◇回路共通性、コミュニティと神経系 -ミクロ神経社会学-

1987-2006 大塚いわお


●同類意識とニューロン回路の共通性

同じ考えの持ち主は、互いに、同じニューロン回路を共有している、ないし、自らが内蔵するニューロン回路の構造が同じである(ないし近似している)と考えられる。

一方の人間が、他方の人間に、行動面での同類意識を感じる場合、両者のニューロン配線に、共通な部分があると考えられる。

同一の考えを持っている者同士は、共通のニューロン回路(神経系の配線)を持っていると考えられる。


●ニューロン回路の相違

複数の人間の間の神経系を見比べた場合、ニューロン配線=ニューロン同士の結合のあり方が、
(1)同一=共通
(2)相違=非共通
との2通りに分かれる。

複数の人間が、その神経系において、互いに異なるニューロン配線を持つ場合、彼らは、
(1)相互補完関係=システム関係にある。相互に分業関係にある。各人のニューロン配線を足し合わせると、互いに異なる部分同士の協力関係からなる、全体社会システムとなる。
(2)相互に異質であり、分かり合う(理解し合う)ことができない、疎外関係にある。

他者との間で、
(1)ニューロン配線が共通な場合、互いに了解・共感でき、同じ生活世界に住んでいる。互いに一体感があり、温もりを感じる。
(2)一方、配線が非共通な場合、互いに異質な世界に生きていることになる。
 

●価値観の相違とニューロン配線

複数の人間の間の神経系において、互いに対応する部分が、同じニューロン配線となっていても、ニューロン間の結合のあり方が、
(1)肯定(促進)
(2)否定(抑制)
と、正反対の論理を示すことがある。生理的には、促進・抑制の2通りのシナプスに対応する。

これは、感情面における
(1)快感
(2)不快感
と関連がある。

ニューロン間結合が肯定の場合は、その結合について、快く思っていることを指し、否定の場合は、不快に思っていることを指す。

上記のニューロン間結合の肯定・否定は、価値観における
(1)有価値
(2)無価値
との判定と関連がある。ニューロン間結合が肯定の場合は、価値ありとみなし、否定の場合は、価値なしと見なす。

複数人間での、価値観の相違は、
(1)共通する回路がない。これは、共通の話題がないことを意味する。互いに無関心である。

(2)回路の付き方は共通しているが、肯定・否定の関係=感情面での快・不快感が、反対になっている。関心は共有しているが、意見がぶつかり合う、正反対である。持っている価値観が、互いに対立関係にあることを示す。長期記憶回路の結線のあり方は共通だが、感情による価値付与のあり方=シナプスへの促進・抑制の付け方が違う。

コンフリクト(紛争)は、各人のニューロン回路の中に、促進・抑制の関係が正反対になっている部分が存在し、その正反対の部分同士が同時に活性化することにより起こる。
 


●対人湿度(ドライ・ウェットさ)とニューロン回路

互いに共通のニューロン回路を持つ者同士は、「ああ、自分は、相手と同じなんだ」と、互いに一体感を感じ、心理的に惹き付け合って、一緒になりやすい。社会運動とかで、同一のスローガンを掲げる人たちが、一緒に集団になって、一体化して行動するのは、彼らが、共通のニューロン回路を持っており、それゆえに互いに同質性を感じて一体化していることの現れである。

その点、人々が内包するニューロン回路の共通性は、人々に、互いにくっつき、連帯し、一体化する、対人関係上のウェットさをもたらすと言える。

一方、持っているニューロン回路が、他者と違うことを感じる場合は、自分は他者と離れた別々の存在であると感じる。

その点、人々が内包するニューロン回路の相違は、人々に互いにバラバラに離散する、対人関係上のドライさをもたらすと言える。
 

●コミュニティ形成とニューロン回路

共通のニューロン回路を持ち、ウェットな同類意識を持つ者同士が、相互に分かり合い、理解し合える仲間同士がまとまってできるコミュニティを形成すると考えられる。


●社会統合とニューロン回路

同一社会、同一国家に属する者は、共通の記憶、共通のニューロン回路を持っていると考えられる。各自の持っているニューロン回路の共通性、同一性が、それをもとにした社会の統合を可能にすると考えられる。

あるいは、共通のニューロン回路を互いに持っていることが、その社会の成員である証となると考えられる。


ホームページに戻る