「日本らしさ」についての検討

2004.4-2005.7 大塚いわお



従来の日本文化論において、日本社会・文化の特徴であると言われてきた、「集団主義」「閉鎖性(鎖国)」「年功序列」「甘え」などは、実際のところ、日本だけに固有なものではなく、広く東アジア(中国、韓国、フィリピンなど)などの農耕社会全般に当てはまる特徴である。「侘び寂び」についても、細部は違うにしろ、大まかには中国の水墨画の世界や隠遁者の文化と共通なのではないかと考えられる。

それゆえ、日本の社会・文化のどこが他の国にない独自のものであるかを説明するのは、それほど簡単ではない。実際には、他の国にも存在するいくつかの特徴を掛け合わせて持つことで、日本の独自性が出てくると考えられる。その場合、他の国は、日本と異なり、それらの特徴を掛け合わせた形では持ち合わせていないということになる。

筆者は、日本社会は、以下の3つの特徴を掛け合わせて持つことで、他の社会にない独自性を持つと考える。この場合、これらの特徴は、それぞれ単独では、他の社会にも存在するかも知れないが、それぞれのANDを取って絞り込むと、日本だけになると考えられる。

(1)「農耕的」 一カ所に定住・定着して、植物の栽培(稲作など)を行って生活する。この生活態度から導かれる特徴が、以下に述べる「ウェット」「女性的」というものである。

(1a)「ウェット」 互いに精神的にベタベタ近づき、くっつき合ってあまり動かず、排他的な集団を生成する。グループ単位で行動するのを好む集団主義者である。周囲との同調、協調を重んじ、自我が弱い。プライバシーに欠ける、などが特徴となる。

(1b)「女性的、母性的」 互いに永続的に同じ集落で顔を合わせ続ける必要があるため、仲間を割ることが許されず、良好な人間関係の維持、相互の一体感、温もりを大事にする。これは女性が得意な、女性向きの生活態度であり、そこから社会における女性、母性の力が強くなって、以下のような態度を主流にさせる。例えば、態度が受け身である。自らの保身、安全を第一に考え、冒険を嫌う。権威におもねって自らの保身を図る権威主義者である。前例、しきたりを持つ年長者を重んじ(年功序列)、個人の独創的な試みを評価しない。

上記の特徴は、日本だけではなく、広く農耕を行って生活をしている社会(中国、韓国、東南アジア、ロシアなど)に広く共通に見られる特徴であると考えられる。一方、遊牧・牧畜系統の社会(西欧、北米、アラブ、ユダヤなど)は、上記とは反対のドライで男性的な文化を持つ。

(2)「求心的」 父系の家族集団(例えば天皇家)を基盤とした(あるいはそれにならった)、一点に集中した、ツリー構造の求心力のある組織を作って行動する。

これは、父系の族譜を熱心に作成、維持して、共通の祖先からツリー状に広がる家族集団を持つ中国や韓国と共通である。一方、タイのような東南アジアでは、家族集団は、父系・母系両方にまたがって網の目状に散逸、分散する形になり、求心性に欠ける。

(3)「非血縁内集団=ウチの形成」 血縁関係にない赤の他人も、新卒採用などで「同じ釜の飯を食べる」体験をすれば、家族同様の温かい全人的一体感を持って集団に溶け込む=「ウチの仲間に入る」ことができる。自分の会社を「ウチの会社」という呼び方をするのが、その典型である。

これは、内集団(「ウチ」に当たる集団)が、同姓の家族集団に限定される中国や韓国と大きく異なる点である。中国、韓国では、「ウチ」の仲間になれるのは、血縁関係のある相手同士に限定される。血縁集団以外の相手は、心を許すことのできないヨソ者のままなのであって、企業に雇われても、(その企業が親族の企業である場合を除き、)その企業に一体感を持つことがない。日本のように、入った企業に強い一体感を感じ、血縁関係にないヨソ者同士があたかも家族のように同じ「ウチ」に所属する者として一緒に過ごすことは、中国、韓国ではありえないと考えられる。

(1)~(3)の側面を同時に兼ね備えているのが、他の社会にない日本社会独自の特徴に当たると考えられる。


(c)2004-2005 大塚いわお

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