説明:明るい・暗い性格について
2001.11-2005.09 大塚いわお
1.はじめに
よく、「自分はもっと明るい性格になりたいんですが..」という心理相談をする人を見かける。あるいは、日本社会が華やかなバブル期にあった1990年頃は、「人間は根明(ネアカ)でなくてはダメだ」という意見がよく聞かれたものである。このように、一般に性格が明るくなることが、人々にとって望ましいこととして捉えられているようである。
しかしながら、どういう性格が、なぜ明るい、暗いと考えられるのか、従来の心理学では、きちんと分析・整理されているとはいえず、より深い解明が必要である。
2.明るい性格とは
以下の表は、性格に明るさをもたらす要因について、明るい印象を与える形容詞を収集、グルーピングして、表形式にまとめたものである。
| 表 | 明るい性格 | ||
| no. | 項目名 | 説明 | 形容詞 |
| 1. | 良さ・プラス性 | ||
| 1-1 | 肯定性 | 光の持つ明るさは、暗闇の持つ恐ろしさ、訳の分からなさ、見えない敵が襲ってくる怖さからの解放をもたらすので、生存に役立つとして、肯定的に捉えられる。 | 望ましい。よい。希望の持てる。人生を肯定する。落ち込まない。前向きな。 |
| 1-2 | 有効性・利便性 | 明かりがあると、暗くて見えなかったものが見えるようになって便利であり、生活上有効である。 | 生活上便利な。人の役に立つ。 |
| 1-3 | 正感情性 | 明るさは、その望ましさ、好ましさ故、人々の心に幸せ、喜びや楽しみといった、正の感情を生み出す。 | 幸せな。楽天的な。楽しい。喜びに溢れた。 |
| 1-4 | 合法性、正道徳性 | 明るいところでは、悪事を働くことが難しく、皆正しいことをしようと心がける。 | 合法の。正しい。 |
| 2. | 陰の無さ | ||
| 2-1 | 非隠蔽性 | 明るいと、ものに光が当たってよく見える。隠す(隠れる、見えない)ところがない。 | 駆け引きしない。裏表がない。悪意がない。公正な。誠実な。オープンな。物事によく通じている。 |
| 2-2 | 非陰影性・非疑念性 | 明るいところでは、陰影になって見えない(見えにくい)部分がないため、ものごとのありのままの状態を、いちいち疑ったりチェックせずにそのまま受け入れられる。 | こだわりのない。引っかかるところのない。おおらかな。ひねくれない。素直な。 |
| 2-3 | 外出性 | 暗い室内から出て、明るい外の(他の人のいる)世界に積極的に出たり、外気に積極的に触れることで、人は心に明るさを得ることができる。 | 人づきあいのよい。引きこもらない。気兼ねをしない。開放的な。社交的な。 |
| 3. | クリアさ | ||
| 3-1 | 明瞭性・明確性・合理性 | 明るいと、ものがはっきりよく見える。遠くまで直線的に見通せる。ものを見るときの確からしさが増す。 | はっきりとした。くっきり見える。明晰な。明確な。 |
| 3-2 | 理解性 | 明るいと、今まではっきりしなかった、よく見えなかった物事がよく分かるようになる。物事に対する理解力が向上する。 | 賢明な。理解力のある。頭がよい。洞察力、分析力のある。 |
| 3-3 | 透過性 | 光がすっと射し込み、そのまま遮られることなく通っていくことができると、その部分が明るく感じる。 | 透明な。清らかな。 |
| 4. | 熱さ | ||
| 4-1 | 光熱性 | 明るい光(太陽)の持つ熱が、人の心を熱く、陽気にさせる。 | 陽気な。テンションの高い。弾むような。 |
