは、同一の研究参加者内で異なる条件間のデータの差を互いに効果的に比較できるようにするためである。



「方法」

[データ収集方法] インターネットのwebサイトで回答を収集した。回答のカウントに当たっては、同じ研究参加者が複数回回答する可能性に対応するため、回答時に同一のIPアドレスの持ち主は同一の回答者であると見なし、同一のIPアドレスの複数回答は最新の1個の回答のみを有効と見なすとともに、cookieを利用して複数回の回答を受付けないように設定した。

[研究対象者] 回答を得た研究参加者の総数は207名(男性102名、女性105名)であった。性別情報は、回答時に性別選択欄をwebページにラジオボタンで設け、選択入力してもらうことで得た。

[調査時期] 調査時期は、2007年6月16日から6月20日の5日間であった。

[刺激映像] 刺激は、画面上に、 2個の粒子を人間個人に見立てて表示し、灰色の1個は静止したまま動かず、もう1個の黒色の粒子が、他方の灰色の粒子に対して、高速-低速で、近づく-離れる動きをシミュレートするFlashムービー(swf形式ファイル)を作成した。これは、一方(灰色の粒子)を静止させて刺激として目立たず中立なものとすることで、研究参加者が残りの一方(黒色の粒子)の動きに着目点を絞ることができるようにすることを目的としている。

作成したムービーは、行動速度(低速-高速)、行動方向(近づく-離れる)の各条件をかけ合わせた「高速-近づく」「高速-離れる」「低速-近づく」「低速-離れる」の4種類であった。作成したFlashソフトウェアのバージョンはFlash MX 2004であった。

ムービーのーフレームレートは、12fpsであり、粒子の動作速度は、高速の場合は、毎フレーム10pixel、低速の場合は2pixelのいずれも一定とすることで、速度の違いが明確に分かるように調整した。粒子の直径は90pixelとして、目視で十分確認しやすいサイズを確保した。

2粒子間の初期距離は、2つの粒子の中心と中心との間で150pixelであり、動作距離は、近づく場合は、一方の粒子が他方の粒子に接触するまでの60pixel、離れる場合は150pixelとして、近づく動作、離れる動作が目で見て区別しやすい距離に調節した。

ムービーはwebサイト上で研究参加者のパソコンから再生可能とした。各ムービーの初期状態、粒子同士近づいた状態、粒子同士離れた状態の静止画は、Figure 1の通りである。

[質問項目] 上記各ムービーについて「以下のムービーは、人々の行動を簡略表示したものです。一つ一つの粒々の動きが、個人個人の動きを表しています。画面上には黒色と灰色の2人がいますが、そのうち、黒色の人の動きに着目して下さい。ムービーを1回、最初から最後まで再生して、黒色の人の動きが、どれほどドライ、およびウェットに感じられるか、評価して、回答を記入して下さい。」として、ドライ、ウェットそれぞれ別々に回答させた。段階は、「感じない(0)」から「とても感じる(4)」の5段階とした。

[手続き] 1人の研究参加者に対して、4種類の各ムービーを、一度に1個ずつ、順番をランダムにして呈示し、ムービー毎に、画面上の黒色の人の動きが、どれほどドライ、およびウェットに感じられるか、回答させるようにした。各ムービーの再生は、ムービー上に配置された「スタート」ボタンを押して開始するようにした。各ムービーは、見逃した場合を考慮して、再生完了後に画面上に表示される「もう一回」ボタンを押すことで繰り返し再生可能とした。


「結果」

 分析は、田中(2006)に記述された分散分析3要因被験者内計画の分析手順に従い、webページ上で動作する統計パッケージのJavaScript-STAR(中野(1998))、および統計解析機能を備えた表計算ソフトウェアのMicrosoft Excel 2003を利用した。

4種類のムービーにおける粒子の動きが、人のパーソナリティとしてそれぞれドライおよびウェットと感じられた度合いの評定値の条件毎の平均値と標準偏差はTable 2に示した通りである。

