「対物(メカ・マテリアル)」指向の男、「対人(ヒト)」指向の女
-好む対象の違いから見る男女の心理的性差-

2003.2-2005.4 大塚いわお


筆者は、書店の店頭で男性と女性が眺める書籍の種類の違いや、おもちゃの男性向け、女性向けの性別、デパートなどでの店頭で男性が立ち寄る商品と女性が立ち寄る商品の違い、男性が進学したがる学科、女性が進学したがる学科の違いについて、長期にわたり観察~データ収集を行ってきた。

その結果、筆者が観察するに、男性と女性とでは、好む対象、指向するものがかなり違うようである。

大きく分けて、男性は、鉄道のようなメカや岩石、宇宙の星の物理・化学的構成といった、血の通わない非人間的な物体に対して興味を持ち、女性は、人形、赤ん坊、ペットといった、より人間味のある対象に対して興味を持つようである。

この点、男性の好みは「対物(メカ・マテリアル)」指向、女性の好みは「対人(ヒト)」指向としてまとめることができるように思われる。

以下に、「対物(メカ・マテリアル)」指向(男性的)、「対人(ヒト)」指向(女性的)がそれぞれ具体的にどのようなものであるかを分析した表を示すので、参照されたい。

大分類 対物(メカ・マテリアル)object、material指向 対人(ヒト)human指向
小分類↓
●1 メカ(mechanism)指向
メカ・機械・道具を好む
非メカ(anti-mechanism)指向
機械的でない、血の通ったものを好む
○11 ハード(hard)指向
固いのを好む
(メカ、岩石を好む)
ソフト(soft)指向
柔らかいのを好む
(ぬいぐるみ、赤ん坊、布地を好む)
○12 冷たさ(cool)指向
冷たいのを好む
(金属、青色を好む)
温かさ(warm)指向
温かいのを好む
(人肌・体温の温もり、赤色を好む)
○13 非生物・非生命(non-bio)、物体(lifeless)指向
生きていない、物体として扱えるものを好む
生物・生命(bio)、生体(life)指向
生体を好む
→131 無機(inorganic)指向
無機的なのを好む
(物理・化学の研究などを好む)
有機(organic)指向
有機的なのを好む
(作物の有機栽培などを好む)
○14 異種(difference)指向
自分(人間)から遠い存在を好む
(自分とは異類な個性を持った存在、エイリアンを好む)
同種(same)指向
自分(人間)に近い存在を好む
(自分と同類、同種の仲間を好む)
○15 物体化(materialize)指向
人間を物体、物質として取り扱う。
擬人化(humanize)指向
物体、物質(分子~ロボット)を擬人化して、人として捉える。
●2 切断(cutting)指向
他者との関係の切断・分離を好む
(自他を明確に区別する)
関係(relation)・縁故(connection)指向
他者との関係・縁故の構築を好む
(互いに一体・融合化する)
○21 客観(objective)指向
物事を突き放して捉えるのを好む
主情(emotional)指向
物事を感情、情緒的に捉えるのを好む
→211 科学(science)指向
科学的なものを信じる
非科学(anti-science)指向
宗教・占いを信じる
→212 合理(rational)指向
合理的なのを好む
非合理(irrational)指向
合理性一本槍でない
○22 デジタル(digital)・論理(logical)指向
物事を離散量で捉えるのを好む
物事を0か1かで割り切るのを好む
アナログ(analogue)・非論理(illogical)指向
物事を連続量で捉えるのを好む
物事を0か1かで割り切るのを好まない
→221 コンピュータ(computer)指向
コンピュータ操作を好む
反コンピュータ(anti-commputer)指向
コンピュータが嫌い~興味がない
○23 (人間関係の)手段(means)・道具(tool)指向
人間関係を目標達成のための単なる手段・道具と見なす
(人間関係の)自己目的化(self-purpose)指向
人間関係そのものに興味・関心がある
→231 非コミュニケーション(anti-communication)指向
他人とのコミュニケーション自体を好まない
(電話はあくまで手段)
コミュニケーション(communcation)指向
他者とのコミュニケーション自体を好む
(電話でおしゃべりするのが好きである)
(複合)
●1&2 ドライ(dry)指向
サッと手離れよいものを好む
ウェット(wet)指向
ジメジメ、ベタベタしたものを好む
教育 理工(science、engineering)指向
理工系の学科を好む
人文(human)指向
人文系の学科を好む
性差 男性的 女性的
父性的 母性的


「対人(ヒト)」指向により、女性は、人間や人間により近い存在に興味を持ち、周囲の他者と互いに近づき合うことで、相互扶助の関係に入りやすくなり、その結果、より生き延びやすくなったと考えられる(これは、女性が、生物学的により貴重な存在であり、よりよく生き延びてもらう必要があるニーズに適合している)。

一方、「対物(メカ・マテリアル)」指向により、男性は、人間からかけ離れた、非人間的な存在(物体、物質、機械)に興味を持ち、互いに周囲の他者から距離を置いた遠いところに拡散しようとする。男性は、人間一般からかけ離れた存在(物体、物質)がどのような性質を持っているか、どのようにすればメカニックな道具としてうまく使えるかを客観的に調べ上げることで、自然環境に対する人間の適応可能領域を、我が身の生命を犠牲にしつつ、徐々に広げていく成果を得た。その点、男性の「メカ・マテリアル」指向は、人類の生態学的な分布領域を広げる方向に役立ってきたと言える。

「対人(ヒト)」指向の女性は、自分のしていることが他の「ヒト」にどう映るかを常に気にして行動する。すなわち、自分の行動が、対人的にどのような効果をもたらすかをを常に注意深く計算し、最も他の「ヒト」に気に入られる、受け入れられる、他の「ヒト」の関心を引く行動を取ろうとする。女性が身だしなみや化粧に常にうるさく関心を持つのも、そうした「対人配慮」が根底にあると考えられる。

一方、「対物(メカ・マテリアル)」指向の男性は、機械やコンピュータのメカニズムを分析する作業とか、物理・化学的な世界を探求する、いわゆる「モノ」の世界に没頭してしまい、他の「ヒト」に自分がどう映っているかについて、気にならなくなり、注意しなくなってしまう傾向がある。いわゆる「オタク」と呼ばれる、自分の関心があること以外に興味・話題がなく、対人的に無配慮な行動を取ってしまう人たちの大半が男性で占められるのも、男性に起きやすい「対象物への心理的な没入」現象と関係があると考えられる。


なお、男女の玩具の違いについては、玩具メーカーが、最初は、男女のどちらがどのような玩具を欲しがるか分からず、長年にわたって試行錯誤を重ねていくうちに、男児と女児との嗜好の違いがだんだんつかめるようになって行き、最終的に現在の性別毎に異なる玩具の供与に行き着いた、といった歴史を辿ってきたものと考えられる。

フェミニストは、男女別に異なる玩具を与えることが性差別につながる(本来、嗜好に男女の差はない)と主張するが、彼らは、おそらく玩具の性別分化がどのようにして起きたのかについての歴史を知らないのではあるまいか?

こうした点、男女の心理的性差が、玩具の発達していく歴史にどのような影響をもたらしたかを調べる、歴史心理学のような研究領域が今後より必要となると考えられる。


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