| 4-2 | 活動性 | 明るい光(太陽)の持つ熱が、人々に運動エネルギーを与え、心を温め、その行動を活動的にさせる。 | 快活な。はきはきした。流暢な。元気な。活動的な。活発な。 |
| 5. | ドライさ | ||
| 5-1 | 晴天性 | 天気のよい明るい感じの日は、雨が降っているときに感じるジメジメとしたウェットさ(湿度)から解放されている。 | 晴れやかな。カラッとした。 |
| 6. | 輝かしさ | ||
| 6-1 | 光輝性 | 光の当たった明るい部分は、暗いところから見ると、光り輝いて見える。 | 輝かしい。華やかな。 |
| 7. | 健康さ | ||
| 7-1 | 健康性・快調性 | 身体の調子が良く、不調・病的な部分がないと、元気に、活動的に振る舞え、周囲に明るい印象を与える。 | 健康な。元気な。快調な。 |
| 8. | まっすぐさ | ||
| 8-1 | 直進性 | 光は、進む方向がまっすぐである。 | 心のまっすぐな。正直な。 |
| 9. | 速さ | ||
| 9-1 | 高速性 | 光は、進む速度が極めて速い。 | 速い。 |
3.性格の明るさの根源
「明るさ」は、本来、物理的な光が、人間の視覚における受容器細胞(錐体、桿体)を刺激し、神経系に明るさに関する情報を送り込むことで感じられるものである。その点、物理的な「光」(太陽光線、蛍光灯・・・)が、「明るさ」をもたらす源となる。
「明るさ」は人間の視覚を有効にする点、人間の環境適応能力を飛躍的に向上させる効果を持ち、その点、根本的な面で、人間にとってプラスの価値を持つものである、と言える。性格の「明るさ」が肯定的に捉えられる理由の根源も、この点にあると考えられる。
人間は光の持つ「明るさ」を手に入れた結果、生活上の様々な利点を享受できるようになった訳であるが、逆にそうした「明るさ」が持つ利点と同等な内容を人間が性格的に持ったときに、その人のその性格が「明るく」感じられる、と考えられる。その人が心の中に、周囲を明るく照らし出す「光」「太陽」「灯」に当たるものを持っていること、あるいは光の持つ性質と同じ性質を持っていることが、性格の明るさにつながる。
明るい性格は、色彩としては、白や淡黄色で表される。
性格を明るくすることは、以上の表中にあげた「明るさ」に関連した形容詞に対応する性格を持つように努力することで、できると考えられる。
4.暗い性格の整理結果
一方、「暗い」「根暗な」性格は、「明るい」性格の内容を逆転して捉えることで、具体的には、以下の表のようにまとめられる。
| 表 | 暗い性格 | ||
| no. | 項目名 | 説明 | 形容詞 |
| 1. | 悪さ・マイナス性 | ||
| 1-1 | 否定性 | 暗闇は、見えない敵が襲ってくる、目に見えない落とし穴にはまるなど、生存を阻害するものとして否定的に捉えられる。 | 人生に対して否定的な。後ろ向きな。 |
| 1-2 | 非利便性 | 暗いと何も見えず、生活上不便である。 | 人の役に立とうとしない。不便な。 |
| 1-3 | 負感情性 | 暗闇は、そのマイナスさ故、人々の心に負の感情(悲しみ、怒り、不幸、痛み、攻撃性)を生み出す。 | 不幸な。悲しみやすい。怒りやすい。痛みのある。腹を立てやすい。 |
| 1-4 | 不法性・反道徳性 | 暗いと、こっそり悪事を働いても、周囲に露顕しないので、人々は、後ろめたさを感じつつ、悪いことをしてしまう。 | 悪い。後ろめたい。 |
| 2. | 陰影の存在 | ||
| 2-1 | 隠蔽性 | 暗いと、ものがよく見えない。 | 裏表がある。閉鎖的な。 |