刺激ムービーの条件別にドライ、ウェットに感じた度合いの違いを見るため、行動速度(低速-高速)×行動方向(近づく-離れる)×湿度(ウェット-ドライ)の分散分析を行った。分散分析の結果は、Table3に示した通りである。その結果、行動速度×行動方向×湿度の二次の交互作用が有意であった(F(1,206) = 12.25, p < .01)。

そこで、まず、行動方向別に行動速度×湿度の単純交互作用の分析を行った。分析結果の数値のうち、条件毎の平均値と標準偏差はTable 4、分散分析表はTable.5、交互作用分析表はTable.6、グラフはFigure 2に示した通りである。

その結果、行動方向(離れる)の条件下で、行動速度(高速-低速)×湿度(ドライ-ウェット)の交互作用が有意であった(F(1,206) = 52.9, p < .01)。また、行動方向(近づく)の条件下で、行動速度(高速-低速)×湿度(ドライ-ウェット)の交互作用が有意であった(F(1,206) = 17.53, p < .01)。以下、グラフFigure 2に沿って説明する。

・ 行動方向(離れる)の条件下では、

行動速度が高速の場合、湿度(ドライ-ウェット)の条件に有意差があり、よりドライと感じられた(F(1,206) = 78.46, p < .01)。これは、粒子が、気体分子運動のように、行動方向で離れ、行動速度で高速である場合には、気体的性質が行動方向と行動速度で揃うため、人のパーソナリティとしてドライと感じられることを示していると考えられる。

一方、低速の場合は湿度(ドライ-ウェット)の条件に有意差は見られなかった(F(1,206) = 1.52)。これは、行動方向では気体分子のように離れるが、行動速度では液体分子のように低速である場合、気体的性質(離れる)と液体的性質(低速)が互いを打ち消し合うため、ドライ・ウェットさに差がなくなったと考えられる。

・ 行動方向(近づく)の条件下では、

行動速度が低速の場合、湿度(ドライ-ウェット)の条件に有意差があり、よりウェットと感じられた(F(1,206) = 125.18, p < .01)。これは、粒子が、液体分子運動のように、行動方向で近づき、行動速度で低速である場合には、液体的性質が行動方向(近づく)と速度(低速)で揃うため、人のパーソナリティとしてウェットと感じられることを示している。

一方、高速の場合も、湿度(ドライ-ウェット)の条件に有意差があり、よりウェットに感じられた(F(1,206) = 24.01, p < .01)。ただし、その有意差の度合いは、低速の場合に比べて低めであった。これは、行動方向では液体分子のように近づくが、行動速度では気体分子のように高速である場合、気体的性質(高速)と液体的性質(近づく)が互いを打ち消し合った結果、行動方向(近づく)の影響の方が大きかったため、液体的にウェットに感じられる余地が残ったと考えられる。

・ 行動方向(離れる、近づく)いずれの条件下でも、ドライさの評定値は、行動速度が高速な場合に高く、低速な場合に低かった。また、ウェットさの評定値は、行動速度が低速な場合に高く、高速な場合に低かった。


次に、行動速度別に行動方向×湿度の単純交互作用の分析を行った。分析結果の数値のうち、条件毎の平均値と標準偏差はTable 7、分散分析表はTable.8、交互作用分析表はTable.9、グラフはFigure 3に示した通りである。

その結果、行動速度(高速)の条件下で、行動方向(離れる-近づく)×湿度(ドライ-ウェット)の交互作用が有意であった(F(1,206) = 86.96, p < .01)。また、行動速度(低速)の条件下で、行動方向(離れる-近づく)×湿度(ドライ-ウェット)の交互作用が有意であった(F(1,206) = 48.77, p < .01)。以下、グラフFigure 3に沿って説明する。

・ 行動速度(高速)の条件下では、

行動方向が離れる場合、湿度(ドライ-ウェット)の条件で有意差があり、よりドライと感じられた(F(1,206) = 78.46, p < .01)。

一方、行動方向が近づいた場合も湿度(ドライ-ウェット)の条件で有意差があり、逆によりウェットに感じられた(F(1,206) = 24.01, p < .01)。これは、粒子が、気体分子のように高速で動く条件において、気体分子のように離れる場合は人のパーソナリティとしてドライに、液体分子のように近づく場合はウェットに感じられることを示していると考えられる。


