日本人はなぜ英語がしゃべれないか?
-「和英」単語集の必要性について-


(c)2001 大塚いわお

日本人は、英語を読むことはできるが話せない、ということは以前から方々で言われていることである。英語情報の受信はできるが、発信ができないため、例えば日本国内で出た画期的な研究成果が、なかなか英語圏の人々に伝わらない、とされている。

そこで新たに取られている対策は、英語を文字で読む訓練に加えて、耳で聞く訓練(リスニング)も行うことである。「耳で聞き取れれば、しゃべれることになる」とされており、例えば国際的な英語力判定テストTOEICでは、明確な形での英作文の試験は存在しない。

しかし、リスニング訓練を繰り返しても、聞くことはできるが、自分のしゃべりたい内容の英単語がとっさの場で思い浮かばず、話せない人が多いという。
アメリカ・カナダの大学に留学するために必要な英語力判定試験であるTOEFLのコンピュータ対応化で、ライティング(英作文)が必須になったが、それに苦戦を強いられる日本人が多いとされている。

なぜ、上記のような問題が起きるか?筆者は、その原因は、従来の日本人において、母国語である日本語から英語を連想する訓練が全くなされていないことにある、と考える。

読者の皆さんは、試しに、お近くの大きめな書店に出向いて、中学~高校の参考書売り場を見られると良い。書店店頭で見かける英単語集は、ほとんど全て、英語を日本語に直すための「英和」単語集ばかりであることに気づかれると思う。この傾向は、TOEIC、TOEFL参考書売り場でも同様である。

要するに、現在の日本では、英語から日本語へという方向の学習のみが行われている。日本語から英語へという方向の効果的な学習がほとんどなされていないのだ。

日本語→英語の翻訳作業であれば、英作文を学校でやっているではないかという読者の方もいるだろう。英作文の参考書は確かにある程度存在する(英文読解に比べると圧倒的に数は少ないが)。しかしそれらの内容を見ると、作成すべき英文の構文をどうするか、日本語特有の文章上の言い回しを正しい英語文法に則った場合どう書けばよいかに注意が行っているものばかりで、和単語→英単語の対応付けを行える「和英」語彙力の向上には全く関心が払われていないのが現状である。

英語でいざしゃべろうとするとき、英語で該当する単語が思い浮かばなかった場合、まず日本語の単語が出て来て、「これを英語では何と言うんだっけ?」と考える。日本語では語彙が豊富にあり、ほとんど考えずにしゃべることができるからである。
ここで、日本語→英語の対応を十分勉強することで、日本語の単語が意識の前面に出てくる前に、対応する英単語への置き換えが頭の中で自動的に行われて、英語が自然と口をついて出てくるようになる、と筆者は考える。

日本語→英語の方向の学習をしっかり行うことで、英語を豊富な語彙力をもって流暢にしゃべることが初めてできるようになるのではあるまいか?

日本人が英語をしゃべれないのは、外国人との付き合いが薄い単一民族だから、などというのとは恐らく関係ない。単純に、和英単語集を勉強していないから、自分の普段使っている和単語~熟語に対応する英語が出てこないために過ぎない。

また、英会話スクールでネイティヴな英語講師といちいちしゃべらなければ、英語はしゃべれるようにならないとまことしやかに主張する人が多いが、それはうそなのではないか?日本語→英語の対応付けを行う語彙数が一定以上あれば、自分の言いたい意味の英単語や熟語は自然と口からついて出てくるようになるのではあるまいか?と筆者は考えている。

ちなみに、筆者が大きな書店の店頭で確認できた、和英単語集は、
1)赤尾好夫編 綿貫陽補訂「和英基本単語熟語集」旺文社 初版1957(4訂版1992)
2)大石五雄監修「ニューアンカー英作文辞典」学習研究社 初版1993
のわずか2つだけである。しかも、2)は厳密には単語集とはいいがたいもの(辞書)である。

さらに、こうした数少ない和英単語集も、分野や重要性・使用頻度で日本語単語を配列する、といった工夫はなされておらず、単にあいうえお順に並べているだけで、覚える気力が沸きにくいことこの上ない。

そこで、次のような作業を行うことで、簡単に効果的な和英単語集を作ることができないであろうか?

既存の英和単語集は、英文読解の需要が多く、多様な種類のものが大量に市場に出ている。互いに競争が激しく、内容面で洗練されている。競争で鍛えられて優れた学習効果を持つようになっている出来のよい英和単語集の、「英和」と「和英」の関係をそのまま逆さにして、和英単語集にすることで、直ちに効果的な日本語から英語への単語連想が行えるようになるのではないか?具体的には、

1)まず学習者が解決すべき問題として与えられる例文を日本語で表示する。学習すべき和単語~熟語部分を、色を変えて書く。

2)学習者が学ぶべき単語を、日本語→英語の順に、対にして並べる。すなわち、学ぶべき和単語~熟語をまず左側に書き、その翻訳に当たる英単語を右側に複数書く。例文は、日本語文を先に書き、その翻訳として英文を次に書く。

3)最終的な解答となる、最初に呈示した問題文(日本語)の翻訳となる英文を表示する。

例えば、英語問題文、英単語と和訳、和訳文が三位一体で整理されて載っていて優れた「英和」単語熟語集として利用者の多い、鈴木陽一「DUO」アイシーピー (第3版 2000)において、英語と日本語の関係を逆転させる形で、問題例文とかはそっくりそのまま生かす形で「和英」単語集に変換すれば、極めて効果的な「和英」単語学習参考書となる、と考えられる。

英語で必要とされる語彙と日本語で必要とされる語彙とは、基本的な部分では共通であるから、「英和」単語集で登場する語彙はそのまま「和英」単語集で登場させればよいのではないかと考える。



(c)2001.6 大塚いわお


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