| 2-2 | 疑念性 | 暗いと、ものが陰になって見えにくいため、他人や物事の状態を、悪いことをしていないかいちいち疑ったり、チェックを入れたりする必要が出てくる。 | 疑い深い。 |
| 2-3 | 非外出性 | 暗い室内に閉じ籠もり、外に出て他人とつきあおうとしない。 | 引きこもりの。 |
| 3. | クリアさの欠如 | ||
| 3-1 | 不明瞭性 | 暗いとものごとがはっきり見えない。 | 明晰さに欠ける。はっきりしない。 |
| 3-2 | 不理解性 | 暗いと、ものごとがよく見えず、分からないままであり、理解力が低下する。 | 賢明でない。理解力、分析力に欠ける。 |
| 3-3 | 不透過性 | 光が、光を通さない不透明物質によってによって遮られると、その部分が暗く感じる。 | 不透明な。濁りのある。 |
| 4. | 情熱の欠如 | ||
| 4-1 | 非光熱性 | 明るい光(太陽)の欠如が、人の心から情熱を奪い、陰気にさせる。 | 陰気な。 |
| 4-2 | 非活動性 | 明るい光(太陽)の欠如が、人々の運動エネルギーを奪い、その行動を非活動的にさせる。 | 不活発な。元気がない。 |
| 5. | ウェットさ | ||
| 5-1 | 雨天性 | 天気の悪い暗い感じの日は、雨天時のジメジメしたウェットさ(湿度)に支配されている。 | ジメジメした。 |
| 6. | 輝きの欠如 | ||
| 6-1 | 非光輝性 | 暗い陰の部分は輝きに欠ける。 | 地味な。 |
| 7. | 病気 | ||
| 7-1 | 不健康性・病性 | 身体に不調な部分、病的な部分があると、元気がなく、活発に行動できなくなり、暗い印象を与える。 | 不健康な。病的な。不調な。 |
| 8. | 曲がり・歪み | ||
| 8-1 | 歪曲性 | 進む方向が曲がったり、歪んだりするのは、光の持つ直進性を失っている。 | つむじ曲がりの。心の歪んだ。ひねくれた。 |
| 9. | 遅さ | ||
| 9-1 | 低速性 | 進む速度が遅いのは、光の持つ高速性を失っている。 | のろまな。 |
一言で言えば、暗い性格は、当人の心が「闇」に支配された、あるいは光を失った状態にあることを示している、と言える。
暗い性格は、色彩としては、黒や濃い灰色で表される。
5.明るい社会について
社会の明るさ、暗さについても、性格の明るさ、暗さを決定するのと共通の要因によって、その明暗が決まると考えられる。
例えば、日本の法務省が毎年行っている「社会を明るくする運動」は、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、人々がそれぞれの立場において力を合わせ,犯罪のない明るい社会を築こうとする運動だとされている。この場合、犯罪とは、悪さ、マイナスさといった暗さの象徴であり、それを更生によって、「暗い」犯罪者に、公正さ、他人の役に立つ、といったプラスの性質を「光」として与えようとするのが、「明るくする」ことにつながっていると言える。
一方、社会に出て行かずに、引きこもりの生活をしたり、社会の役に立つ労働をせず、いつまでも何もせずにぶらぶらしている「ニート」と呼ばれる人々も、外出して外の明るい光にあたろうとしないとか、社会にとって有益な活動をしないという点で、社会的に「暗い」と言える。こういう、別の意味でマイナスの価値を持つ人々が、将来を担うべき若者に多いことが、現在の日本社会を暗くしていると言える。こうした人々に社会的に有効な活動をする場を与え、閉じこもりを止めて社会に積極的に出て行かせようとする活動も、別の意味で「社会を明るくする運動」と言えるのではないか?