・ 行動方向(低速)の条件下では、

行動方向が近づく場合、湿度(ドライ-ウェット)の条件で有意差があり、よりウェットと感じられた(F(1,206) = 125.18, p < .01)。これは、粒子が、液体分子のように低速で動く条件において、同じく液体分子のように近づく場合は、液体的性質が揃うため人のパーソナリティとしてウェットに感じられることを示している。

一方、行動方向が離れる場合には、湿度(ドライ-ウェット)の条件で有意差は見られなかった(F(1,206) = 1.52)。これは、粒子が、液体分子のように低速で動く条件下で気体分子のように離れる場合は、液体的性質(低速)と、気体的性質(離れる)が互いに相手を打ち消し合ったため、ドライ・ウェットさに差がなくなったことを示していると考えられる。

・ 行動速度(高速、低速)いずれの条件下でも、ドライさの評定値は、行動方向が離れる場合に高く、近づく場合に低かった。また、ウェットさの評定値は、行動方向が近づく場合に高く、離れる場合に低かった。

最後に、湿度別に行動方向×行動速度の単純交互作用の分析を行った。分析結果の数値のうち、条件毎の平均値と標準偏差はTable 10、分散分析表はTable.11、交互作用分析表はTable.12、グラフはFigure 4に示した通りである。

その結果、湿度(ドライ)の条件下で、行動方向(離れる-近づく)×行動速度(高速-低速)の交互作用がやや有意であった(F(1,206) = 6.59, p < .05)。また、湿度(ウェット)の条件下で、行動方向(離れる-近づく)×行動速度(高速-低速)の交互作用が有意であった(F(1,206) = 10.09, p < .01)。以下、グラフFigure 4に沿って説明する。

湿度(ドライ)の条件下では、
・ 行動速度が高速と低速の場合の双方で、行動方向(離れる-近づく)の条件でドライさの評定値に有意差があり(高速ではF(1,206) = 56.67, p < .01)。低速ではF(1,206) = 37.41, p < .01))、どちらの場合も離れる方が、近づく方よりもよりドライと感じられた。

・ 行動方向が離れると近づくとの双方で、行動速度(高速-低速)の条件でドライさの評定値に有意差があり(離れるではF(1,206) = 35.96, p < .01)。近づくではF(1,206) = 15.96, p < .01))、どちらの場合も高速な方が、低速な方よりもよりドライと感じられた。

・ ドライと感じる評定値は、行動速度が高速で行動方向が離れる場合、最も高かった(M=1.94)。また、行動速度が低速で行動方向が近づく場合、最も低かった(M=0.63)。

・ 行動速度が高速(気体分子相当)な方が低速(液体分子相当)よりも、離れる-近づく(行動方向)の間で、ドライと感じる評定値の差がより大きい傾向が見られた。評定値の差の平均値の差のt検定を対応ありの条件で行った結果、有意であった(t(206) = 2.57,p < .05)。条件毎の平均と標準偏差は、Table 13を参照されたい。

・ 行動方向が離れる(気体分子相当)方が近づく(液体分子相当)よりも、高速-低速(行動速度)の間で、ドライと感じる評定値の差がより大きい傾向が見られた。評定値の差の平均値の差のt検定を対応ありの条件で行った結果、有意であった(t(206) = 2.57,p < .05)。条件毎の平均と標準偏差は、Table 13を参照されたい。

湿度(ウェット)の条件下では、

・ 行動速度が高速と低速の場合の双方で、行動方向(離れる-近づく)の条件でウェットさの評定値に有意差があり(高速ではF(1,206) = 70.64, p < .01)。低速ではF(1,206) = 27.47, p < .01))、どちらの場合も近づく方が、離れる方よりもよりウェットと感じられた。

・ 行動方向が離れると近づくとの双方で、行動速度(高速-低速)の条件でウェットさの評定値に有意差があり(離れるではF(1,206) = 41.9, p < .01)。近づくではF(1,206) = 7.76, p < .01))、どちらの場合も低速な方が、高速な方よりもよりウェットと感じられた。

