◇社会の概念-ミクロ神経社会学-

1987-2009 大塚いわお


●個人神経系間の接続コネクタとしての社会

社会は、個人の神経系の働きに視点を合わせた場合には、
(1)各人の神経系システム同士のコミュニケーションによる結合・連携・連帯、ないし個々の神経系システム同士の相互作用
(2)各人の神経系システム同士を寄せ集めた集合体
として捉えることができる。

(1)の捉え方からすると、社会はあくまで、個人内部で生み出された環境適応に有効なニューロン回路を、(その回路をまだ持っていない)複数の他の人間の神経系へと適切に流布させるための手段に過ぎない。社会は、互いに独立した各個人の神経系=「心」同士をつなぐ架け橋・接続コネクタとして捉えられる。

言い換えると、社会は、ミクロな視点としては、個々の神経系システム同士の相互作用、ニューロン回路のやりとり自体の集合体として捉えることができる。 人間は、工学的にはニューロコンピュータの一種として捉えることができ、巨大なニューロコンピュータ同士が大群をなして一斉に相互作用、通信するのが、現代の人間社会である、と言ってよい。

文化を、ニューロン回路の形に変換しうる情報として捉えた場合、コミュニケーションは、通路としての社会の上を、文化が行き交う状態として捉えることができる。社会は、ニューロン回路=文化の流通する経路の集積として捉えることができる。

(2)の捉え方では、社会は、個々人の神経系=「心」の集合体として捉えられる。社会は、個々人の「心」=神経系無しには存在し得ない。その点、社会を捉えるには、神経心理学的見地が必須となる。言わば、「(神経)心理学的社会学」が必要となる。その場合、現行の社会学のような、社会は、個々人の心理とは独立して存在する、個人心理を超えた独自の存在である、とする見方は成り立たなくなる。

また、(2)の個々人の神経系活動、心理の集合体が社会である、とする考え方からは、社会は個々人の心理を内包する、と捉えることができ、社会は複数~多数の個々人の心理をまとめ上げて集約する上位概念であると言うことができる。

その点、社会学は心理学、脳神経科学を内包する、より上位の学問と言うことができる。率直に言えば、心理学は社会学の下僕である、と言うことになる。あるいは、神経心理学の上位に、神経社会学が来るのである。

これは、会社とかで、個々の一般社員よりも、彼らを集約し、まとめて管理するマネージャーの方が、組織内の階級が上位なのと一緒である。

社会学は、従来のように個々人の内的心理を除外して、個人間の相互作用に視点を絞る行き方では行き詰まってしまうので、今後の脳神経科学の進展に新たに対応すべく、個々人の心理、神経系活動を内包し、取り入れ、まとめ上げていく、という視点から再構成されるべきである。


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