要は、社会の中の、人々の安定した、健康な生活を脅かしたり、有効な働きを失っている病的な部分=「暗さ」をなくし、人々が、変転する環境に対して適応していくのに有効な働きを、分担して積極的に行う社会が「明るい社会」ということになる。
その点、性格においても、社会においても、「より生活しやすい、うまく機能する」=「プラス」=「明るい」、「生活しにくい、機能しない」=「マイナス」=「暗い」と広く言えそうである。その点、「明るさ」と「(社会的)機能」の概念とは深い関係にあると言える。
「明るい社会」は、皆に、将来も積極的に生きていきたいという希望、「光」を与える社会である。この希望や光は、将来への「プラス」の展望、すなわち、生活がよくなるとか、より生き延びやすくなるといった予測が、晴れた山頂からの眺めのように、眼下に透明にクリアに広く開けることで生じる。
晴天時の山岳展望のように、純粋に視覚的な「明るさ」と、社会の将来展望みたいに、より思考的、価値的な「明るさ」との関連づけが、人間の神経系内でどのように行われているかは、まだよく分かっていないというのが現状であろう。その辺の関係を今後明らかにできればと考えている。
6.アンケート調査による確認
上記説明が正しいかどうか、上記説明で「明るい」とした性格が、実際に、その反対内容よりも「より明るい」と感じられているかをwebで調査した。
具体的には、「明るい」「暗い」性格についてのアンケートと称して、筆者のwebサイトに心理テストを体験しに集まってくる利用者に、「次の調査に回答してくれたら、心理テストが出来ます」という関所を設け、その関所のところで、「以下の性格を記した左右の文章の対を読んで、「より明るい」と思う方を選択して下さい」と回答を求めた。
その結果、上記説明で「より明るい」とした14項目中11項目で、実際に、過半数の割合で、統計的に有意に「より明るい」と感じられていることが分かり、ほぼ説明が正しいことが分かった。
一方、有意差がない項目が1項目あった(3.「裏表がない・ある」)。これは、「裏表がない」という表現が、主な回答者であった若年層に分かりにくかったためと考えられる。
統計的に有意に「より明るい」とされたものの、割合が50%に届かなかった項目は2項目あった(12.「輝かしい」と14.「速い」)。これらについては、「明るい性格を示している」とはあまり強くは主張できないかも知れない。
回答時期
2005年09月中旬
回答数 203
男 32.512%
女 67.488%
10代 44.335%
20代 35.468%
30代 14.778%
40代 3.941%
50代 1.478%
60代 0.000%
70代 0.000%
回答比率
| 〔1.良さ-悪さ〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 人の役に立とうとする | 70.443 | 18.719 | 10.837 | 人の役に立とうとしない | 9.420 | 0.01 |
| 2 | 人生に前向きである | 60.099 | 18.227 | 21.675 | 人生に後ろ向きである | 6.054 | 0.01 |
| 〔2.陰の無さ-陰影の存在〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
| 3 | 裏表がない | 42.365 | 18.719 | 38.916 | 裏表がある | 0.545 | -.-- |
| 4 | 素直である | 53.202 | 19.212 | 27.586 | ひねくれている | 4.061 | 0.01 |
| 5 | 社交的である | 60.591 | 25.616 | 13.793 | 引きこもりである | 7.731 | 0.01 |
| 〔3.クリアさ-クリアさの欠如〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
| 6 | はっきりした態度を取る | 55.172 | 23.153 | 21.675 | 取る態度がはっきりしない | 5.444 | 0.01 |
| 7 | 物事がよく理解できる | 50.739 | 28.079 | 21.182 | 物事がよく理解できない | 4.966 | 0.01 |
| 8 | 透き通った感じが好きである | 83.744 | 11.330 | 4.926 | 濁った感じが好きである | 11.926 | 0.01 |
| 〔4.熱さ-情熱の欠如〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
| 9 | 陽気である | 70.936 | 19.704 | 9.360 | 陰気である | 9.791 | 0.01 |
| 10 | 元気である | 68.966 | 16.749 | 14.286 | 元気がない | 8.538 | 0.01 |
| 〔5.ドライさ-ウェットさ〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
| 11 | 取る態度が晴れやかである | 67.980 | 24.138 | 7.882 | 取る態度がジメジメしている | 9.831 | 0.01 |
| 〔6.輝かしさ-輝きの欠如〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
| 12 | 輝かしい | 46.798 | 28.079 | 25.123 | 地味である | 3.641 | 0.01 |
| 〔7.直進性-歪曲性〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
| 13 | 心のまっすぐな | 63.547 | 16.256 | 20.197 | 心の歪んだ | 6.749 | 0.01 |
| 〔8.高速性-低速性〕 | |||||||
| 番号 | 項目内容 (仮説適合) |
-明るい- | どちらで もない |
-明るい- | 項目内容 (仮説不適合) |
-Z得点- | 有意 |
| 14 | 速い | 42.857 | 34.483 | 22.660 | のろまな | 3.555 | 0.01 |
[主要参考文献]
新明解国語辞典 第五版, 三省堂, 1997
新字源 改訂版, 角川書店, 1994
ジーニアス和英辞典, 大修館書店, 1998
The RANDOM HOUSE Thesaurus, Random House Inc., 1984
(c)2001-2005 大塚いわお
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