・ ウェットと感じる評定値は、行動速度が低速で行動方向が近づく場合、最も高かった(M=1.98)。また、行動方向が高速で行動方向が離れる場合、最も低かった(M=0.71)。

・ 行動速度が高速(気体分子相当)な方が低速(液体分子相当)よりも、離れる-近づく(行動方向)の間で、ウェットと感じる評定値の差がより大きい傾向が見られた。評定値の差の平均値の差のt検定を対応ありの条件で行った結果、有意であった(t(206) = 3.18,p < .01)。条件毎の平均と標準偏差は、Table 14を参照されたい。

・ 行動方向が離れる(気体分子相当)方が近づく(液体分子相当)よりも、高速-低速(行動速度)の間で、ウェットと感じる評定値の差がより大きい傾向が見られた。評定値の差の平均値の差のt検定を対応ありの条件で行った結果、有意であった(t(206) = 3.18,p < .01)。条件毎の平均と標準偏差は、Table 14を参照されたい。



「考察」

以上の結果より、人間に見立てた粒子の行動速度においては、

・ 粒子の動きが高速(気体分子相当)な方が、低速(液体分子相当)な方よりも、粒子が近づく、離れる双方に共通して、有意によりドライと感じられる。

・ 粒子の動きが低速(液体分子相当)な方が、高速(気体分子相当)な方よりも、粒子が近づく、離れる双方に共通して、有意によりウェットと感じられる。

と言えることが分かった。

また、行動方向においては、

・ 粒子の動きが離れる(気体分子相当)方が近づく(液体分子相当)よりも、粒子が低速、高速の双方に共通して、有意によりドライと感じられる。

・ 粒子の動きが近づく(液体分子相当)方が離れる(気体分子相当)よりも、粒子が低速、高速の双方に共通して、有意によりウェットと感じられる。

と言えることが分かった。

また、行動速度と行動方向の各条件を互いにかけ合わせた場合においては、

・ 粒子の動きが、「低速」(行動速度)かつ「近づく」(行動方向)といったように液体分子運動の特性に純粋に沿った場合に、ウェットと感じられる度合いが一番高くなる。

・ 粒子の動きが、「高速」(行動速度)かつ「離れる」(行動方向)といったように気体分子運動の特性に純粋に沿った場合に、ドライと感じられる度合いが一番高くなる。

・ 粒子の動きが、「低速」(液体)かつ「離れる」(気体)、「高速」(気体)かつ「近づく」(液体)といったように、気体分子運動と液体分子運動の特性が混ざった場合には、気体の特性と液体の特性が互いを打ち消し合う結果、有意にドライ、ウェットと感じられる度合いが、純粋な場合に比べて低くなるか、有意差がなくなる。

打ち消し合いが起きる場合の両者の影響力の差については、行動速度の気体的性質(高速)と行動方向の液体的性質(近づく)が互いを打ち消し合う際には、行動方向(近づく)の影響の方が大きいため、液体的にウェットに感じられる余地が残る。一方、行動速度の液体的性質(低速)と、行動方向の気体的性質(離れる)が互いに相手を打ち消し合う際には、両者の影響力が同等なため、ドライ・ウェットさに有意差がなくなる。

・ 行動速度(高速―低速)、行動方向(離れるー近づく)の双方において、気体分子相当の条件(高速、離れる)の方が、液体分子相当の条件(低速、近づく)よりも、ドライと感じる評定値の差、およびウェットと感じる評定値の差が大きい。すなわち、行動速度が高速(気体分子相当)な方が低速(液体分子相当)よりも、離れるー近づく(行動方向)の間で、ドライと感じる評定値の差、およびウェットと感じる評定値の差が大きい。また、行動方向が離れる(気体分子相当)方が近づく(液体分子相当)よりも、高速―低速(行動速度)の間で、ドライと感じる評定値の差、およびウェットと感じる評定値の差が大きい。

