「萌え絵」美術の特徴(1990年代以降)

2006.10-2009.1 大塚いわお


日本のアニメ、コミックのキャラクタ表現において1990年代以降に顕著に見られるようになった、若い女性キャラクタの顔や姿を描いた「萌え絵」の特徴を以下にまとめた。

No. 部位 萌え絵以前(1980年代) 萌え絵(1990年代以降)
(1) まつ毛 長い。たくさんある。 ない。末端の突起で代用。すっきりしている。
(2) 横長。 縦長。正円~四角い円。
小さな円に止まる。生体の目のサイズに近い。 大きな円、楕円へと誇張。
瞳のサイズが小さい。 瞳のサイズが大きい。
瞳の色が単色。濃淡なし。 瞳の色が多色遷移。濃淡あり。
瞳への光の映り込みなし。 瞳への光の映り込み、反射あり。
瞳の輝きなし。 瞳の輝きあり。
(3) 正面から見て、大きい。長い。鼻筋を表現する。 正面から見て、ごく小さな突起のみに止まる。鼻筋はほとんど表示しない。
(4) 唇の上下二つの突起が大きい。歯をリアルに表現。 唇の突起なし。開いた赤口のみ。閉じた口を短い円弧の線のみで表現。歯を省略するか、ごく小さく簡略化して表現。
(4) 髪の毛 毛の流れを表現せず。塗りつぶし。 毛の流れを、光の当たり方の変化を捉えることで表示。


ある絵が「萌え絵」かどうかは、ほとんど顔の表情で決まる。

顔が、実際の生体の顔を忠実にまねるのではなく、大胆なデフォルメを加えることで、萌え絵となる。すなわち、
・目や瞳を大きく強調し、
・瞳等をみずみずしく光を映すように描き、
・その他のまつ毛や鼻筋、唇等の隆起、突起を最小限に抑えて、
全般にごてごてしない、けばけばしない、すっきりした、光のある、かわいい造形に仕上げるようになった絵が、萌え絵であると言える。

萌え絵の原型は、目や瞳の大きい、表情の可愛らしさを強調する少女コミックが原型で、女性作者が元々の作画上の主導権を握っており、そこに異性としての魅力を感じた男性作者が新たに参入して、女性、男性作者共に、主に男性消費者向けに、女の子の絵がより異性としてすっきり可愛く感じるように改良を重ねて現在に至ると考えられる。

目や瞳の大きいところは、原型となった少女コミックの影響が大きいが、けばけばした飾りがなく、すっきり簡略化しているところは、絵の主たる消費者たる男性の嗜好の影響が大きいと言える。

上記の萌え絵の説明は、男性消費者をターゲットとした女性キャラクタ表現についてのものであるが、これとは別に、女性向けに若い男性キャラクタの顔や姿を描いた萌え絵も、BL等の隆盛で、現在強い勢いを持っていると考えられる。

女性向けの萌え絵に見られる男性キャラクタの姿は、男性本来の粗暴さ、がさつさを減らし、美少年的な、美しさや上品さ、高貴さ(とプライドや自己愛の度合いの高さ)、壊れやすさ、はかなさ、(男性同士の同性愛による)キャラクタ相互の一体化といった女性好みの性質を強化したものとなっていると言える。


参考文献
STUDIO HARD MX(制作) アニメヒロイン画報-架空美少女ヒロイン四十年の歩み- 竹書房 1999


大塚いわお

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