と言えることが分かった。

以上より、ムービー上の各粒子を個人に見立てた場合、

個人が他者から離れる(気体分子相当)方向に動くとドライなパーソナリティの持ち主と認知され、一方、個人が他者に近づく(液体分子相当)方向に動くとウェットなパーソナリティの持ち主と認知されると言える。

また、個人が高速(気体分子相当)で動くとドライなパーソナリティの持ち主と認知され、一方、個人が低速(液体分子相当)で動くとウェットなパーソナリティの持ち主と認知されると言える。

このことから、気体、液体分子運動パターンのどのような点が人間のパーソナリティとしてドライ、ウェットに感じられているかについては、個人(粒子)の行動する速度(高速、低速)と行動する方向(離れる、近づく)の2つが少なくとも要因としてあげられると考えられる。しかし、それ以外の要因については、今回の研究では明らかになっておらず、さらなる研究が必要である。

また、個人の行動する速度(高速、低速)、および行動する方向(離れる、近づく)と、パーソナリティの認知におけるドライ、ウェットという印象との間に、なぜつながりが生じるのかの人間生体における生理、認知メカニズムは、現状ではよく分からないというのが実情であり、さらなる研究が必要である。

また、行動速度(高速―低速)、行動方向(離れるー近づく)、湿度(ドライ-ウェット)相互間の因果関係がどうなっているかについては、今回の研究では明らかになっていない。別途、因果関係を分析可能な調査データを採集して、パス解析等を用いた分析を行うことが必要である。

行動速度(高速―低速)、行動方向(離れるー近づく)の双方において、気体分子相当の条件(高速、離れる)の方が、液体分子相当の条件(低速、近づく)よりも、ドライと感じる評定値の差、ウェットと感じる評定値の差が大きくなることについては、人間の行動において、人間が気体分子のように高速、離れる方が、液体分子のように低速、近づくよりも、人間にとって相手の行動速度、行動方向の見極め、差別化がしやすく、パーソナリティのドライ、ウェットさを区別しやすくなることを示しているように考えられ、さらなる検証が必要である。

なお、今回抽出した要因のうち、行動方向(離れる、近づく)については、従来Triandis(1995), Yamaguchi(1995)等で検討されてきた集団主義(collectivism)、個人主義(individualism)の概念と関係する可能性がある。「近づく」については、粒子が互いに近づいて一つにまとまって集団を作ることに結びつく点、集団主義と関係があり、一方「離れる」については、粒子が互いにバラバラに拡散して個別に動くことに結びつく点、個人主義と関係があると考えられる。この点、ウェットなパーソナリティの人は互いに近づき一体化することを指向するため集団主義的であり、ドライなパーソナリティの人はバラバラに離れることを指向するため個人主義的であると捉えられる可能性があり、さらなる検証が必要である。

一方、行動速度(低速、高速)については、低速性が、あまり自分からは積極的に動こうとしない、静的あるいは受動的な行動と関係し、高速性は自分から積極的に進んで速く動こうとする能動的、機動的、ダイナミック、自主的、自発的な行動と関係するのではないかと考えられる。ドライなパーソナリティの人は高速を指向するため、スピーディな意思決定を行い、活動的で、外に向けて積極的な行動を取り、一方、ウェットなパーソナリティの人は低速を指向するため、ゆっくりとした意思決定を行い、非活動的で、内向きの消極的な行動を取りやすいと捉えられる可能性がある。この点、例えば、従来のEysenck(1953)による外向-内向と神経症的傾向を中心に据えて性格を捉える理論図式やMcCrae & Costa(1987)で検討されてきた人間の主要な5つのパーソナリティ特性における外向-内向との関連が、ドライさと外向、ウェットさと内向との間に存在する可能性があり、さらなる検証が必要である。

なお、今回の研究では、生身の人間の代わりとして、画面上の簡略化された円表示で代用する形で調査を行ったが、単なる円表示と生身の人間とでは、サイズや形状容姿を含めて、相当な違いが存在するため、今回の結果をそのまま生身の人間に当てはめてよいのかという問題が存在すると考えられる。その点、生身の人間モデルに速度(高速―低速)、方向(離れるー近づく)を変えて行動してもらうのをビデオ撮影し、撮影した動画をその都度研究参加者に見せるかたちで、モデルのパーソナリティのドライ、ウェットさを評価してもらう追試等を別途行った方がよいとも考えられる。

最後に、今回得られた知見は、人間のパーソナリティを対象にしたものであったが、広く、人間の湿度知覚に応用可能と考えられる。

すなわち、ムービー上の各粒子を個体~物体一般に見立てた場合、

粒子が他粒子から離れる(気体分子相当)方向に動くとドライに感じられ、一方、粒子が他粒子に近づく(液体分子相当)方向に動くとウェットに感じられると考えられる。

また、粒子が高速(気体分子相当)で動くとドライに感じられ、一方、粒子が低速(液体分子相当)で動くとウェットと感じられると考えられる。

この点、さらに検証が必要であり、今後も解明に取り組んでいきたい。


引用文献

物理学辞典編集委員会 (1992). 物理学辞典 改訂版 培風館
Eysenck, H. J. (1953) The structure of human personality. New York: Wiley.
池内満 (2002). 分子のおもちゃ箱 2008年1 月19日 <http://mike1336.web.fc2.com/> (2008年2月23日)
McCrae, R. R., Costa, P. T., Jr. (1987). Validation of the five-factor model of personality across instruments and observers. Journal of Personality and Social Psychology, 52, 81-90
中野博幸 (1998). .JavaScript-STAR 2007年11月9日<http://www.kisnet.or.jp/nappa/software/star/> (2008年2月25日)
大塚巌 (2008). ドライ、ウェットなパーソナリティの認知と気体、液体の運動パターンとの関係. パーソナリティ研究, 16, 250-252
新村出(編著)(1998). .広辞苑 第5版 岩波書店
Stein, J., & Flexner, S. B. (Eds.) (1992). The Random House Thesaurus. Ballantine Books.
田中敏 (2006). 実践心理データ解析 改訂版 新曜社
Triandis, H. C. (1995). Individualism And Collectivism. Boulder: Westview Press.
Yamaguchi, S., Kuhlman, D. M., & Sugimori, S. (1995). Personality correlates of allocentric tendencies in individualist and collectivist cultures. Journal of Cross-Cultural Psychology, 26, 658-672




図表

 

 

Figure.1 粒子運動ムービー(研究参加者に見せたもの)の静止画

 

ムービー開始画面

 

ムービー終了画面(近づいた)

 

ムービー終了画面(離れた)

 

 

 

 

 

 


 

Table.1  ドライ、ウェットなパーソナリティと気体、液体分子との対応関係の推定

 

 

 

 

 

Table 2 全条件の平均値と標準偏差


 

Table 3 全条件の分散分析表


 

Table 4  単純交互作用(行動速度×湿度 at 行動方向) 平均値と標準偏差

 

Table 5  単純交互作用(行動速度×湿度 at 行動方向) 分散分析表


Table 6  単純交互作用(行動速度×湿度 at 行動方向) 交互作用分析表

 

 

 


Figure 2  単純交互作用(行動速度×湿度 at 行動方向) グラフ

 

 

 


Table 7 単純交互作用(行動方向×湿度 at 行動速度) 平均値と標準偏差

 

 

Table 8 単純交互作用(行動方向×湿度 at 行動速度) 分散分析表

 

Table 9 単純交互作用(行動方向×湿度 at 行動速度) 交互作用分析表

 

 


Figure 3 単純交互作用(行動方向×湿度 at 行動速度) グラフ

 

 

 

 

 


 

Table 10 単純交互作用(行動方向×行動速度 at  湿度) 平均値と標準偏差

 

Table 11 単純交互作用(行動方向×行動速度 at  湿度) 分散分析表

 

Table 12 単純交互作用(行動方向×行動速度 at  湿度) 交互作用分析表

 

 

 


Figure 4 単純交互作用(行動方向×行動速度 at  湿度) グラフ

 

 

 

 

 

Table.13 ドライ評定値の平均値の差の平均値と標準偏差

 

 

Table.14 ウェット評定値の平均値の差の平均値と標準偏差

 




(c)2008 大塚いわお

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